オトヒメ
「どうも~オトヒメチャンネルでっす! はい! 今回は『異世界逝ってみた第六弾!!一面のボス戦に参加してみた!中編』です! 見ての通り、首を斬られちゃいましたぁ~。酷いですよねぇ。ボクがアンドロイドじゃなかったらゲームオーバーでしたよ。本当にクソゲーやってる気分! でも愚痴ばっかり言っていても仕方がないので、撮影用のカメラができたと思って前向きに続けましょう! 面白くなくてもチャンネル登録お願いします!」
オトヒメは切断された首を己の右手で掲げ、首の無い身体へ向けて一人で喋っていた。
「喧嘩を売っているのか?」
ミノタウロスが静かな声音で言う。
「喧嘩なんて売ってませんよー。ボクだって大変なんです。異世界探索しながら動画撮影もしなくちゃいけないんだから。あ、アリアドネさん。撮影係お願いします」
「え? あ、はい」
首をアリアドネへと渡し、オトヒメは撮影の仕方をオトヒメがレクチャーし出す。
アリアドネはアタフタしながらも切断された首を持つ。
「それでは、ボス戦を再開したいと思いまーす!」
首を無くしたオトヒメの身体はピースサインしながら、ミノタウロスへと向き合う。
「っつーかさぁ。お前如きが俺に敵うわけねぇだろ」
「それは、どうでしょうか? 『ヤオヨロズ』をあまり舐めないでください」
アリアドネの手の上でオトヒメの首が不敵に笑った。
「『核融合炉』最大出力。『絶対防御の刺青』起動」
瞬間、オトヒメの瞳が青い光を放ち、切り離された身体からは青い幾何学的な文様が浮かび上がった。
「むっかし~、むっかし~、うらしまはぁ~、たっすけた亀に~、つれられて~、竜宮城へ~、来てみれば~」
首から唐突に下手くそな歌が発せられる。
オトヒメは地面を強く蹴り、轟音と共に消えた。
油断していたミノタウロスへと接近し、彼の仮面へと拳を叩きつけた。
ミノタウロスが吹き飛ばされる。
「絵にも描けない美しさ~、乙姫様の~」
首は歌い続けている。
「ふん。上級の『使徒』レベルの能力はあるみたいだな」
ミノタウロスは無傷のまま立ち上がる。仮面にもヒビ一つ入っていない。
雷と共に、斧を振り上げたミノタウロスが消える。
轟音と共に、拳を握りしめたオトヒメの身体が消える。
斧と拳が激突した。
拳には『絶対防御の刺青』と呼ばれる文様が覆われている。言葉通り、あらゆる攻撃を無効化する力が付与されている。
だが、オトヒメの拳にヒビが入った。
「はん。【武技】を使っても完全に壊れねぇのか」
ミノタウロスは再び雷と共に消える。
オトヒメも『核融合炉』によって超加速した身体でミノタウロスを負う。
二人の速さは拮抗していた。
斧と拳が何度もぶつかり合う。
そして、オトヒメの拳が砕けた。
『絶対防御の刺青』に乱れが生じる。チカチカと幾何学的な文様が騒ぎ出すように、体中で光っていた。
「あー。やっぱつまんねぇな」
一瞬の隙を付き、斧がオトヒメの胴を両断した。途端、身体から青い幾何学的な文様が消え去り、力尽きたように崩れ去った。
オトヒメの首から発せられていた歌がピタリと止まった。青く輝いていた瞳も通常通りのものになっていた。
「いや~、負けちゃいましたねぇ。これは自爆しかないかな? あはははははははは」
冗談しかめながらオトヒメの首が言う。
その時、青い光が虚空に浮かび上がった。
「ようやく、起きたのね」
光に気づきラミアが呟いた。それは邪な言葉だった。
そして、迷いの迷宮ラビリュントスを邪な言葉が隈なく覆った。
「まさか、『神の夢』から戻ってきたのかよ。そんな事例聞いたことねえぞ!」
はしゃいだ声をミノタウロスが上げた。
彼の仮面は、一人の少年へと向けられた。
青い光の中、目を赤く輝かせ、メイド服を着せられた少年がいた。
「俺はミノタウロス! お前の先輩だ! 『アステロペーテース』の『化身』であり、『凌辱』者だ。お前の名は何て言うんだ?」
「俺はヒルコ。『邪な言葉を操る神』の『化身』であり、『復讐』者。この世の呪いを解くために、『夢』から戻ってきました」
目を赤く爛々と輝かせて、ヒルコは告げた。




