第二章
第二章 居場所
馬車がガタゴトと音を立てて揺れる。
「わあ!」
朝の街は、新鮮さに包まれていた。
御者をする青年が話しかける。
「俺の名はノイアス。あっちの青い山の麓にある村の農民さ。」
「よろしく、ノイアスさん。」
「ああ。あんたは?」
「オレは村田・・・。じゃなくて、ベルモ・・・・・・。いや、村田です。」
「ムラタか。なんか、変わった名前だな。」
(んー、若干イントネーションおかしいけど・・・ま、いいや。気にすんな、オレ・・・。)
「ところで、どうしてムラタは追われてるんだ?」
「えっと・・・・・・その・・・・・・。」
「言えないなら、無理に言わなくてもいい。何か特別な事情があんだよな。」
「・・・・・・はい。すみません。」
「気にすんな。」
「あの、もしもご迷惑でなければ、ノイアスさんの村で、しばらく暮らせませんか?」
「俺の村で?・・・・・・そうだなあ・・・・・・。」
チチチ、と小鳥がさえずっている。朝日もだんだん柔らかくなってきた。
「俺はいいんだけど、村長に聞いてみねえと。」
「分かりました!」
「おう。」
村までの道のりはそれなりに長かった。早朝に出たのに、着いたのはお昼時だった。
「ノイアス兄ちゃん、お帰り!」
「おう、ただいま!」
「兄ちゃん、あとで遊んで!」
「時間があればな。おい、ジル。」
黒髪の精悍な村人が返事をする。
「なんだ?」
「父さんはどこだ?話がある。」
「お前の親父なら、上の牧場でヒツジの世話してらぁ。」
「分かったぁ。」
「牧場に行くんですか?」
「ああ。ヒツジは見たことあるか?」
「ないです。図鑑でしか見たことなくて。」
「図鑑?なんじゃそりゃ?」
「うーんと、絵とか写真とかを使って生物などについて詳しくまとめた本です。」
「ふーん・・・・・・。写真ってのは、何だ?」
「写真は、風景をそのまま紙に収めたものです。」
「絵とか映像石みたいなもんか?」
「絵とは違って、瞬時に、かつ精密に、その景色を写すことができるんですよ。」
「なるほど。あんた、詳しいな。」
「いえ、全然。珍しいものではなかったですし・・・・・・。」
「すげえな。あとでもっと教えてくれよ。」
「もちろんです!写真を撮るためにはカメラっていう機械を使うんですけど・・・・・・。」
説明しながらオレたちは、馬車のまま山を登って行った。森の匂いがまとわりつく。
転生前、ずっと都会で暮らしていたから、森とか自然とか、そういうのは初めてだった。最先端の機械や技術、便利な街並みで暮らしていて、それが当たり前だったのだ。
(新しい世界を見てるみたいだ・・・・・・。)
オレのいた街の、その外側は、眩しいほどに輝いている。
そんなこんなで牧場に着いた。
ヒツジが、本物のヒツジがいる。メエエって鳴くんだ・・・・・・。すごく驚いた。
「父さん。」
ノイアスの声に、中年の細身の男性が振り返った。
「ノイアス・・・・・・。彼は?」
「彼はムラタだ。どうやら誰かに追われてるらしくて、ここまで逃げてきた。ムラタ、こっちは俺の親父。村長やってる。」
「ムラタといいます。家の者に追われてて、帰るところがないんです。少しでも構わないので、この村に置いていただけませんか?」
「あんた、どこぞのお坊ちゃんだろ?」
「・・・・・・っ!」
「そうなのか?」
「見りゃわかる。まず、服の質がこの村のヤツらとは違うしな。だが、帰るところがないってんなら、好きなだけいてもらって構わねえが・・・・・・。」
「ありがとうございます!えっと・・・・・・。」
「ノートンだ。よろしくな。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
「んじゃ、今日は歓迎会だな!俺たちの村へようこそ、ムラタ。ゆっくりしていってくれ。」
「ああ!」




