対ゴブリン協力戦
【※残酷なシーンが描かれています。
苦手な人は、読まないようにしてください。】
「ギャァッ!」
ザシュッ!
「ギャガッ!」
ドシュッ!
「ギャギャギャギャ!」
「ギャギャギャァ!」
オレたちが次の採掘場へ近づくたびに、
そこへ通じる通路には、損傷がひどい人間の遺体や遺骨、
『ゴブリン』たちの死骸や骨を見かける回数が多くなっていった。
いよいよ、オレが冗談半分で言っていた
「この先の広場が『ゴブリン』の住処では?」という
言葉が真実味を帯びてきた気がしていた。
「おりゃ!」
ザンッ! ザシュ!
「ギャギャギャァ!」
「ギャギャギャシャァ!」
ここが、やつらの住処かどうかは分からないが、
この広場には、約30匹以上の『ゴブリン』が集まっていたのだ。
この広場へ到着する30m手前で、
オレが気配を探って、敵の数の多さに気づいた時、
引き返そうとペリコ君と相談していたところへ、運悪く、
オレたちの後ろから10匹ほどの『ゴブリン』が・・・。
おそらく外からここへ戻ってきたのだろう。
その10匹を討伐して出口へ!と思っていたが、
10匹の『ゴブリン』たちの叫び声で、
広場にいた『ゴブリン』たちがオレたちに気づき、
あっという間に、オレたちは囲まれたのだった。
多勢に無勢の状況下では、広場より狭い通路での
戦闘の方が戦いやすかったが、
次第に『ゴブリン』たちの死骸が、オレたちの足場を無くしていった。
このままでは動きを封じられてしまうと感じ、
広場へと戦いの場を移して・・・
ザシッ!
「ギャッ!」
ガシュッ!
「ギッ!」
広場の中央あたりで、ペリコ君がランプを地面にわざと落とした。
いや、よくぞ、そこまで片手でランプを持ったり、置いたりしながら、
器用にナイフを扱っていたものだ。
割れてしまったランプから地面に広がった油で、
火が勢いよく燃え盛り、この広場全体に明かりが届いている。
「はぁ・・・はぁ!」
ズシュ!
「ギャァ!」
ペリコ君が持っているナイフは全部で10本のようだ。
投げて、拾って、斬って、投げてを繰り返している。
手元にナイフが無い状態でも、体術がある。
迫り来る『ゴブリン』たちを、殴る、蹴る。
そうして、隙を見せた『ゴブリン』から
ナイフでとどめを刺していく戦法だ。
片腕で、この実力・・・両腕なら、もっと強かっただろう。
『ゴブリン』たちは弱い女性や子供から狙ってくる・・・。
そう聞いていたが、四方八方囲まれた、
こんな状況だと、もうそんなことは関係なさそうだ。
ペリコ君だけが集中攻撃されているわけではない。
オレにも、相当な数の『ゴブリン』たちが攻撃してきている。
それとも『ゴブリン』たちには、
オレが、女性よりも弱そうな老いぼれジジィに見えているのか。
オレたちは、地面で燃えている火を中心に、背を向けて・・・
お互いに背中を預け合って戦っている。
ペリコ君が、どういうつもりで
こんな陣形で戦っているのかは分からないが、
オレとしては、背後からの攻撃にも警戒しながら
戦っているため、ペリコ君より体力を消耗している気がする。
ペリコ君が、いつ、事故に見せかけて攻撃してくるか分からないからだ。
ペリコ君は、オレに背中を完全に預けているのか?
「はぁ・・・はぁ・・・。」
「ギャギャギャゥ!」
「ギャギャギャァギャ!」
もうすでに、30匹以上は倒しているはずだ。
しかし、まだ50匹以上の『ゴブリン』たちに囲まれている。
この広場が、こんなに奥まで広い場所だったとは。
今まで見た採掘場の中では一番広い。
そして、この広い場所に、こんなに『ゴブリン』たちが
集まっていたということは・・・ここは・・・
「はぁ、はぁ、間違いなく、ここが!」
ドカッ!
「『ゴブリン』の住処だよな!」
ガシュ!
「ふぅ・・・さて、どうでしょう?」
オレの問いに賛同しないペリコ君。
表情までは見えないが、さすがに余裕が無いのかもしれない。
ドカッ!
「ブギャ!」
「ぬぉ!」
ペリコ君の強烈な蹴りで『ゴブリン』がこっちへ吹っ飛んできた!
ザクッ!
それを避けながら斬る。
ビュッ ビュン
カッ ガンッ
「ちっ、鬱陶しい!」
前列の『ゴブリン』たちより後ろにいる『ゴブリン』たちから、
小石や木の棒、傭兵たちの死体から奪ったナイフなどが
投げつけられる。とてもじゃないが、全てを防げない。
オレは致命傷となりそうな物は避けて、
それ以外は、手甲で跳ねのけるか、
何個か体に当てられながら、目の前の敵を斬っている。
そうしなければ、怯んだ隙に足元へ体当たりしてくる『ゴブリン』たち。
オレたちを転倒させようと必死だ。
下からの攻撃を警戒していたら、仲間を踏み台にして
上から飛びつくような攻撃も仕掛けてくる。
ザンッ! ザシュ!
