進化の秘法
本日連続2話投稿です。
しばしの間失礼。
そう言われて一人この場所に取り残され早1年が経とうとしていた。
暇だ。
別に腹は減らないし眠くもならない排泄行為もないので何もすることがないのだ。
さてこの1年での変化はというと………ほとんどありません。
いや本当、この場所に溢れる魔素を吸収して体積は確かに増えた。魔素をコントロールできてないと言われたから色々してたら魔法が使えるようにはなって弱々しいが火や水が出るようになった。しかしそれだけだ。
『遅いぞ、なぜまだ生まれたままの姿なのだ。遅すぎるから儂が直に来てやったわ』
誰だ?いつの間にここに来た?扉は開いていないし周りに誰かがいる気配など無いのだが。
慌てて気配を探ってみるとそこに老人が浮いていた。
『老人が浮いやがる!』
『第一声がそれか貴様、それでもこの儂が生み出した魔王か!』
ああ?俺を生み出した?
『破壊神、ヴェルザードだったか?』
『ようやく気がついたか』
『いいのか?この世界はお前らのゲームの盤上なんだろ。そこにお前自身が来るなど…』
『確かに儂自身が勇者やその仲間を直接始末することはできん。しかし今から行うのは自陣の駒の強化、何も問題はない。向こうだって勇者が本格始動すれば行うだろうしな』
そういうものか…
ということでやってまいりました破壊神による進化の秘法!進化するのはこの私、魔王でございます。
ヴェルザードの写身たる老人が俺の体に手を突っ込んだ。
痛みは全くないんだけどね、老人の皺くちゃの手が体の中に入っていって中を掻き回すんだよ。正直、嫌だ。
手を突っ込まれたせいで身体の中に溜まっていた魔素が暴走する。
『ぐふぅ』
四方八方に拡散しようとする力を方向性を誘導させて形を作っていき魔素を固める。
すると身体を覆う膜が形成され体の中に核ができた。
しかし今回はそこまでだった。魔素が足らなくなったのだ。
「まぁ最初はこんなもんか、あとは自分で好きに変化させろ。やり方は理解しただろ」
そう言って破壊神ヴェルザードは光の粒子となって消えた。
今のステータス
魔王
身体:精神体
加護:破壊神の加護
弱点:魔石核(これのせいで逆に弱くなったんじゃ?)
能力:魔素操作(これにより体の形が変化)
初級魔法(火・水・風が少しだけ)
こんなもんか。それほど進化したと言える実感がない。
だが感覚は覚えた。これからは自分一人で己を自由に強化していける。
ここにいる限り材料となる魔素は取り放題なのだから。
俺は自己進化に没頭するようになった。