青い瞳
「おじさん。
トラって、静かだよね」
クシでトラの毛を梳きながら、ぽつりとつぶやいた。
おじさんは新聞を下ろし、こちらを見た。
「母さんの家のユキがね、すごく大きな声で鳴くんだ。
真っ白で、青い目をしてる子なんだけど」
トラの首筋を撫でて耳を澄ますと、トラは小さくゴロゴロと喉を鳴らした。
おじさんは湯呑を軽く回しながら、目を伏せた。
「……掃除機とかドライヤー、平気だったりしないかい?」
僕は少し考えてから頷く。
「うん、怖がらないみたい。なんで?」
おじさんは小さく息をついた。
「白くて青い目の猫はね、耳が聞こえにくい子が多いらしいんだ。
少し気をつけてあげたほうが良いかもしれないね」
僕はトラをそっと撫でた。
名前を呼ぶと、ゆっくり薄目を開けてまた閉じた。
音のない世界は、どんなふうなんだろう。
怖くないだろうか。
小さな声で名前を呼びながら、トラの毛並みを整えた。