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烏牛NO4

マサカリの1本を手にすると烏牛は残りを中央部の床にていねいに立てかけて足場を固めて東の出口戸正面に立つ。烏牛はマサカリを頭上に構えて扉が開くのをじっと待つ。係りの人影(丹鈍)が動いて出口戸がさっと開く。かっと見開いた黒牛の両眼。眉間をめがけて一気に一振り。一瞬の抜き技、反動で半身反転して眼下に巨体の崩れ落ち行くのを見下ろす。


体全体に充実感がみなぎる。烏牛はここで大きく深呼吸をし足場をゆっくりと降りて2本目のマサカリを手にすると次の南出口正面に構える。戸が開いて一瞬の必殺技、すばらしい快感だ。つづいて西出口戸正面にて無心に一発を決める。さらに北正面、疲労感を少し感じつつ最後の止めを全力で振り下ろす。


と、一瞬、黒く澄み通った黒牛の瞳の奥に、ぴかっと光る何かを見た。うん?と思ってなんとなく気になりだした。いつもの如く心地よい疲労感はあるのだがちょっとばかり気になる。


翌日の明け方にも昨日と同じ夢を見た。もう十分牛になっていて胃の中の未消化物を口に戻してもぐもぐしている。ずっともぐもぐしている。間違いない手も足も牛になっていると実感できる。動かさなくてもはっきりと実感できるのだ。


鶏が鳴き始めて目が覚めた。目が覚めてもずっと口をもぐもぐしている。別に汗はかいていない。さあ仕事だ。あまり気にせず4本のマサカリを選んで研ぎの仕上げをする。無心にひたすら研ぐ。肌寒い朝もやの中を屠殺場へと向かう。いつもの澄んだ空気と牛舎の匂いだ。大きく深呼吸して東出口戸正面に立つ。

....つづく。

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