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邪な言葉を操る神の噂

「アレン伯爵は私のことが気に入っているらしい。だから私はパーティーに誘われた。そう王から言われたわ」


ラミアが呟くように言った。ラミアは自身の父のことを「王」と呼んでいた。


ヒルコとラミアは馬車でガイア領まで移動していた。馬車に揺られながらヒルコは主人の話をただ聞いていた。


「伯爵は20代後半で、見た目はそんなに悪くないし、彼の家に伝わる『神器』を継承して、強い力も持っている。そんでもってお金持ち」


「優良物件ですね」


ヒルコが相槌を入れる。


「でも、私はあまり好きじゃないの。それに妙な噂もある」


「妙な噂?」


「伯爵は人肉を食べるのが好きみたいなの」


「えーっと」


返答に困っているヒルコを見て、ラミアはクスクスと笑った。


「まぁ、噂だけどね。ごめんなさい。こんな変な話に付き合わせて」


ラミアは鞄から干し肉を取り出し、ヒルコに渡した。


「お腹が減ったから、食べましょうよ」


そう言って二人は干し肉をかじり出した。


ヒルコがラミアの奴隷になって2日経った。ヒルコは別段、奴隷としてこき使われることもなかった。むしろ、ラミアは荷物を運んだり、食事の用意をするなどの雑用も率先して行っていた。


主人と奴隷というよりは、仲間のような関係。


辛い労働生活が待っていると覚悟していたヒルコからすると拍子抜けだった。


「ねぇ、『邪な言葉を操る神』って知ってる?」


唐突にヒルコが訊ねた。


ヒルコはキョトンとした表情で、視線を向けた。


「昔、昔、『邪な言葉を操る神』という神がいた。とても優秀な神だったから他の神々に嫉妬され、危険な神だといわれのない謗りを受け、封印されてしまった。まぁ、作り話だって言う人が多いけど。でも」


黙ってヒルコは聞いている。


「でも、私はきっと『邪な言葉を操る神』はきっと本当に存在していると思うの。だって、私は『邪な文字』を見たことがあるから」


「え?」


ヒルコは目を見開いた。


「一体、どこで『邪な文字』を見たんだ!」


強い力でラミアの肩を掴み、訊ねた。


「え、えっと、王国の宝庫の中。そこに『邪な文字』で書かれた禁書が保管されているの」


ヒルコの勢いに驚きながらも答えた。


はっと我に返ったヒルコは肩から手を放し、謝罪した。


「申し訳ありません」


「あぁ、別にいいわよ。それよりも、ヒルコも『邪な言葉を操る神』に興味があるの?」


ヒルコの無礼な態度も笑って許し、ラミアが質問した。


「いや、まぁ、多少ですけど」


曖昧な返事をした。


「もしも『邪な言葉を操る神』が今もまだ封印されているなら、どんな思いでいるのかな?」


ラミアがポツリと呟いた。


ヒルコは自分の手のひらを見つめながら言った。


「さぁ、それは俺にも分からないです」


その後も、馬車の中で二人は雑談を続ける。


魔物に遭うこともなく。盗賊に襲われることもなく。


二日後、目的地であるアレン伯爵の屋敷に無事たどり着いた。

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