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老木
老木は、ただじっと見ていた。
ヒトと呼ばれる不思議で面白い生き物たちのことを。
短い寿命、小さく、非力な体。ヒトはそのほとんどで自然に勝つことはできない。
それでもヒトは、数百年に渡り、進化してきた。
力のないヒトは知恵に頼り、道具を生み出した。それはヒトの力を増やし、その領域を広げていく。
時に争い、傷つけ合いながら。
木が老木になるまで、長い時間をかけて、ヒトは強くなった。
老木が生きる世界を支配してしまうほどに。
ヒトは新たな資源を生み出すため、木を伐採していく。
ついに今、老木の根元にも、ヒトの機械の刃が当てられている。
数百年にわたってヒトを見守ってきた老木が切り倒されていく。
この先のヒトがどうなっていくのか見られないのか。そう嘆きながら。
次に生まれるなら、ヒトになりたい。そう願いながら。




