天才魔法使いの失敗
王子とダインの年齢を修正
王子は10歳、ダインは12歳にしました。流石に幼すぎですね。
さて剣の訓練の合間に俺は魔術の勉強も行っている。
王宮筆頭魔術師のジョセフ老師の下で真理の探究に尽力を尽くしているのだが老師の弟子の一人であるマリーが鬱陶しい。
マリーはダインと同じ12歳で魔術の天才。その年で火と風の上位魔法を習得しているのだ。ただそのせいで助長して自分より下の者を見下す傲慢な女の子になっている。
老師も度々マリーに注意するのだがマリーはその言葉をただ聞いているだけなのが良くわかる。
俺も初めてここに来た時
「ふーん、勇者、勇者ってみんな期待してたけど魔術のこと何も知らない子供じゃない。私の方が遥かに優秀だってことの証明ね」
と、面と向かって言われたときは唖然としたものだ。周りの人も額に手をやって唸っていて嗚呼この子はそう言う子なんだと納得はしたけどね。
気を取り直してジョセフ老師がまず俺の魔術の資質を確認してくれた。その資質を基に今後の予定を組むんだそうだが老師が驚きの声を上げた。
「なんと、王子は全ての魔法の資質がお有りになる!本来なら得手、不得手が現れるものなのですが、う~む」
勇者ってどんだけハイスペックなんだよ!と喚かれたがしょうがないだろ資質なんだから。それとマリー、すげー睨んでるな。自分より才能のある俺に嫉妬しているのかさっきまでと180度態度が違うぞ。
ただマリーに関してはすぐに沈静化したけどな。老師の俺の育成方針は広く浅くというものだった。火、水、風、土の基本はもちろん回復魔法や援護魔法も教えていくのとその魔法を効率的に使えるように魔力アップの精神修行も組み込まれたからだ。
そのため俺は全ての魔法を使えるが全て初級という状態を目指すことになった。
ただ最初の魔力開放で苦労したんだけどな。勇者だからって何もかも上手く行くとは限らないということか。体から魔力の流れを感じそれを自分の意思でコントロールする。魔法を使うための絶対条件とか、長時間の瞑想がその訓練になるとか。
俺は1月で魔力開放ができた。才能のある人も大体そのぐらいだとか。まあ瞑想だけで1年を使うことにならなくてよかった。
順調に魔法を覚えていき俺は火と水の魔法の初級を習得した。そして事件が起きた。
マリーが俺が火の魔法の初級を習得した日の翌日、俺に上級の魔法を見せてあげると言って城下町の外に広がる草原にやってきた。
「それじゃあここで私の華麗な上級魔法をご覧下さい」
そう言ってマリーは上級魔法の詠唱に入る。
「炎よ 敵を屠る灼熱の嵐となれ フレアストーム」
さすが天才と自称し天狗になっているだけはある、上級の魔法の詠唱を大幅に短縮して発動させた。
発動した最初は初級と変わらないぐらいだが瞬く間に規模が大きくなり草原に黒い筋を残しながらどんどん移動していく。
「お~ほっほっほ、ご覧になりましたか王子。これが上級の魔法ですわ」
「自慢はいいがちゃんとコントロールはしてください」
「心配はいりませんわ、私がそんな初歩の失敗などするわけございません」
「そうか?このままあの炎の渦が進むと森に直撃するが本当に大丈夫なんだな?」
「え!嘘!まさか今日のこの風で進むスピードが速く。駄目、解除が間に合わない」
そう言った次の瞬間、マリーの放った魔法が森に直撃し火の手が上がる。
「あ、あああ」
マリーが目の前で起きた自体に慄きその場にへたりこんだ。
「私のせいで森が、この私が初歩的なミスを」
「マリー、何してるんだ立て!でもって街に戻って消火の為の人を呼んで来い」
「あ、あなたはどうするのよ」
「初級の水魔法で消火作業だな。このまま見ているよりはマシだろう」
「む、無理よ初級の魔法であの規模の火災をどうにかできると思っているの?」
「思っていないから応援を呼んでこいって言ったんだ。責任は持て」
「わかったわ、けど王子、絶対に無茶はしないでくださいね。あなたが死んだりなんかしたら私の首だけじゃすまないんだから」
そう言ってマリーは待ちに戻っていった。