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人間不信の王女

「人間は信用できない」


少女は言った。


銀髪の髪に、青い瞳、褐色の肌の少女。


「悪いように扱わない。ただ私を護ってくれればいいの」


少女はヒルコに剣を渡した。


「貴方、相当の腕前だって聞いたわ。よろしくね」


ヒルコは曖昧な笑みを浮かべた。


「奴隷の中での話ですよ」


「十分よ。そう言えば、自己紹介がまだだったわね。私はラミア。リビュア王国の第4王女」


「王女様が、どうして護衛もつけずにこのような安いというか、質素な宿に泊っているんですか?」


二人がいるのは十畳ほどの部屋だ。ベッドと机があるだけで、寝るためだけの格安の部屋。。


ラミアは己の境遇を語り始めた。


「私はリビュア王国の貴族、アレン伯爵からパーティーに誘われていて、これからガイア領に向かう予定なの」


「一人で?」


「ええ。そうよ。悪い? だってだぁれも信用できないんだもん。一人の方が楽じゃない? 信用できない城の人間と一緒に旅するなんて虫唾が走るわ。だから、王に言ってやったの。『護衛』なんて邪魔だから一人で行くって」


「誰も止めなかったのですか?」


「ふふ。誰も止めないわ。王女と言っても私は飾り。父は王だけど、母は奴隷だった。忌み子の私には、何の権限もない。兄妹から蔑まれ、王妃はあからさまに私を嫌い、臣下は王妃を恐れて私に近づこうとしない。王は私から逃げるように目を背ける。でもまぁ、政略結婚の道具としての価値はあったから今まで生かされていたのかな? 今回の件もきっとそういうことなのかな? いや、でも、アレン伯爵を取り込んでも良いことなんてない」


突然、ぶつぶつと独り言をつぶやきだした。


「それでも、一人じゃ危ないですよ。盗賊に襲われるかもしれない」


「だから、貴方を買ったんじゃないの」


ラミアがヒルコを見つめた。


ヒルコは呆れたように肩をすくめた。


「用心棒を雇えばいいじゃないですか」


「用心棒が私を裏切るかもしれないじゃない」


噛みつくようにラミアが言った。


「その点、奴隷は安心よね。奴隷契約を結べば、私を裏切れない。裏切ろうとしたら死んでしまう」


楽しそうにラミアはヒルコに付けられた首輪を見つめた。それは奴隷屋リリスの『神器』によって造られた魔道具だ。奴隷の首輪には主人の意思一つで奴隷を殺すことができる力が秘められていた。


「人間は信用できない。でも、奴隷は信用できる」


一つの真理にでも行きついたとでも言わんばかりに得意げにラミアは頷いた。


「まぁ、何はともあれ。今から私は自由だ。信用できる仲間もできた。よろしくねヒルコ」


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