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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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ボルカノの決闘





「あはははっ・・・。

盗賊を討て、だって?

笑わせる・・・。」


笑ってはいるが、

トライゾンは、悲しそうな顔で

そう言った。


「トライゾン・・・。」


母親が泣きながら、

わが子を見つめている。


「そうか、お前も、か・・・。

お前も、俺を認めてくれないんだな!

もう、お前なんか、

母親でも、なんでもねぇ!!」


「!!」


そう言い放つと、

トライゾンは、落ちていた剣を拾った。


「そこから離れろ!」


オレは、母親にそう告げて、

再び、剣を構えた。

母親は、ヨロヨロと家へ向かって

歩いているが、今にも倒れそうだ。


剣を構えたトライゾンは、

怒りと、悲しみが

ごちゃ混ぜになった表情で

オレを睨んでいる。

殺気が、いや、憎悪が

どんどんトライゾンの中で膨らんでいる感じだ。


母親の登場で、少し気が抜けていたが

再び緊張する・・・!


「すぅー・・・はぁぁ・・・。」


深呼吸して、対峙する。


「レッサー王のバカのせいで、

俺の努力が、人生が、すべてパーになった!

みんなが、俺の邪魔をする!

みんなが、俺を認めねぇ!

だったら、みんな、切り伏せるまでだ!」


トライゾンがそう叫び、

オレに突進してきた!

一気に距離を詰められ、

剣の間合いに入ってくる!


トライゾンは両手で持った剣を

大きく振り上げて、

長身の高さより、さらに上から

剣を振り下ろしてくる!

かなり速い!


ブォン!


「ほっ!」


オレは後ろに半歩下がり、その剣をかわす!

しかし、避けた剣先は

下へ向かっていたはずが、

クネっと曲がり、オレの胸に向かって伸びてきた!


「ぬっ!?」


ヒュン!


体をひねって、剣先を避ける!

しかし、また剣先の軌道が

クネっと変わった!


ヒュォ!


「ぬおっ!」


オレはすかさず

大きく後ろへ飛んだ!

なんとかトライゾンの剣を避け、

そのまま、やつとの距離をとった。


「はぁはぁ、変幻自在の剣、か・・・。」


「はははっ、よくかわしたな!」


王都の宿屋で聞いた情報どおり、

トライゾンの剣は、クネクネと

変幻自在に軌道が変わるようだ。

剣そのものがクネクネするのではなく、

こういう剣術なのだろう。

今も、トライゾンの剣先は、微妙に揺れて、

合わせてトライゾンの体もゆらゆらと揺れている。

独特な剣術だ。


ギリギリのところで、かわしていたら

いつか剣先に追いつかれそうだ。

やつの剣をはじいて、隙を作るか。


「ふっ!」


今度は、オレから仕掛けてみる!

一気に間合いを詰め、

剣を振り上げて・・・


トンッ・・・


「!!」


トライゾンが、すぐ後ろへ飛び、

オレの剣の間合いから離れた!


ダッ!


そうかと思えば、すぐに前進し、

剣を振り上げてくる!

攻撃のタイミングをずらされたオレは、

防御に回される!


ヒュォ!


やつの剣が振り下ろされる!

オレは、その剣を弾くつもりで、

振り下ろされる剣に向けて、剣を・・・


ヒュイ!


「ぬぉ!?」


やつとオレの剣が当たる瞬間に、

やつの剣先の軌道がクネっと曲がり、

オレの剣を避けて、やつの剣がオレに向かってくる!

それを、剣を握っていた右手を離し、

半身をひねってかわす!


ヒュン!


ぐきっ!


「っ!!」


腰に痛みが走った!

ひねったらしい!


ヒュオ!


なおも、やつの剣先の軌道が変化し、

オレの胴を狙ってきた!


「んぐ!」


寸でのところで、

後ろへ飛び、剣先をかわす!


「はぁはぁ・・・いたたっ!」


腰に手を当て、痛がるオレに


「はぁ、はぁ・・・ははははっ!

こんなジジィに、俺の仲間たちはやられたってのか!?

死んで当然だな!」


そう言い放つ、トライゾン。


「はぁ、はぁ・・・、

お前の仲間たちは立派な騎士だった!」


「あぁ?

だから、どうした!?

ジジィにやられるような

弱いやつは俺の仲間に必要ない!

俺の役に立てないやつは

死んで当然だろうが!!」


・・・なるほど、こういうやつか。

レッサー王が決闘の結果を捻じ曲げてしまったのは

誉められたものではなかったが、

こういうやつを

騎士団長にしたくない気持ちは、よく分かった。


「では、お前は

なんの役に立っているんだ!?」


「あぁ!?」


「騎士団を辞めて、いくつもの村を壊滅させて、

仲間だった騎士たちも、罪のない人々も殺して・・・

なんの役にも立っていないのは、お前の方だろ!」


「うるせぇー!!

俺は、この国最強の騎士団長になったんだよ!

これから役に立つはずだったんだ!

俺を役立てなかったのは、バカな王のほうだろ!!」


ダッ!


トライゾンが走ってくる!


ビュオ!


長身を活かした高さからの振り下ろし!

これを剣で・・・


ブォ!


「ぬぅ!」


まただ!

剣と剣が、かち合う瞬間、

やつの剣先の軌道が変わって

オレの剣を避けて攻撃してくる!


ギリギリのところで避けたつもりだが、

腰を痛めたせいで、

避ける反応が遅れてしまった!


チッ!


「くぅ!」


やつの剣がオレの右腕をかすめた!

幸い、防具に守られていたが


ギュオ!


「ふっ!」


まだ、やつの攻撃が止まらない!

かわした後の剣先の軌道が変わり、

再びオレに襲い掛かってくる!



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