ー第1話ー
爽やかなかぜがふき草が鳴る音で創輝は目を覚ます
(ここは…どこだ?)
創輝の周りには気を失う前の住宅街ではなく、草原が広がっている
変わっていないのは創輝の服装と剣のみだった
創輝は剣を鞘にいれ、立ち上がる
(とりあえず歩くしかないか…)
創輝は気の向くまま歩き始めた
20分程度歩くと3人の人影がみえてきた
よく見ると、1人の少女に2人の黒服を着た男が詰め寄っている
(あれ、どう考えてもよろしくない状況だよな…)
創輝は身をかがめ、ゆっくりと近づいていく
(な、なんでこんなことに…)
ミューリの前には黒服の2人組
「あ、あなたたち誰?」
「君に答える必要はないな…それより我々と一緒に来てもらおうか」
1人がミューリの手をつかむが振り払って1歩下がる
「そうか…なら少し痛い思いをしてもらわなきゃならんな」
そう言って剣を引き抜く
「い、いやっ……」
ミューリは後ずさるがつまずいて座り込んでしまう
(だ、誰か…助けて)
そして剣が振り下ろされる
思わずミューリは顔を背け目をつぶった
創輝が様子を伺っていると黒服の1人が剣を抜き少女に切りかかった
(あんまり面倒に首ツッコミたくはなかったんだが…しょうがない)
創輝は剣を鞘からぬき鞘を投げる
鞘は真っ直ぐ、剣を持った黒服に向かって飛び頭にあたり気絶する
「何だぁ?」
「いやぁ、すいませんね。ちょっとほっとけなくて手が滑っちゃいました」
「全く邪魔だなお前は…フラヴ!」
とっさに創輝は横に飛ぶ
すると黒服の飛ばした火の玉が創輝のいた所を通り過ぎていった
(なんだ今の!…こりゃちょっと本気ださなきゃだめか…)
創輝は刀を構える。刀は青白く光を放っている
創輝は黒服に向かって走り出す
「ほう、かわったもん持ってんな…フラヴ!」
黒服は今度は3つ火の玉を飛ばしてくる
創輝は屈みながらジグザグに走り2つをかわすと残りの1つは回転して切り裂いた
「前言撤回だ。お前おもしろいな」
創輝は黒服に切り掛かる
黒服は剣で受け止めるが剣は呆気なく砕け散る
創輝は足払いをかけ転ばせ、喉元に突き付ける
「お前若いのにやるな」
「あなたこの状況でよくそんな台詞がはけますね、まぁあなた本気じゃなさそうでしたし……はぁ、じゃあもうその娘に構わないって誓ってください」
「あぁ、いいだろう」
「そうですか…ならもう行って下さい」
「そうだ、お前名前は?」
「名前を聞く時は自分から名乗るもんですよ」
「そうだな、悪かった…俺はライナード・クレイルだ」
「俺は鹿内創輝です」
「そうか、また会うことになるかもな。じゃあな…おい行くぞ」
ライナードはもう1人を起こし去っていった
「君、大丈夫でしたか?」
創輝は刀を鞘におさめてから少女に声をかける
「う、うん。ありがとう。えっと鹿内君?」
「そうですよ」
「私はミューリ・ストライト、15歳。ミューリと呼んでね」
「俺も15歳です。俺も創輝でいいですよ」
「敬語は止めて…ね?」
「“今は”これが素なのですが………………まぁあなたならいいでしょう。わかったよミューリ」
「うんよろしくね創輝…ところで創輝はなんでこんなところにいるの?」
「俺もよくわからない。この剣を握ったらものすごく光って。気がついたらここにいた」
創輝は刀を見せながら説明する
「へぇ綺麗だね、でもそんなのみたことないなぁ…おじさんなら分かるかも…ふーん………………って、創輝ここどこかわからないってこと!?」
「まあそうなるかな…ちなみにここはどこ?」
「えっと、セニリハ高原だけど」
「セニリハ高原?…まさか…一応聞くが日本とか東京とか分かるか?」
「ゴメン分からないよ」
「はぁ…そんな…信じられない…」
「ど、どうしたの?」
「俺は…違う世界に来たみたいだ」
「………………………ええぇぇー!」
「どうしよう…」
「どうりで黒目黒髪なんて珍しいと思った…それに魔法を剣で切るなんて」
「魔法?魔法ってさっきの火の玉のことか?」
「もしかして…魔法知らないの?」
「あぁ…俺がいた所じゃ架空の話だったよ。ミューリも使えるのか?」
「この世界の人は多かれ少なかれ使えるえるんだよ」
「じゃあミューリもさっき使えば良かったじゃないか」
「うっ//…さっきまで練習してたから魔力切れてたの!…そ、そんなことより創輝これからどうするの?」
「タイミング悪かったんだな……どうするのっていわれてもな…」
「じゃあ私の家においでよ!」
「そんな…悪いよ」
「いいの!お父さんお金余って困るって言ってたから、一人くらい大丈夫だよ!それにさっきのお礼!……それとも、嫌?」
ミューリは上目遣いに聞いてくる
「うっ…そんな可愛い顔で言われたら断れないじゃないか」
「ふえっ!…可愛い///」
「どうした?」
「な、なんでもないよ!ほら行こっ!」
「ちょっ、待ってよ!」
ミューリは創輝の手を掴み駆け出した