雪の日【400文字小説】
どんよりとした雲が広がる空の下、人々は家路を急いで駆け足気味だ。
誰もが傘を持っていないわけではないだろうが、本格的に天気が悪くなる前に帰りたいのは誰も同じである。ましてや今日の朝の時点での天気予報は晴だったので、それを信じて傘を持っていない人が多いだろうからなおさらだ。
少女はそんな街の中をゆっくりとした歩調でややうつむきながら歩いていた。
些細なトラブルが続き、どんよりとした空と同様に気が滅入っていた彼女は、鉛色の空を見ることなく、足元のアスファルトだけを見て歩き続ける。
そんな彼女の頬にぴたりと冷たいものが当たった。
ゆっくりと顔をあげて見ると、空から白くて小さい雪がひらひらと降り始めていた。
「……雪か……たまにはこんな天気もいいかもね」
そんなことを言いながら、彼女は笑みをこぼす。
彼女はしばらくそうしていたあと、本格的に雪が降る前に帰ろうと、まっすぐ前を見て、少しだけ駆け足気味で家路を急いだ。