05-1.ドワーフの集会
ゴロゴロとした大岩の転がるルムベル火山に、ドワーフ族の住む大きな集落がある。
ドワーフは、エルフから派生した種族であり、エルフよりも筋肉が発達していて、体が分厚い。
肌の色も赤黒く、まるで皮膚の下に溶岩が流れているようである。
彼らは山に洞窟を掘り、採掘と加工を行って暮らしている。
ある日、屋根のある大きな集会所で、デルガルト(エルフ語で導き手の意)とそれに連なる役職持ちのドワーフたちが集まって会議をしていた。
「また、シュレッド(噴き出る溶岩)が出た。巻き込まれた仲間は四人。コンラン、インハル、ルートルの三人もひどい怪我をしているが、ハルトンは火傷がひどくて、明日まで持たないだろう」
「またか……。今年に入ってシュレッドの頻度が高すぎるぞ」
「つい何十年か前に鎮めたはずではなかったのか?」
口々にそう言うドワーフたちを前に、デルガルトは重い口を開いた。
「鎮めるには、やはり、シュリンガが必要か……」
それを聞いて、みんなも口々にシュリンガ、と呟く。
「巫女はまだ幼いが、役目を立派に果たしてもらわねばならぬ。シュリンガは大切な役目だ。情に流されるでないぞ」
族長の鋭い眼光が走り、みんな覚悟を決めたように頷く。
「誰か、ヨルハを呼んできなさい。私からシュリンガの話をしよう」
族長がそう言うと、集会所にいた一番若いドワーフが立ち上がって外へ出て行った。
「しかし、デルガルト。ヨルハはまだ幼すぎませんか」
ドワーフのひとりがそう言うと、デルガルトはそちらを睨んだ。
「年齢の問題ではないぞ。歳をとっていようが、とっていまいが、シュリンガには関係のないこと。これまでの犠牲から、お前たちもよくわかっているだろう」
もう誰も、反論する者はいなかった。
これまでにいたシュリンガも、その役目を立派に果たしていった。
今更変えられることではないのだ。
デルガルトは、そう自分に言い聞かせた。




