絶命へのいざない
「はぁはぁ・・・、おーい!
援軍を呼んできたぞぉーーー!!」
オレたちは小高い丘に到着した。
ただ、集団で走ってきたため、
脚力の個人差が出て、到着した人数がまばらだ。
まだ到着していない騎士たちもいる。
ここからでは村は見えない。
背後から、集団の殺気を感じる。
怖くないわけじゃない・・・背中に冷や汗を感じる。
きっと、騎士団の群れが、続々、
丘を乗り越えてきている姿を見て
木下たちのほうが
大きな恐怖を感じていることだろう。
「どこにいるんだー! おーい!」
オレは演技を続ける。
背後の騎士たちは、すでに10人以上いる。
魔法を使うなら、今しかない。
一網打尽にしたいところだが、
まだ丘を乗り越えてきていない騎士たちの
到着を待っていたら、オレの演技がバレて、
魔法を使うタイミングを逃してしまう恐れがある。
「おい、血だ! あそこに血痕があるぞ!」
『火柱』の焼け跡が、二つ。
その片方の焼け跡には、さきほどの
騎士たちの血が、あちこちに飛び散っている。
それを見つけた騎士たちが、
血の周りに駆け寄る。
「おい、お前!
『キラウエア』は、どこだ!?」
イライラしながら、副団長の男が
オレに質問してくる。
「オレにも分からん!
さっきまで、ここにいたのは確かなんだ!」
呼び止められても、オレは仲間を探す演技を続ける。
どんどん、木下たちの隠れている草木が近くなっていく。
なにをモタモタしてるんだ? 木下、やれ!
ふいに、背後の殺気が大きくなった!
チャキッ
オレが振り向いた時には、
副団長の男が、剣を抜いて
殺気がこもった目をオレに向けていた。
「なにか見つけたか!?」
それでも、オレは演技を続け、
副団長の男に、そう呼びかけてみた。
しかし、男の表情は
どんどん怒りをあらわにし始めていた。
「見つけたか?だと!?
ふざけるな!! もう茶番は止めろ!!
お前、俺たちをここにおびき寄せて、
どうするつもりだ!? あぁ!?」
バレた!
もうこれ以上、オレが演技を続けても、
この男は、騙されてくれないだろう。
その時、やっと左の草木から
魔力の高まりを感じた!
木下の魔法の詠唱が始まったのだ。
「うわっ! なんだ!?」
「あちっ!」
「みんな、離れろーーー!」
「うわぁぁぁ!」
副団長の男の後ろに、炎の円が出来上がった!
副団長の後ろをついてきていた
騎士たち10人ほどが、それに気づき、
我先にと、その円から逃げようとしているが、
人数が多いため、すぐにその場を離れられない!
「そこか!」
ビュッ!
しかし、今にも魔法が発動する、
その前に!
副団長の後ろにいた男が、
腰からナイフを抜き、木下のいる
草木のほうへ投げてしまった!
ガサッ!
「っ!!!」
しまった!
副団長の男の体の影になっていて
後ろにいる男の動作に気づくのが遅れてしまった!
途端に、みるみる炎の円が消えていく!
気配はあるから、
おそらく木下に直撃はしていないと思うが、
魔法の詠唱を妨げられてしまったようだ!
魔力の高まりが小さくなっていく・・・。
声を上げなかったのは幸いだが、
木下! 本当に無事だろうか!?
今すぐ駆け付けたいが・・・
背後の殺気が、さっきより大きくなって
オレに近づいてきた!
オレは、すかさず
副団長の男に向き直り、剣を抜いた!
スラァァァ・・・
「あー!?
やっと本性を現しやがったなぁ!
おっさんよぉ!!」
副団長の男が、怒鳴るように言い放つ。
副団長の男に続いて、その後ろの男たちも
次々に、剣を抜き始めた!
チャキッ・・・スラァァァ・・・カチャッ・・・
・・・失敗だ!
木下の安否は分からないが、
騎士たちが臨戦態勢になっており、
木下の位置もバレている。
再度、『火柱』の魔法を仕掛けても
もう成功しないだろう。
レーグルの気配は感じるが、出てくる気配はない。
木下の『火柱』が失敗した以上、
今、出てくるのは得策ではない。いい判断だ。
まぁ、恐怖で出てこれないのかもしれないが。
さて、そうなると・・・
「おい! バルー! カインドー!」
「あいつら、どこへ行ったんだ?」
騎士たちが、仲間の名前を呼びながら
辺りをキョロキョロと探し始めた。
しかし、当然ながら、
どこからも返事は返ってこない。
「ハイカーーー!」
村で取り乱していた男の騎士が
必死に、周りを見渡しながら
女の騎士の名前だけ呼んでいる。
たぶん仲間以上に親しかったのだろう。
「本当に、あいつら・・・どこへ!?」
「まさか、こいつに!?」
騎士たちの殺気が、どんどん膨れ上がり、
その十数人の殺気が、すべて
オレ一人に向き始めている!
・・・そうなるよな。
多勢に無勢・・・この状況、どうする!?
オレは、さりげなく、
剣を構えながら、じりじりと
木下がいる草木を背に出来る位置へ移動した。
しかし、
「おーおー、仲間をかばってるな?
やっぱり、そこにいるのはお前の仲間か。
仲間を見捨てて逃げ出さないのは、感心だが、
この人数に対して、おっさん一人で何ができるんだ?
あぁ!?」
すぐに副団長の男に見抜かれてしまった。
こうして対峙している間にも、
次々に小高い丘を越えてくる騎士たち・・・
どんどん敵が増えていく・・・。
副団長の男を筆頭に、
徐々に、オレとの距離を詰めてくる騎士たち・・・。
絶体絶命か・・・。




