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03-5.出発

貯蔵庫のある洞窟の入り口で、ミジカが待っていた。

その傍らには、ウェンゴもいる。


「おお、早かったですね。どうでした?」


彼がそう聞いて、テレジアが首を振ると、ミジカも力なく手を降ろした。


「やっぱり、そうですか。いえ、分かっただけでも良いのです。まだこれから新しい伴侶を探すことだってできますから」

「ミジカさんって、前向きなんですね」


つい、皮肉じみた言葉を口にしてしまい、慌てて口をつぐむ。


「それはつまり、冷酷だと?」

「いえ、すみません。忘れてください」


「いえいえ、そこはやはり、外の人との認識の違いなのでしょうね。死を悲観するようでは、この村では生きていけませんから。死は、肉体から離れ、新しい世界への旅立ちなのです。残された者も、それを祝福して、自分の人生を歩むことこそ、幸福であると言えるでしょう。いつまでも死んだ者に固執していては、何も生まれません。だって、もういないのですから」


「みんながそう考えられると、楽なんでしょうね」

「あはは、少なくとも、この村に住む三十人はそうですよ。だから、私たちはとても楽なんです」


彼は満面の笑みでそう言った。

村の誰もが、不満などひとつも持っていない、と心の底から信じている笑顔であった。


ウェンゴを洞窟に戻し、妻子が死んだことを伝えると、悲しそうに目を閉じて、横になった。

彼も整理をつける時間が必要なのだ、とミジカは言った。


村へ戻り、テレジアたちは、皆に心からの礼を言った。

自分たちには食べられない食事を用意する気持ちなど、考えただけで辛いものであるが、だからこそ、はっきりと礼を述べておかなくては、気が済まなかった。

いざ、帰る直前になって、ミジカは気がついたように言った。


「あれ、ベルの姿が見えませんね。見送りに来ると思っていたのですが」

「……どこか、食糧を探しに行っているのでしょう。私たちと会った時もそうでした。いいんですよ、見送りなんて。生きるためですから。そっちの方が大事です」

「そうですか……。では、あなた方も、良い旅を」

「ええ。では、さよなら」


テレジアたちの背後で、スラング村は小さくなっていく。

もやもやと考えていた頭の中を振り払うように、テレジアは頭をくしゃくしゃとかき、息を吸って大きな声を出した。


「ヒグドナ! 街までどれくらい

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