どこを斬っても『ゴブリン』だ。
ゴッ
「って!」
背中に衝撃が走った。
どうやら後ろから石が飛んできたようだ。
ペリコ君は『ゴブリン』たちに投げつけられている物全てを避けている。
跳んだり、空中で体をひねったりと、オレより避け方がうまい。
ただ、ペリコ君が避けた物は、オレへ飛んでくるから、
やはりオレは背後の死角も注意しなければならない。
今の背中に当たった物がナイフじゃなくてよかった。
ダメージは深くない。
「ギャギャギャ!」
「ギャギャギャギャッ!」
「ギャッハー!」
圧倒的な数の暴力・・・!
勝利を確信しているのか、煽るように笑っている『ゴブリン』たちもいる。
時折、ペリコ君の魔力の高まりを感じるが、すぐに消える。
魔法を詠唱する暇がないのだろう。
もしかしたら『ゴブリン』たちも、魔法を使われたら不利になることを
知っていて、オレたちに詠唱させる暇を与えないように
常に仲間たちと連携して、攻撃を続けているのかもしれない。
ザン! ザザン! ドシュッ!
それでも、オレたちの攻撃の手も止まらない。
投げつけられた物に傷つきながら、歯を食いしばり、痛みに耐えつつ、
この場を埋め尽くすほどの『ゴブリン』の大群を斬り捨てていく。
少しでも気を抜けば、この大群に飲み込まれる。
「ふっ! はっ!」
ドカッ! ザシュッ!
「くっ、おりゃ! はぁ!」
ドゴッ! ザン! ザシュッ!
オレたちの足元に、次々と『ゴブリン』の死骸が積み重なっていく。
黒い血飛沫が飛び散り、地面を黒く染めていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、どりゃ!」
ドシュ! ガッザン!
「ふぅ・・・はっ! ふっ!」
バキッ! ザンッ!
地面に死骸が積みあがっていくと、それがやつらにとっても邪魔になり、
もう『ゴブリン』たちは、オレたちの足元を狙うことが出来なくなっていく。
足の踏み場もないほどに死骸が転がっているから、オレたちも戦いづらい。
「うりゃ!」
ドスッ ザン! ザンッ!
「ふっ! はっ!」
ドンッ! ガシン!
長い時間、そんな状態が続いていたが、やがて・・・
「ギャ・・・ギャギャ!」
「ギャギャ、ギャーーーー!」
オレたちの息があがってきたところで・・・
「ギャ!」 「ギャギャッ!」 「ギギャ!」
6匹ほど、オレたちを残して、通路へと逃げて行った。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
「ふぅ・・・ふぅ・・・。」
急に静まり返る広場。
気配に集中してみたが、この広場に立っているのは、オレとペリコ君だけだった。
さすがに逃げて行った『ゴブリン』たちを追えるほどの体力が残っていない。
お互い、全身『ゴブリン』たちの返り血で真っ黒になっている。
「はぁ、なんとか、なったな・・・。はぁ、はぁ。」
「ふぅ・・・ふぅ・・・はい。」
・・・『ゴブリン』たちの死骸は、ざっと70~80匹ぐらいか。
それ以上に斬った感覚がある。
今のは・・・かなり危機的状況だったな。
一緒にいたのがペリコ君じゃなければ、オレ一人では・・・
たぶん追い詰められて『竜騎士の剣技』を使ってしまい、
崩壊した洞窟の中、生き埋めになっていたかもしれない。
チャリッ
「!」
ドサッ
金属のような物が地面に落ちた音で、振り向くと、
持っていたナイフを落とし、地面に燃え広がっている火の中に
ペリコ君が倒れ込みそうになっていたので、とっさにその体を支えた!
「お、おい!」
「ふぅ・・・不覚・・・。」
「どこか、やられたのか!?」
「か、体のあちこち、数か所・・・ふぅ、ふぅ。」
ペリコ君も全身、真っ黒い血を浴びているのと、
元々、黒っぽい服装と装備のせいで、
見た目では、どこを怪我しているのか分からない。
とりあえず服は破れていないし、
出血している箇所はなさそうに見えるが、それも定かではない。
オレは、すぐに腰の布袋から
回復薬を取り出して、ペリコ君に飲ませた。
「んぐ・・・ふぅ・・・。私は、また失態を・・・。」
「はぁ、はぁ、喋らなくていい。薬が効いてくるまで黙ってろ。」
オレは腰の布袋から、布切れを取り出し、
ペリコ君の顔に付いている黒い血を拭き取ってやった。
「ふぅ・・・ふぅ・・・。」
ペリコ君は目を閉じて、呼吸を整えている。
オレは、なるべく『ゴブリン』たちの死骸をどかして、
そっと地面にペリコ君を寝かせた。
戦闘中、ちらちらとペリコ君の戦い方を観察していて
その洗練された動きに感心していたが、オレが見ていない間に、
ペリコ君は『ゴブリン』たちの攻撃をくらっていたのだな。
それでも効いていないフリをして戦い続けていたのか。
つくづく、すごい精神力の持ち主だ。
ドチャ!
