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雨、キミの元へ
曇天の空、どしゃ降りの雨が、私の体を濡らしてゆく。
無色、無臭。ただの水は私の肌をつたい、体を冷やしてゆく。それだけのことが、心地よかった。
未来が現実へ、そして過去へと変わり、雨粒と共に私の体から流れでてゆく。
たくさんの思い出が、零れ落ちる。
君の声も、温もり、そして愛の全ても、君のいる世界で笑えたことさえも。
君の嘘も私の嘘も、弱さも全て、流れてしまえばいいのに。
いつか君に伝えたかった言葉は、未だ言えないまま私の中に残っている。
雨と一緒に流れれば、いつか君のもとまで届くのだろうか。
私はいつからか流れ出ていた涙を拭うと、前を向き、歩き出す。
傘はまだささない。もう少しだけ、この心地いい雨を感じていたいから。