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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
89/502

対人戦・二人の初陣



【※残酷なシーンが描かれています。

苦手な人は、読まないようにしてください。】






小高い丘を越えた場所に、とうとう辿り着いた。

さきほど、木下が空撃ちした『火柱』の

焼け跡が残っている。

走るのをやめて、ゆっくり歩を進める。

3人の騎士たちは、オレよりも

数m離れて、オレの後ろをついてきている。


「この焼け跡・・・かなり大きいかもな。」


男の騎士の一人が、焼け跡を見ながら

魔物の大きさを想定しているようだ。


「おい、お前の仲間はどこだ?

『キラウエア』はどこにいる!?」


もう一人の男の騎士がオレに聞いてくる。


「わ、分からない。

あいつら、どこへ行ったんだ!?」


オレは、焦ったフリをしてみせる。

当然、木下とレーグルの姿は見えない。

この周辺の草木に隠れているだろう。


小高い丘へついてから、

騎士たちの殺気を背中に感じる。

どうやら、魔物といっしょに

オレを片付けるつもりらしい。

まぁ、そうだろうな。

ここなら、完全に村からは見られない。

片づけるには、ちょうどいい場所だろう。


「!!」


ふいに、左の草木あたりに

魔力の高まりを感じた。

たぶん、木下が魔法の詠唱を始めたのだ。


「おい、魔力を感じるぞ!」


「あっちのほうだ!」


やはり騎士たちにも感知されてしまったようだ。

すぐに、臨戦態勢になる騎士たち。


「ま、待ってくれ!

オレの仲間たちかもしれない!」


騎士たちが、魔法の詠唱を

始めそうになっていたので

木下の魔法が発動するまでの

ほんのちょっとの時間稼ぎを試みる。


「おーい!

助けを呼んできたぞー!」


オレが演技をし始めた瞬間、

騎士たちの背後の砂地から火が燃え広がり始めた。


「おい、ちょっと待て!」


オレを呼び止める騎士の男。


「なんだ?」


オレが振り向いた時には、

騎士たちの足元に炎の円ができあがっていた。


「ちょっと、これ!?」


「うわっ!」


騎士たちが、足元の炎に気づき、

その場を離れようとした瞬間!


「ファイヤァァウォォール!!!」


左の草木から、木下の叫び声が聞こえて


ズッドオォォォーーーン!!!


地響きとともに、騎士たちがいた場所で、

さっきと同じぐらいの炎の柱が立ち昇る!


「ぎゃあぁぁぁーーー!!!」


女の騎士の悲鳴が、炎の柱から聞こえてくる。

しかし、ほかの二人の声は聞こえてこなかった。

間一髪、横に倒れ込んで炎の柱を避けた男の騎士が見えた。


「うわぁぁぁーーーっす!!」


そこへ、右の草木の影から

大声をあげて走ってきたレーグルが

剣を振り上げて・・・


ズドッ!!


「ぐわぁぁぁ!!」


倒れ込んでいる騎士の肩に剣を叩き込んだ!


炎の柱が、そろそろ燃え尽きる。

その炎の柱の中には、被弾した女の騎士の気配と・・・

その奥に、もう一人の気配を感じる。

もう一人の騎士は、炎の柱を

後ろへ飛んで、回避したらしい。


「ぐっ! 貴様らぁ!

・・・わが魔力をもって、氷の刃と成し・・・!」


炎の柱の後ろにいる男の騎士の

魔力が高まり始め、魔法を詠唱し始めた!


「すぅぅぅ!」


オレは、息を思いきり吸い込み、

剣を抜きながら走り出し、

まだ消えぬ、炎の柱の中へ突っ込んだ!


「おじ様!」


炎の中にいた、女の騎士の脇腹を斬り・・・


ザシュッ!!


「がはっ!」


そのままの勢いで、炎の柱を駆け抜ける!

目の前には、まだ魔法の詠唱を終えていない

男の騎士がいた。


「ひっ!」


ドシュッ!!


体当たり気味に剣を、

男の騎士の胸に突き刺し、鎧ごと体を貫いた!


「ふぅぅ・・・すーっ!」


剣を騎士の体から引き抜きながら、

オレは、ひと息吐いたあと、また息を吸い込む。

炎の柱が消え、

女の騎士と、目の前の男の騎士の気配が消えた。

しかし、レーグルが切りつけた男の騎士の

気配がまだ消えていない。


「レーグル! トドメだ!」


そう言いながら、

オレはレーグルがいる方向へ走り出した!


「で、でも・・・!」


レーグルは、やはりトドメを刺せない。

剣を構えながら、ガタガタ震えているようだ。


「お、お前はレーグル!?・・・ぐぅぅ!!

くっそ! お前なんかに!!」


肩を斬られて、うまく起き上がれない男の騎士の

魔力が高まり始めている!

魔法を詠唱する気だ!


ザンッ!


ブシャァァァ!!


「あっ・・・!」


レーグルの目の前で、

オレが男の騎士の首をはねあげた!


ボトン!


「きゃぁ・・・!」


男の騎士の首が、木下の近くまで飛んで落ちた。


「ふぅぅぅ・・・。」


オレは、長く息を吐きながら、

周囲の気配を探る。

しかし、ここに来た騎士たち3人の気配は、

完全に消えた。


ビシャッ!


オレは剣を振り、剣に付いた血を

その場で振り払った。

砂地に、赤い血が染み込んでいく。


「はっ・・・はっ、はっ・・・!」


レーグルが青ざめて、短い呼吸をしている。

恐怖・・・なのだろう。

初めて、人が殺される瞬間を目の前で見たのだから。

そして、たぶん、騎士たちは

レーグルと知った顔だったのだ。

その顔見知りを自分が斬りつけた恐怖・・・

そして、目の前で殺された恐怖・・・

相当、ショックな出来事のはずだ。


「・・・。」


木下のほうも、そばに落ちている

男の騎士の首を見ながら、呆然としている。

そして、『火柱』のあとに

転がっている女の騎士の死体を見て・・・


「うっぇ!」


口元を抑え、嗚咽し始めた。

女の騎士は、オレが脇腹を斬り裂いたので、

そこから炎が入り込み・・・全身丸焦げになって、

口のあたりから黒煙を立ち昇らせていた。

辺りには、肉が焦げたイヤな臭いが漂い始めた・・・。

お嬢様育ちの木下には、刺激が強すぎたみたいだ。





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