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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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美人に目がない男ども




馬車は、森を抜けた。

一面に広がる黄緑色の草原が見えたかと思いきや、

馬車が進むにつれて、どんどん草木がなくなっていき、

代わりに砂地がところどころ目立ってきた。

なにげに気温も高くなってきた気がする。

鎧の中が、すこし蒸し暑く感じるが、

今は馬車の中に入ってくる風が心地よい。


小高い丘の先に、街並みが見えてきた。

『ボルケーノ』。

木下が言うには、小さな町だという。

それでも、村ではないのだから、

それなりの規模だ。


町の入り口を抜けて、馬車は町の中へ。

家や店が建ち並んでいる道を駆けていく。

建物は、木造だけじゃなく、石造りの家も並んでいて

どの家もそこそこ立派な建物だ。

そして、食べ物を売っている店先に並ぶ、

赤い食べ物の数がハンパない。

その店先を通るだけで、辛い空気が漂ってくる。

うっかり深呼吸すると咳き込みそうな空気だ。


「おーい!」


「来たぞー!」


突然、対面に座っていた男二人が

馬車の外に向かって、

大声を上げ、手を振っている。

どうやら、知り合いか仲間の店の前を通ったようだ。


クラテルは、あれからずっと

黙って、目を閉じている。

寝ているわけではなさそうだが、

休憩しているのだろう。

父を亡くしてから、きっと

ろくな睡眠をとってないんだろうと感じる。


まもなく馬車は停留場に到着した。

こちらの馬車には誰も寄ってこないが、

すでに停まっている馬車のほうには、

大勢の乗客が詰めかけていた。

おそらく、あれがオレたちが次に乗る

『王都行き』の馬車なのだろう。

すごい人気だな。


対面に座っていた商人っぽい男たちは、

馬車を降りて、運賃を御者へ払うと

さっさと、さきほど手を振っていた店へと

駆けて行った。

クラテルとの一件を口止めしておいたほうが

よかったのではないか?と思ったが、

オレがそこまでやるのは、やはり

お節介というものだろう。


オレたちも馬車から降りて、


「んっ!んん~~~!」


木下と二人で思い切り背伸びした。

『着替え』の袋をケツに敷いているとはいえ、

やはり長時間、座りっぱなしなのは

体に堪えるものがある。

自然と木下の胸が強調されている・・・。


ざわっ!


オレたちが背伸びした途端に、

周囲の人々の空気が変わった気がした。


「?」


ざわざわざわざわ・・・


途端に、オレたちを周囲の人々が

取り囲み始める。

みんなの視線が、オレたちに・・・

いや、主に木下へと集中しているらしい。


「お、お嬢さん!うちのお店へどうぞ!」


「いや、うちのお店へ!」


「お嬢さん!俺といっしょにランチを!」


「おい!抜け駆けするな!」


誰かが声をかけ始めたと思ったら、

あっという間に男どもが押し寄せて

我先にと競うように、木下へ声をかけ始めた。

木下は・・・作り笑顔のままだが、

どこか引きつっている。

いきなり見知らぬ男たちに囲まれて

声をかけられれば、そうなるよな。


「お、おい!」


男たちは、オレを無視して

オレと木下の間に割り込もうとしてきた。

これは、よくない流れだな。

めんどくさいが、この群衆を鎮めなければ、

木下と離れ離れになってしまう。


「こらぁぁあぁぁ!!」


「!!!」


オレが男どもを注意しようとした時に

いきなり、馬車のほうから怒号が聞こえてきた。

クラテルだった。

馬車の中で、仁王立ちになり、

群衆どもを鬼の形相で見下ろしていた。


「ひっ!」


「やばい、騎士団だ!」


「赤のヤツだ!」


途端に、蜘蛛の子を散らすがごとく

男たちは、オレたちから離れ、あっという間に逃げていった。

数分と経たないうちに、

着いた時と同じ風景に戻っていった。


「あー、助かったよ。」


「助かりました。ありがとうございます。」


オレたちは礼を言った。


「いえいえ、なんのこれしき。

この国にも美女はたくさんいるはずですが、

そちらの姪っ子さんの美しさには

男たちが浮かれてしまうのも無理はないというもの。

ご無礼をお許しください。」


クラテルが、お世辞も織り交ぜて謝ってくる。

木下も、まんざらでもない笑顔だった。

美女に男どもが群がるのは世の常だが、

ここまで大勢となって群がってくるとは・・・。

そういえば、関所でも国境警備の奴らが

木下をジロジロ眺めていたな。

『レッサー王国』の国民性というやつなのか?


オレは御者へ運賃を払いながら、


「やはり女連れの旅は

厄介ごとが付き物だな・・・はぁ。」


独り言のようにつぶやいた。

オレよりも、厄介ごとを呼び込む

体質なのではないか?と

木下に言ってやりたいが、

きっと、その後はオレに対しての

お説教になるだろうから言わないでおこう。


「さて、それでは

さきほどの返答をしたいと思う。」


オレはクラテルに改めて話を切り出した。


「はい。どんな返答でも私は何も言いません。

お聞かせください。」


そう言うと、クラテルは神妙な面持ちになった。


「オレたちは、自分たちの母国へと帰る途中でな。

かなり遠く、移動に時間がかかるので、

一日たりとも無駄にはできない。」


「そうだったのですか・・・。」


話の流れから、断られると勘違いしているらしく、

クラテルが目に見えて落胆した。


「あ、いや、しかしだな!」


「私たちが、この国を通過するまでの

3日間だけ、クラテル様のお仕事をお手伝いすると

いうことに決めました。」


オレが慌ててクラテルへ説明しようと思っていたことを

横から木下が説明してしまった。


「おぉ!ありがとうございます!」


クラテルの顔が一気に明るくなった。


「今は、ネコの手も借りたいほど

捜索や情報収集の人数が足りていないので

とても助かります!

傭兵へ頼もうにも、この国の傭兵たちに

この情報を漏らすわけにもいかず・・・

佐藤殿たちなら、まさに打ってつけ!」


クラテルが喜んでくれるのは嬉しいが・・・

オレたちのように、サッサとこの国から去ろうとしている

旅の者なら、たしかに極秘任務は打ってつけかもしれないが、

情報漏洩に関しては・・・

自国には情報は洩れないが、他国に情報が洩れてしまう

可能性が高くなってしまう。

本人が気づいていないようだから黙っておこう。

それに、オレたちが他国で漏らさなければいいだけだ。






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