色おじさん
ここは色がなくなった世界。
厳密には色が表現出来なくなった世界。
世界からインクや絵の具といった色を表現するものが突如として消えた。
その後に作った街のポスター、漫画、写真、洋服などすべての人工物は白黒に。
またデジタルも例外ではなく、テレビ、ゲーム、スマホもすべて白黒表現を余儀なくされてしまう。
そんな時代が続きはや100年。
色のない世界で画家を志す少年が一人
ある少年は目の前にある川やヒマワリ、山を眺める。
そしてパレットにつけた墨を筆につけ、キャンパスに描き込んでいく。
あっという間に出来上がった絵は白黒という点を除けばその風景を綺麗に表現できている代物だった。
それを見てプルプルと震える少年。
「くそ!何でだよ!世界にはこんなに色があるのに!」
少年は目の前にある風景を見て嘆く。
「青く澄んだ川!、その周りに咲くきれいなヒマワリ!遠くにそびえ立つ緑の山々!世界にはこんなに色があるのに!何で俺はこれを表現出来ないんだ!」
そういって少年はポッケからポストカードを取り出す。
そこにはかなり色褪せたヒマワリの絵が描かれていた。
「………色が欲しいよ」
悲しそうな少年に、背中に大きな鉄のリュックを背負った大男がやってくる。
「やぁ少年。画家かい?珍しいね」
陽気に急に話しかける大男に少年は警戒する。
「………おじさんは?」
「よくぞ聞いてくれた。おじさんは君みたいな子を救うために来たんだ」
「………帰る」
「あー!待ってくれ!君の今1番欲しいものを持ってるんだ!」
「………」
いかにも信用していない目つきで大男を見る。
「絵の具だよ!」
「………え?」
少年の目が輝く。
「おじさん絵の具持ってるの?」
「あぁ。」
しかし少年は正気に戻る。
「………怪しいよ」
「本当さ!」
そういって大男はリュックから器を取り出す。
そして地面を見渡し、灰色の石を取り器に載せる。
「よーく見といてよ」
そういって手を当てると不思議なことにその石は灰色の絵の具と化した。
「!」
少年は驚く。
「おじさんは手に触れたものを絵の具に変えられるんだ。これでおじさんのこと信用してもらえたかな?」
「………うん。」
「さーて。君は何色が欲しいんだい?」
「えーっと、緑と黄色と青」
少年は風景を指さす。
「ほう。じゃあおじさんと集めに行こうか」
「え?」
「すまないが一緒に集めてくれ」
2人はヒマワリの方へと歩き出す。
そして既に千切れて落ちてしまったヒマワリを手に取り、黄色と茶色、緑色の絵の具を作成する。
「さーて。青はなかなかないんだよな。」
「おじさん」
「ん?何だい?」
「おじさんは普段何をしてるの?」
「うーん。旅だね。色を必要とする人探す旅。」
「おじさんは何で絵の具を作ってくれるの?」
「簡単なことさ。この時代で純粋に色を必要としてくれる人を助けたいんだ」
「お金はいらないの?そんな能力があるならたくさん」
「君は画家になって何をしたい?お金を稼ぎたいかい?」
「………いや。そこにある世界を表現したい」
「それと一緒さ」
「………そうなのかな?」
「そんなもんだよ。あっ。」
そういってひっそりと落ちていた青い花を拾い上げる。
「よし。これで青もあった。これで描いてみようか」
「うん!」
そういって少年は風景を描いていく。
始めての色を使った絵に少年は感動を覚えた。
そんな少年を微笑ましく見る大男。
そんな楽しいお絵かきの時間はあっという間に終わった。
少年は絵の具を使い本当に綺麗な風景画を描き上げた。
その出来栄えを見て大男は感心する。
「おぉ。素晴らしい絵じゃないか」
しかし少年は納得がいっていない様子である。
「………いや。まだまだだ。世界はこんなもんじゃない。もっと綺麗なんだ。」
「そうかい」
「おじさん!」
「何だい?」
「ここに残って毎日絵の具を作ってよ!お願い!」
大男は微笑む。
「残念ながらそれは受け入れられない。」
「そんな」
「君のように色を必要とする人はたくさんいる。色はみんなに平等じゃないと」
少年は悲しそうにしかし納得した表情を浮かべる。
「………そうだね。」
「いい子だ。じゃあ少年。また来年会おう」
「!」
少年は嬉しそうに微笑む。
「また来年!今度はもっと上手く描くから!」
そう言って大男は去っていき、色を掴んだ少年は来たるべき日のため描き続けるのであった。




