4/355
海色
すべての生みの親である海は、自ら生み出した小さな子どもたち、その全てを包み込む包容力を持っている。
もちろん私達、人間も。
母なる海に愛され、ときに試練を与えられ、人間は成長した。
人間は、母を知ろうとする。
どんなふうに生まれ、どんなふうに死ぬのか。
人間は母を知ろうと海へと向かう。
その度に母なる海は異なる表情を見せた。
来るものを拒む激しいうねりや波浪。
すべてを溶かしこむような音のない深海の世界。
それはまるで、季節や時間によって色を変える海色のよう。
人間は、未だ母を超えられない。
そのすべてを知ったとき母なる海は、私達にどんな表情を見せ、そして私達の目に母はどんな海色に見えるのだろうか。