勘違いから始まるアレコレ。
私の名前は、斎藤葉樹。平仮名にしたら在り来たりだと重う思う名前である。そんな私は人生で初めて、告白をされたらしい。
「君が俺を好きだという噂を聞いてから、だんだん気になって…好きになりました!」
という、不思議な告白で。私、あなたのこと知らないんだけど…。確かにアナタは、見目がいいなぁと思ったけれど私…他クラスの人あんまり知らないんだけど。
「…ごめんなさい、私…アナタのこと知らないんだけど、名前は何?」失礼かもしれない、でも名前くらいはと思い質問する。彼は目を見開いて、固まってしまった。
「…あの、…?」「さ、サイトウハナちゃんだよね……?」「はい、…?」「俺のこと好きな、サイトウハナちゃんだよね?!」私の肩をがっしりと掴んで揺する勢いに私は驚く。
「す、好きもなにも…さっきアナタの存在をしりましたぁ…!」
「嘘、つかなくても…いいよ?」「………」ちょっと、どうしよう。どうしたらいいのか、分からなくて戸惑う。「葉樹ぁ、……と、なんで?」救いの声が聞こえて振り向くと、我が友人の咲が立っていた。すぐさま、駆け寄り後ろに隠れる。咲は、ちょっと何?!と驚くが、無視。
「……ねぇ、どういう状況?」こっそりと咲が呟くので、それに小声で返す。「私も分からない…」「だよね、葉樹はあの学校で人気者な花咲苓を知らないんだものね」「え、人気者なの?!」突如の私の大きな声で訝しげに見ていた、彼…花咲苓?は驚く。「ねぇ、本当に俺を知らないの?」それに答えたのは、咲だった。
「ええ、葉樹はあまり人に興味がないの。今、アナタの存在を知ったのは本当よ」「………バカな。いや、まて…純!」いきなり誰かの名前を叫ぶと、スマホを取り出して電話をしだす。
「………許さん、アイツめ!」『もしもーし!純くんだよ!』とハイテンションな声は、離れた私たちの所まで聞こえた。
『あ、れ?れーいー?なぁ、なに無言!イタズラか?イタズラなのか?』「うぜぇよ、お前…俺にデマを教えたろ?!」
『…何の話?』「……っ!」こちらを見て、僅かに赤面しつつ意を決した顔で彼は電話の向こうへと叫んだ。叫ぶ必要は全くないのだが。「………サイトウハナが、俺のことを好きだとか!!」『んあ?デマじゃねぇーよ?』「はっ?俺のことを知らないのに有り得ないだろ?!」『……おい、苓…まさか、お前…窓際の姫君に告ったのか?!アホか!』「…窓際の姫君……?なにそれ」チラリと、こちらを見た彼と目が合い彼は顔を赤らめた。「…咲、窓際の姫君ってナニ?」「あんたのことよ」「…ん?」よくわからないので、放棄した。
「サイトウハナは、他のクラスにもいるわ。きっと、その…純?って人はそのもう一人の子の事をいったんじゃないの?」咲がそういうと、電話の向こうから『その通り!苓くんはバカだから、窓際の姫君と勘違いしたんだね!アハハ…ざまぁみろ。モテるからって調子にのるなよ』最後の言葉がテンションが違うくて本気だった気がする。
「たぶん、純って人はモテないのね」咲は、うんうんと頷いて納得していた。よく、わからないな私には。
がっくりとうなだれた花咲苓は、チラリとまた見てきた。
「勘違いしてました、ごめんね。でも、俺はあなた…がすきです。いつも、笑顔でその笑顔に惹かれました!」
いつも、笑顔?私、そんなに笑っているなかな?
「…あぁ。お腹が満たされると笑顔になるのよね、葉樹は」
ポツリと咲が呟いたそれにピクリと反応した彼はばっと顔を上げ、「餌付けか!そうか、胃袋を掴んだらいいのか!」
「ありがとう、咲さん?いいアドバイスを!」「…アドバイスしたわけじゃないんだけど…まぁ、いいか」
「返事は、まだいいです。俺、花咲苓のことを知ってから答をください…葉樹ちゃん」
*****
花咲苓は、モテる。しかし、誰とも噂が上がることはなく最近では男にしか興味がないのでは?と囁かれていた。そんな彼がよりにもよって私の友人が好きだとは…。勘違いも甚だしいが、彼は彼の友人の噂というか事実だけど…まあ、葉樹と両思いと思ってたらしい。
まあ、結果は葉樹に知られていなかったけれど。
そんな彼は、葉樹を餌付けする作戦を実行している。着々と餌付け作戦は成功している。
「苓くんのお菓子おいしいの」だとか、「苓くんの肉じゃが、おいしいくてまた食べたいなぁ…」とか、「苓くんのお弁当が毎日食べたいなぁ」とか、だめだよ、簡単に餌付けされちゃ!とか言いたい。けれど、葉樹の笑顔が見られる…ああ、もう無理ね。葉樹は花咲苓に奪われてる。
「………美男美女なんて、絵になるわ。」
ムカつくから、少し邪魔したりしようと心に決めたのだった。
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咲は、葉樹の笑顔を見ることが好き。でも、その笑顔が苓にとられちゃうことにムカついているのです。
その昔、咲も餌付けしていた過去がある。