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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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小麦色の肌の女将



オレは、木下の前に立ちはだかる。


「おっさんに用はねぇ!

そっちの姉ちゃんに用があるんだよ!」


真っ先にこちらに向かってきた男が

声を荒げて、どんどん近づいてくる。

よく見ると、酔っぱらっているようだ。

こっちに向かってくる男どもは

みんな酔っぱらっているように見える。

こういうヤツらは話し合いにならない。

困ったな・・・。


ドズン!!!


店の奥から、突然、地響きのような大きな音がして、

店内がシーンと静まり返った。

こっちに向かってきていた男どもが

ビクンとなって、硬直している。

みんなが、音が鳴った方向を見た。


そこには、大きな酒樽を床に

打ちつけた姿勢の女性が立っていた。

その女性が姿勢を上げ、


「うちで面倒ごとを起こしたヤツは、

2倍の勘定を払ってもらうよ!!」


ウェーブがかかった黒髪をかきあげた、

その女性は、肌が小麦色に焼けていて、

木下より年上っぽいが

木下と同じくらい美人だった。

勘定のことを言うあたり、

この店の女店主なのだろう。


女店主の一喝で、その場は静まり返り、

こちらに向かってきていた男どもが、

コソコソと自分たちの席へ戻っていった。

酔っぱらいの男どもを黙らせるとは、

なかなか肝っ玉が据わった女店主らしい。

まぁ、それぐらいの度胸がないと

酒を振る舞う店の経営は成り立たないだろう。


まだ息切れしている木下を連れて、

そのまま店の奥へ進む。

女店主に、まずはお礼をせねば。


「助けてくれて、ありがとう。」


「あんたを助けた覚えはないけどね。

あたしが助けたのは、うちの客たちだよ。

そうだろ?」


どうやら、あの状況のままだったら

大乱闘が始まっていたのを予想していたらしい。

そして、オレのほうが強いと感じ取っているようだ。

何者だ、この女店主・・・ちょっと怖いな。


「いやいや、結果としてオレたちも助かったのだ。

やはり礼を言わせてもらう。

本当に、ありがとう。

それで、今夜はここに泊まりたいのだが、

部屋は空いているだろうか?」


「ちょうど一部屋だけ空いてるよ。」


「一部屋・・・。」


一部屋だけ・・・か。

評判のいい宿屋と聞いていたし、

この女店主も人気ありそうだし、

これだけ食堂が繁盛しているなら当然か。

今夜も木下と相部屋か。仕方ない。


「では、その部屋を頼む。」


「それは、いいんだけど・・・

一応、聞いておくけど、

そちらの女性とは

合意の上、なんだろうね?」


と、女店主が

オレの横で息切れしてグッタリしている

木下を指さした。

どうやら、若い女性を

部屋へ連れ込もうとしている

おっさんにしか見えないらしい。


「いや、違う違う!」


慌てて否定するが、


「え? 違うってことは合意じゃないの?」


「その違うじゃない!」


早合点している女店主に

慌ててオレたちの関係を説明した。


「なんだ、親戚かい。

同じ血が流れてるとは思えない顔立ちだね。」


ずいぶんな言われ様だ。

しかし、返す言葉もない。


「姪の、ユンム、です。はぁはぁ・・・

・・・あの、お水を、いただけませんか? はぁ・・・。」


木下が息も絶え絶えに

女店主に名乗りながら、水を要求した。


「あ、オレも欲しいな。」


「はいよ。」


女店主は、すぐに水を用意してくれた。


「あー、つめたーい。おいしー。」


木下が素で喜んでいる。

息もなんとか整ったようだ。

水を飲むと、

さらに体中から汗が噴き出した気がする。

鎧の中がサウナ状態だ。

オレたちが水を飲んでいる間に、

女店主は部屋の鍵を用意してくれた。


「部屋は2階にあるよ。

その様子じゃ、メシはまだだろ?

部屋に荷物置いて、また降りておいでよ。

今夜のおすすめは『レッサー鳥の溶岩スープ』だよ。」


『溶岩スープ』って・・・

オレがお昼にヒーヒー言いながら

飲んだスープと似たような料理名だな。


「あぁ、いただくよ。」


女店主には、そう返事して鍵を受け取り、

木下と一緒に部屋がある2階へ向かった。


部屋は2階の奥の方だった。

部屋の中は、けっこう広い。

窓にはレースのカーテンがかかっていて、

どことなく清潔さを感じさせる。

ベッドが2台。ただし、隣接している。


ガッガガガガーッ


力技で無理やりベッドを引き離す。


「私は、別にくっついててもいいんですけど。」


「良いわけがない。

分かっていて、そういうことを言うな。」


本当に気にしていないようだが、

隣り同士で寝るなんて・・・

おそらく相手を警戒する緊張感が違うだろう。

お互いに寝不足になるに違いない。


「今夜は、腹を割って聞かせてもらう話があるし、

相部屋でちょうどよかったのかもしれんな。」


木下が昼間言っていた『仕事』の話。

おそらく『スパイ』の任務内容のことだ。

『ソール王国』で話し合った時には

聞かせてもらえなかった内容・・・。


どうして木下が『ソール王国』に

『スパイ』として入り込んでいたのか、を。


「食事の前に、シャワー浴びちゃいたいんですけど?」


と、木下が服を脱ごうとする。


「分かったから、そこで脱ぐんじゃない!」


木下がクスクス笑いながら

シャワー室がある洗面所のほうへ行った。

またしても、からかわれた。

本当に性悪な女め・・・。




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