闘技場の日記
春終期 11日
エティダルグの街へ着いて、三日目に書いています。
まず、初日のことから。
エティダルグに着いてすぐ、私たちは人の波に飲まれました。
それも、この街では毎年この時期に闘技大会を行っていたのです。
そのため、観客が大勢押し寄せ、お祭り騒ぎとなっていました。
そんなことを知らなかった私たちは、宿を探してあちこちを巡ったもののどこにも空きはなく、心優しいシスターに声をかけてもらい、孤児院へ泊めてもらうことになりました。
これほど暖かい家というのは、初めてだったかもしれません。
居心地のいい空間でした。
次の日、私はガウェインの主催する闘技大会へ出場しました。
闘技大会は、私の中で大きな驚きでした。
剣に限らず、武器は人を殺すだけの道具だと思っていたのに、ここでは相手を殺すことなく、優劣を決めるだけの道具となっていたのです。
私は自分が充分強いということを知っていますから、あまり大人げないことはやめようと思っていたのですが、つい、やりすぎてしまい、優勝することになってしまいました。
喜んでいいものか分からず、ぽかんとしていたことを他の出場者の方に申し訳なく思います。
その後、ガウェインの弟子のルネリットとも試合をしました。
蛇蝎剣という変わった剣を持っていて、一対一の剣技には面白いものがあるなあ、と思いました。
ああいう剣があるなら、もっと闘技大会のようなお祭りにも顔を出してみたいな。
さて、エティダルグの街はそんな様子でした。
明日の朝出発する予定なので、もう少し街を見て回ることも考えたのですが、夏が来るまでにヒグドナは海へ出てしまいたいそうです。
でないと、また人の波にもまれることになるから、らしいです。
この街を出たら、ドワーフの鉱山を通って、港町へ行き、船に乗る予定です。
船!
いいですね、船!
船には乗ったことありますよ。
一回だけ、剣聖の試験を受けに行く時に、乗りました。
初めてのことって、こんなにいいものだったんだ、と最近すごく思い知らされています。
この旅が終わるころ、私は始める前の私とどう変わっているのでしょうか。
それとも、まったく変わっていないのでしょうか。
そんなことを、よく考えます。




