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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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おっさんの一人芝居




「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・。」


息を切らしながら、砂地を走る。

砂に足をとられて思うように進まない。

これは演技じゃなくて

本当に疲れるな・・・。


『ボルカノ』の入り口周辺には、すでに

例の『窃盗団』が、数十人、集まっていた。

どうやら、木下の『火柱』が見えたらしい。


オレが、あと30mで村につくというところで、


「そこの者ー! そこで止まれー!」


と、騎士の格好をした男に

大声で制止させられる。


「はぁはぁ、た、助けてくれー!!」


オレは言われた通り立ち止まってから、

大声で助けを呼ぶ。


「この村は今、立ち入り禁止になっている!

用件は、ここで聞く!

お前は何者だ!? ここで何をしている!?」


・・・今ので確信した。

あくまでも『騎士団』として、

やつらは村に駐在しているのだと。


「オ、オレは傭兵だ!

仲間とともに旅をしている!」


腰の布袋から『ヒトカリ』の会員証を出して

頭上に掲げて見せる。


「あいつ、『ヒトカリ』の・・・。」


「さっき、そのへんを歩いていたら、

いきなり魔物に襲われた!

かなりデカイやつだ!

今、仲間がそいつと戦っているが、

状況はかなり厳しい!

あんたら、騎士団だろ!? 助けてくれ!」


「魔物!? 『キラウエア』か!?」


「めったに出没しないやつだが、

さっきの炎と地響きは、それかもしれんな。」


騎士たちが話し合っている。


「どうする? 団長に伝えるか?」


団長・・・『窃盗団』のリーダーか。

つまり、リーダーは、この村にいるんだな。


「はぁはぁ、早くしてくれ!

仲間が危ないんだ!

『ヒトカリ』で聞いたが、

あんたら、この周辺の魔獣討伐に来てるんだろ!?

頼む! 助けてくれー!!」


必死になって助けを呼ぶ。


「なるほど、『ヒトカリ』で

われわれの情報を知っていたから

ここへ助けを呼びに来たわけか。」


「副団長!」


副団長と呼ばれた男が、

騎士たちの群れから前へ出てきた。

左腕に、なにか入れ墨をしているようだが、

この位置からは確認できない。

しかし、入れ墨をしているってことは・・・

レーグルの情報によれば、

剣技に優れている5人のうちの一人か。


「おい、お前!

その魔物は、どんな色をしていた!?」


「なに!?」


やたらと落ち着いている副団長と呼ばれた男が

オレに質問してきた。

オレを疑っているようだ。頭がいいな。

しかし、まずいぞ・・・オレは本物の魔物の色を知らない。

見たことが無いのだから当然だ。

クラテルに教えてもらえばよかった。

ここで間違った答えを言えば・・・

村の入り口にいる騎士たちが

一斉に、オレを殺しに出てくるだろう。


「色!?

色なんて、いちいち覚えてねぇ!

いきなり襲われたんだぞ!?

真っ赤な炎が突然襲ってきたんだ!!」


苦し紛れだが、しっかり見ていなかったことにした。

それに即答しなければ、怪しさが増す。

うまいウソを考える時間がない。


「真っ赤か・・・。」


「間違いない、『キラウエア』だ!」


騎士たちが騒いでいる。

どうやら、デタラメに言った言葉を

うまく勘違いしてくれたようだ。


「『キラウエア』!?

そんなのが村に来たら、ひとたまりもないぞ!」


よく見ると、騎士じゃない者たちまで騒ぎ始めた。

どうやら村人たちにも

オレのウソ情報が伝わってくれたらしい。


「チッ!」


副団長と呼ばれた男が、

こちらにも分かるほど、

めんどくさそうな表情になり、舌打ちをした。


「副団長、どうしますか?」


「えぇい、仕方ない!

バル! ハイカ! カインド!

『キラウエア』を討伐してこい!」


「はっ!!」


すぐに3人の騎士が前へ出てきた。

男2人に、女が1人。

3人とも三角の形をした帽子をかぶっている。

あいつらが、魔法に優れた5人のうちの3人か。


「いいんですか?

団長に許可をとってからのほうが・・・?」


「・・・どの道、あいつには顔を見られた。

分かってるな? 『全部』討伐してこい。」


「はっ!!」


騎士たちが何やら話しているが、

オレには、ボソボソ声が聞きとれない。

とにかくオレの芝居に

やつらは、うまくひっかかってくれたようだ。


「恩に着る!!

仲間たちがいる方向はこっちだ!

ついてきてくれ!!」


オレは、そう叫んで、

今来た道を走り出した。

3人の騎士たちが、村から出てきて、

オレのあとを追ってくる。


敵に背を向けながら走るのは、緊張が増す。

いつ襲われても、おかしくない。

だが、村人に自分たちの正体を隠しているなら

村から見える位置では、襲ってこないはず。




「はぁはぁ・・・。」


「はぁはぁ・・・

なぁ・・・あいつ、なんか・・・。」


「ぜぇぜぇ、ちょっ・・・足、速くない?」


まだ100mしか走っていないはずだが、

砂地に足をとられ、騎士たちの速度が落ちている。

いや、初めから、オレより遅いようだ。

オレは後ろからついてくる騎士たちを

確認しながら、自分の走る速度を調整した。


・・・なるほど、これがオレの・・・

『ソール王国』出身者の身体能力か。



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