第1話
夢にしては鮮明な映像が頭の中を流れ、流れる度に頭に激痛が走り、耳鳴りがし、息が苦しくなった。
止まれ、止まれと念じても、映像は止まらない。
それどころか、もっとリアルになっていく。
まるで、実際に経験したかのような…そんな感覚だ。
「んん……むぅ……!」
しばらくして、映像は終わった。それと同時に意識が覚醒する。
目に入ったのは、赤い上品そうな天蓋。よく見ると金糸や銀糸で刺繍が入っている。
手や足を動かせば、肌触りのいいシーツや掛け布団、枕があることが分かる。
覚醒したての頭に浮かんだのは
ー今のは一体…?
ーここは何処だ?
という2つの疑問だった。
1つはボクの。もう1つは俺の。
ボクにとっては何らおかしい事はない、自室のベッドの上だ。
だが、俺にとっては『何処の高級ホテルだよ!』とつっこみたいほど、馴染みのない場所だ。
そして、ボクにとっては知らない場所、人、言葉、食べ物…その全てにおいて理解の範疇を超えていた。
一方、俺にとってソレは…かけがえの無い思い出、いや記憶の全てだった。
思わず泣きそうになるぐらい、大事なものだ。
しかし、ボクと俺はある一点で共通の見解を示した。それは、この映像では視点となっている人物が死んだ辺りで終わっているという所だ。
死んだ者のことが見れる映像など、ボクには心当たりがなかった。
だが、俺にはあった。と言っても、友人が熱心に話しているのを聞いただけだがな。
映像の正体は『前世の記憶』。
異世界ファンタジー小説など、主に2次元の世界でよくあるもので、その記憶を元に、異世界でお金を得たり、ハーレムつくったり、チート化したりなどをしていくらしい。
記憶が蘇るのは異世界だったり、はたまた現実世界だったりするみたいだ。
転生、憑依しているのがよくあるパターンだとか。
蘇るタイミングは人それぞれで、記憶を初めから持ったまま産まれてきたり、何か事故や出来事があって思い出したりなどするそうだ。
そんな友人の話から予想するに、『此処は異世界(多分)で、俺は転生するなりしたのち、何かの拍子に前世の記憶を取り戻した。』という事になる。
友人はもっと詳しく話していたような気がするが、余りの長さに途中から聞き流していたため、此処までしか分からない。
ボクは混乱状態、俺は状況理解に努め、長らく時間が経った気がした。
すると、段々ボクがキラキラとした粒子状になっていき、俺の中に取り込まれていった。
全て取り込まれた時には、ボクの今までの経験全てが頭の中に流れ込んできた。