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第27話「ダンジョンクリア」

「反転術式構築。魔力転送路固定。龍脈接続開始」


 海流かいるのルーンに反応し、周囲の魔法元素がベクトルを持ち、流れ始めた。

 魔力の行き着く先、侍ismの竜輝りゅうきの身体が、光と熱を持つ。

 熱を鼻先のピット器官で、魔力を頭部のロレンチーニ器官で敏感に感じ取ったミズガルズオルムは、逃げようと体をくねらせた。

 その鼻先へは玲菜れいなの切っ先が。

 逃げる背中には虹愛にあのカギ爪が襲い掛かる。

 あいかわらずダメージは与えられなかったが、その攻撃はミズガルズオルムの動きを規制し、その場にくぎ付けにした。


「天より来たれ闇の閃光。人と魔族と精霊と幻獣の命のともしびを持ちて、星の果てより出でし破壊の鉄槌とならん」


 周囲を漂う魔法元素の流れが、海流を中心とした強大な重力に行く先を捻じ曲げられ、一つ所に集中する。

 輝きはやがて自らの重量に押しつぶされ、光すらも逃れられない純粋なエネルギーの塊として、その輝きすら中央に押し込めた。

 わずか一点、針先ほどの漆黒の球体。

 現世――この地球という惑星ほし――において、46億年の歴史の中で最も()()魔力の塊が、音もなく、光もなく、ただ海流の指先に存在していた。


「|極超新星爆発《ガンマ=レイ・バースト》」


 闇は消え、あたりを静寂が包む。

 動きを止めたミズガルズオルムを前に、玲菜と虹愛は顔を見合わせた。


「れいぽむ、にゃんぴ。もういいぞ、オレの後ろに下がってろ」


“……どうなったんだってばよ?”

“また通信障害……じゃないよな?”

“しんかい、CGエフェクト忘れてないか?”

“まだCG派いんのかよ”


「いいから黙って見てろって」


 玲菜も虹愛も海流の背中に隠れ、ドローンも頭上数センチの位置まで降りる。

 その正面に魔法の障壁を張ると、海流は配信に乗るように、指を三本立てて見せた。


「カウントダウンだ。3」

“3!”


「2」

“2!”


「1」

“1!”


「……ゼロ」

“ゼロォォォ!”


 すべての指が折られ、握りしめた拳の向こうで、ミズガルズオルムの身体が苦しげにのたうつ。

 次の瞬間、一本の細く絞られた光線が、分厚い体表を突き破った。

 ぐるん、ぐるんと不規則な方向へと回転する光線は、その進行方向にあるすべてのものを切り裂く。

 当然その光線は海流たちをも横切ったが、張られたシールドと火花を散らしただけで、チームのメンバーにもドローンにも実害はなかった。

 粉微塵にされたミズガルズオルムの肉片の中から、竜輝が立ち上がる。

 彼はふらふらと海流の前に進むと、ひざを折り、こうべを垂れた。


「しんかいくん……いや、魔王さま。あなただったのですね」


「なんだよりゅうき、お前、記憶が?」


「ええ、二度も命を救われたのです。この大賢者ルキウス・キケロ、あなたの魔力の波動を忘れはしません」


“え? どういうこと?”

“大賢者ってりゅうきが?www”

“おい、さっきチャットでネタバラシしたやつ、説明プリーズ” 1,000円

“いやいや、おバカキャラが魔法使えるようになったからって急に大賢者はないw”

“魔王しんかいと大賢者りゅうきキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!” 5,000円


 チャット欄が盛り上がる中、ミズガルズオルムの肉片の中から、ワープポートが姿を現す。

 オレンジと緑の入り混じった光はじわじわと広がり、やがてダンジョンの壁や床が共鳴するように輝き始めた。


「え? なんかヤバくない?」


「ラスボス倒しちゃったから、ダンジョン自体が消えるのかもしれんですねぇ」


「ちょっと待て! 侍ismの連中を回収しないと!」


 走り出そうとした海流たちだったが、次の瞬間には渋谷2号ダンジョンのワープ部屋に居た。

 真っ白い壁、広い室内。

 いつものスタート位置である。

 ただ、いつもと違うのは、部屋の中央にあるワープポートがなくなり、小さなカギが落ちていることだけだった。


「戻った……?」


 玲菜が小さくつぶやく。

 その真っ白な部屋には、『侍ism』『GYU-TAN!』両チーム全員が、無事に帰還していた。

 竜輝はカギを拾い上げ、海流に手渡す。

 こうして、人類初のダンジョンクリアの栄光は、チーム『GYU-TAN!』の名とともに歴史に刻まれた。

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