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02-3.聖域の探索

翌日の早朝から、二人は出かけた。

宿屋の主人が、飲み水と食料を用意していてくれたことで準備の手間が大幅に省け、すぐに出かけられた。


サマクを出て半日歩き、最も暑い昼間に差し掛かる前に目的地が見え始めた。

そこには、天まで届きそうなほど高い土の塔が、そびえ立っていた。


「これが聖域?」


テレジアの疑問ももっともで、灯台のようなそれを墓や聖域と言い張るのは些か無理があるように思えた。


「いや、エルフの墓はこういう形をしているものだ。間違いない」


ヒグドナがそう言うのならそうなのだろう、とテレジアは納得した。


確かに一般的なエルフの墓と形は同じであったが、いかんせん巨大である。

王の墓というくらいだから、大きくしたのかもしれない。


塔への入り口は一ヶ所しかなく、二人は迷うことなく中へ入った。

しかし、入ってすぐに頭を悩ませた。

上へ登る螺旋階段が壁沿いに続いており、床の中心は強固な格子で下が見えるように作られる。

そして、そこから見える階下に広がるのは砂の海。


「これ、乗ったら落ちるのかな」

「いや、体重程度じゃ開かない。鍵がかかっているのかもな」


軽く格子を押してみても動く様子はない。

しかし、蝶番の向きから上から下へ開くものであることはわかる。



「まず、上から見てみるか。最悪壊してでも下に行くつもりでいよう」


ヒグドナがそう言って、テレジアは階段を見上げた。

途中に床はなく吹き抜けになっており、遥か上方に青い空が見える。


余計な装飾はなく、外から見たのと同じく、ほとんど土を固めたものであった。


二人は階段を上がっていく。

途中には何もなく、ただ階段だけが続いている。

頂上まで上がったが、特に変わったものはない。


階段から床の方を見ると、あの中央の格子も小さく見える。


「あ……」


テレジアが小さく声を漏らした。


「どうした? 何か気がついたか?」

「もしかして、ここから飛び降りるんじゃない?」


細身で軽いエルフはこの高さから飛び降りてあの格子を開くのだろうか。

しかし、ここから床の中央を目掛けて飛び降りるのは並大抵のことではない。

少しでも外せば硬い床に叩きつけられて、最悪死んでしまうだろう。


「下に降りていろ。おれがやる」


ヒグドナは身体能力の高いオークであるため、床に直接落ちても大して痛手は受けない。

しかし適任といっても、テレジアから見れば正気の沙汰ではない。


提案したのは自分だが、いざやると言われれば何をおかしなことをしているのだと思う。

そこまでするなら、もう壊しても良いではないか。

そんなことはつゆ知らず、ヒグドナは階段から飛び降りた。


緑色の砲弾が高速で格子を突き破り、階下の砂へと着地する。

ヒグドナの勢いと質量に鉄の格子は当然の如くひん曲がってしまい、最早使い物にならない。


「大丈夫?」

「ああ、降りてこい。道がある」


砂の上へ飛び降りたテレジアは、ある違和感を覚えた。

砂のように見えるが、手を押し当てると沈む。

まるで沼や泥のようであった。


しかしそれでいながら、足元は沈まない。

ある程度の重さに反応するのだろう。

上から落ちてきた小石や瓦礫などは砂に飲み込まれ、いつの間にか姿を消していた。


「何のためにこんな構造になっているんだろう」

「さあな。意図して作ったものじゃないかもしれん」


重い方が沈むのであれば侵入者に対する罠であると言えるが、軽い方が沈むのでは抑止力としては働かない。

これで止められるのはせいぜいネズミや虫くらいのものである。


二人は奥へと続く通路へ入った。

そこからは床が石になっており、足が沈むことはない。

通路には等間隔で松明がついており、見通しは悪いが何とか足元は確認できる。


「これはエルフがよく使う魔法の松明だな。触ってみろ、熱がない」


テレジアが松明に手をかざしてみるが、暖かさというものが全くない。


「決して消えることはなく、落としても燃え広がる心配のない火ってわけだ。このおかげで明かりはあるが、足元には気をつけろよ。罠があるかもしれん」

「わかっ――――」


突如、テレジアの右足が深く沈んだ。

どうやら、何かの装置を作動してしまったらしい。

壁に大きな穴が開き、テレジアの立っているところが通路ごと回転して、あれよあれよという間にテレジアは暗闇へ流し込まれた。

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