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烏牛NO7

眉間を走る衝撃の中に間違いなく烏牛は見た。半透明の玉が薄いピンク色に閃光を放ちながら大きく一瞬輝いたかと思うとすっと消滅して跡形もなく消え去ったことを。


丹鈍は南出口扉の開き紐を握り締めて、もう烏牛が来る頃だと紐を握りなおしていた。なかなか烏牛は現れない。もう来るはずなのにいつもより遅いなと思い始めていた。こんな事はこの5年間の間に一度もなかった。


おかしい。丹鈍は開き紐を手放すと足場を駆け下りて東出口に向かった。扉を開けると奈落には屠殺されたばかりの黒牛の巨体が横たわっていた。


「あっ!」丹鈍はすぐに気が付いた。両目をかっと見開いて黒目を眉間に吸い寄せたその中央に、研ぎ澄まされたマサカリが根元から半分深々と眉間にめいり込んでいる。血は一滴も出ていない瞬間にして即死である。


丹鈍はつぶやいた。「見事なものだ。それにしてもマサカリを打ち込んだままだとはどういうことだ?」


丹鈍は烏牛の姿を探した。奈落から、牛舎から、離れから、そして烏牛の部屋へもう一度戻った。よくよく調べてみると、この日マサカリはこの一本のみが部屋からなくなっていた。いつもは4本なのに。

床にはべっとりと牛のよだれが牛舎のほうからつづいていた。


・・・・


その朝以降、烏牛は二度と西郷鎮には現れなかった。その姿を見たものも一人としていなかった。消えたのだ、一瞬にして。だが人は皆烏牛は死んだのだとか逃げたのだひところ騒ぎ立てただけで、また次の屠殺人が来ると誰も烏牛の事は口にしなくなった。そして真実は忘れ去られて行った。


(おわり)

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