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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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非情なるおっさん




【※残酷なシーンが描かれています。

苦手な人は、読まないようにしてください。】






オレは、まだ気を緩めることなく、

気配を探りながら、『火柱』の周りに

倒れている騎士たちを見回った。


『火柱』を逃れ、オレの剣技からも

逃れている騎士がいるかもしれない。

オレの剣技を受けたとしても、

軽傷で済んでいて、動ける騎士がいるかもしれない。

用心しながら、倒れている騎士たちを見て回る。


「ううぅ・・・。」


ガシュッ!


片足を切り落とされて倒れていた騎士がいた。

迷うことなく、オレは、そいつの首をはねる。


ザシュッ! ガスンッ! ザンッ!


息がある騎士たちが数人いたが、

容赦なく、首をはねていく。

残酷だが動ける者を見逃してしまえば、

自分たちの命が危険になる。


小高い丘のほうまで歩いてみる。

ほかに生きている騎士の姿はない。

どうやら、オレが剣技を放つまでには

こちらに走ってきた騎士たちは

すべて丘を越えてきていたようで・・・

だいたい、オレの剣技で倒れてくれたようだ。


そこまで確認してから、


「ふぅぅぅぅぅ~・・・。」


オレは長い息を吐いた。

体中が、ズキズキと痛む。

小高い丘から、また木下がいる草木の方向へと歩く。

一応、倒れている騎士たちに

また用心しながら歩く。


もし、まだ動ける者がいれば、

たとえ手足がなくても、魔法は使える。

魔力の高まりがないかを再確認しながら、

木下の元まで戻った。

しかし、

もう生き残っている騎士はいないようだ。

騎士たちの気配はなく、全滅している。

この第二陣の戦いも、オレたちの勝ちだ。


「ふっ!」


ビュン!


剣に付いた血を振り払う。


ビシャァァァ!!


砂地が、また真っ赤に染まっていく。

正直、今は剣を振るだけでも

ズキンと関節の節々に痛みが走る。


「くっ・・・はぁ、はぁ・・・

もう大丈夫だぞ、二人とも!」


オレが声をかけると、

木下がフラフラと草木から出てきた。

左肩を手で押さえている。

布を当てているらしく、

その布が血で染まっている。


「大丈夫か!?」


「は、はい・・・ナイフがカスっただけです。」


痛そうな表情の木下。

傷を負わせてしまったが、

とりあえず無事だったことに安心した。


「はぁ、はぁ、無事で何よりだ。」


「そ、それよりも、おじ様・・・これは・・・!」


「さ、佐藤さん!!」


木下が何か言おうとした時、

今まで草木にジッと隠れていた

レーグルが出てきて、大声でオレを呼んだ。


「な、ななな、なんなんすか、今の!?」


なぜかガタガタ震えながら

オレに質問してくる。


「あぁ、今のは・・・

『対ドラゴン用』の剣技のひとつ、

『火竜殺し・胴薙ぎ』だ。」


「ドラゴン用!?」


「まぁ、オレは一応、

『竜騎士』の資格を持つ、『なんちゃって騎士』でな。

普通は、ドラゴンに対して使う剣技だから、

こういう使い方は間違っているんだが・・・

まぁ、なんとか、敵全員に当たってくれたみたいだ。」


オレはそう言いながら

自分が剣技を放った方向を見渡す。

死体の山・・・血の海・・・。

本当に・・・オレがこれをやったんだな。


「こ、こんなの・・・

人間の技じゃないっすよ・・・。」


レーグルも、

剣技を放った方向を見渡しながら

ブルっと身震いして、そう言った。


「わ、私も、そう思います・・・。

偉大な魔導士の

極大魔法ぐらいの威力ですよ、これ・・・。」


木下も、驚愕の表情だ。

そうか・・・この威力は、極大魔法並みなのか。

しかし、オレの先輩たちは、

これくらいの剣技や魔法をなんなく使えていた・・・。

つまり、これが

『ソール王国』出身者の実力ということか。


「はぁ・・・はぁ・・・。」


木下たちの安否が分かった途端に

気が抜けて、体中の痛みが

強くなってきた気がする・・・。

オレはフラフラになりながら、

荷物がある草木まで歩き、

また水筒で水分補給した。


ガブガブッ・・・


今度は、木下もレーグルも

おのおの自分の荷物から水筒を取り出して

水分を補給している。


「ぷはっ・・・はぁ、はぁ・・・。」


「おじ様、大丈夫ですか?」


「あぁ・・・はぁ、はぁ・・・

さっきの剣技は、

かなり体の負担が大きくてな。

・・・体中が痛い・・・。」


「それなら、

回復用の薬はいかがですか?

もしかしたら、多少は

痛み止めになるかもしれません。」


先に、回復用の薬を飲んでいた木下が

そう言って、オレにも勧めてきた。

傷を治す薬のはずだが、

薬の成分には、そういう効果もあるのだろう。

今はワラにもすがりたい気分なので、

木下の言う通り、回復用の薬を飲んでみることにする。


「お、俺も飲んだほうがいいっすかね?」


レーグルが、そんなことを言い出したので


「お前は傷ついてないだろうが!」


そう突っ込んでおいた。


「そ、そうっした・・・はははっ。」


レーグルが引きつった笑いをした。


「ふっ・・・ふふっ。」


「は、はははっ。」


つられて、オレも木下も笑ってしまった。

3人とも気が緩んだのだろう。

笑いながら

・・・生きていることを実感していた。




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