神様は見ている
主人公視点ではありません。
そこはとある天界。神域と呼ばれる場所。辺りは白く目映い光に囲まれて、無数の柱が神殿のように建ち並ぶ。立派な装飾など一つもなくとも神々しさを放つその場所にはポツンと一つ、底が見えそうなほどに透明度の高い泉がある。
そんな場所で少年とも少女とも思えるような曖昧な容姿を持った者が浄水されたような一面を張る泉に映る下界をソッと覗いていた。
その瞳に反射して映るのは一匹の歩行する骸骨。この世界ではスケルトンと呼ばれる魔物の存在だ。
何故天界に住まう其の者が魔物の、況してや数えきれぬ程存命するスケルトンの内の一匹に視線を集中させているのか。
理由は其の者が転生させた遊び玩具であるスケルトンが彼だったからであった。
今日も今日とて其の者はそろそろ習慣にもなりそうな程に彼のことを菓子でも貪りながら観察していた。毎日毎日飽きさせない彼の行動を見ていて時に嗤ったりもしたものだ。
彼は気配を其処ら中に撒き散らし、自ら危険だと判断していた魔物を呼び寄せる。まさにトラブルメイカーであり、今日も笑いの絶えない一日を送れそうだと其の者は思っていた。
少し思考を凝らしたのだろうが、なんともガバガバな作戦に其の者は嗤ってみせた。他にも方法があるだろう。もっと楽な奴が。
其の者は心の底から嗤ってはいるものの、もしもの時はちょっとした手を加えて助けるつもりではいた。其の者は神であり、大抵のことを成すことはできた。そして、こう思っていた。こんな面白い玩具をここで捨て置くには勿体無いと。
そして、時は来た。彼が通路からの強引な脱出を選んだようであるが、幾ら身体能力を上昇させた所で通路で詰まりに詰まった肉の壁を押し越えるなんて事は到底無理な話だ。人の波というのはそれほどまでに重い。人型の魔物を人と形容して良いものかは別としてだが。
恐らく波がどれ程のものか、通路にどれほどの数の魔物がいるかを想定していなかったのだろう。そうでなければ装化纏という使い勝手の悪いスキルを使うよりも低い天井を立体機動を展開し、進みにくいだろうが四足歩行で進めばよかったものだ。
それを選択しなかったために彼は魔物の波を渡り切れなかったために無理矢理に身体を捩じ込んだりしたが通路のど真ん中より少し進んだ場所で停滞した。動けない。魔物の波に押し潰されそうな感じでもある。
そろそろ助けてあげようと其の者は泉から目を離し、重い腰をあげようとしたその時、悪寒が走った。
其の者が泉に再び視線を向けると、彼は装化纏を解き、本来のスケルトンの姿に戻っていた。が、あるはずの無い瞳が紅き輝きを放っていた。そして……。
ズガガガガンッ!!
彼が凄まじい速度で右手を振り抜いたのだ。彼のステータスやスキルの組み合わせでは到底出せないであろう速度で。其の者はそこで理解した。彼に何が起こったのかを。
前方から押し寄せる魔物の波はその風圧で生じた風刃に凄惨に引き裂かれることにより収まり、その音を耳にした後方の魔物たちは呆気にとられていることにより収まった。
彼はそんなこと気にせずと半身を失った屍の上を悠然と歩く。
通路の果てギリギリまで到達した所で我に返った魔物たちが一斉に彼を襲い掛かった。だが無駄である。彼が手首を上へと捻ると地面から無数の骨の針が出でて、襲いかかる総てを貫いた。分厚く固い壁を残して。
そこで彼は倒れこんだ。意識を手放したのだろう。
それを見ていた其の者は今はもう嗤ってはいない。ただならぬ雰囲気を醸し出し、険しい顔付きで泉を睨んでいる。
「まさか周期がここまで早いとは予想外だ」
いつもならお気楽な声であるはずの甲高い声は低く渋い声に変わっていた。その声は何処か焦りも感じさせる。
「チッ……誰だあのスキルを入れたのは。全く面倒なことをしてくれる」
悪態をついた其の者は上ってしまった溜飲を下げるために一度泉から離れるのであった。
面白いと感じたらブックマーク又は評価をよろしくお願いします(*-ω人)