「!」
突然、ペリコ君が寝ている状態のまま、地面を叩いた!
しかし、右拳が叩いたそこには『ゴブリン』の血溜まりがあり、
派手に真っ黒な血が飛び散った。
「くそっ! ガンラン・・・! ふぅ! ふぅ!
あいつにやられなければ・・・こんなことには!」
ドチャ! バチャ!
まだ息を切らしながら、悪態をついて、
地面に右拳を叩きつけるペリコ君・・・。
そうか・・・ガンランに左腕をやられていなければ、
『ゴブリン』たちに苦戦することはなかったのかもしれない。
命は助かったが、『ハージェス公国』の仲間ではない、
部外者であるオレに助けられたことも不本意だったのだろう。
それが悔しくて、たまらないという感じだ。
「はぁ、はぁ・・・。」
今の戦闘のことだけではないのだろう。
左腕を失ってからの今まで、右腕だけで行動することが、
どんなに不便だったことか・・・。
普通に生活するだけでも支障が出るだろうに、
『スパイ』の任務をこなすのは、並大抵の苦労ではないはずだ。
こんなに感情を露わにしている金山君を・・・いや、ペリコ君を初めて見る。
『スパイ』としては、これも失態になるのだろうか。
かける言葉が見つからない・・・。
ジジジッ
「っと!」
急激に暗くなってきた!
気づけば、地面で燃え盛っていた火が、消えかかっていた。
大量の『ゴブリン』たちの血が、地面に広がって
ランプの油と混じり始めたせいだ。
ランプはもう壊れているため、使い物にならない。
火が消えても、日常的な火の魔法を使えば灯りは灯せるが、
その分、魔力に感づかれて『ゴブリン』たちが寄ってきやすい。
その状態で戦闘が始まれば、魔法に集中できなくなり、
暗闇の中、戦うことになる。それは避けたい。
オレの声に反応して、ペリコ君が黙ってしまった。
まだ呼吸が荒く、地面に寝ている状態だ。今はそっとしておこう。
オレはペリコ君のそばから離れて、
腰の布袋から、布切れを取り出し、
荷物の中から取り出した予備のランプの油を浸して、
消えかかっている火を、そこに移した。
「ぁっち! はぁ、はぁ!」
その灯りを頼りに、さきほど『ゴブリン』たちが投げていた
木の棒を探し出し、その棒に、燃えている布切れを突き刺した。
しかし、木の棒だから、このままでは全て炭になってしまう。
俺は、その灯りを持って、周辺を探ってみた。
オレたちの周りの地面は、
『ゴブリン』たちの死骸に埋め尽くされている。
・・・70、80匹ぐらいだと思っているが、バラバラになっている死骸もあって、
それよりも多くの死骸が転がっているように見える。
・・・よく生き残れたものだ。
すでに、生臭い血の臭いが漂っている。
改めて見渡せば、かなり広い採掘場だ。
『ゴブリン』たちの死骸を跨いで移動した。
広場の奥の方に、散乱しているロープと古びたつるはしが放置してあった。
オレは、古びたつるはしを拾い、その鉄の部分と持ち手の柄の境目を狙って、
少し尖って突き出している岩に、何度か叩きつけた。
ガッ ガッィン ガッ バッキィーーーン! ガラランッ
「はぁ・・・はぁ・・・。」
うまく柄が折れて、鉄の部分が吹っ飛んだ。
痺れるような衝撃が、手のひらに残る。
折れた柄の先端に、燃えている布切れをロープで括りつけた。
持ち手である柄は木製だが、表面が樹脂で加工されていて燃えにくい。
持っているだけでも少々熱く感じるが、これで簡易的な松明が完成した。
油次第だが、たぶん1時間くらいは、もつだろう。
「はぁ・・・。」
「・・・ふぅ。」
静まり返った広場に、2人の呼吸だけが小さく響く。
オレは、ペリコ君から離れた場所に座り込み、
持参していた回復薬を一本飲んだ。
喉を潤すのにもちょうどいい。
ひんやりした地面をケツに感じる。火照った体が急激に冷やされていく感覚だ。
残りの布切れで、顔を拭いた。真っ黒い血がべっとりと付く。
その布で、剣に付いた血も拭き取った。
全身の痛みが和らぎ、チカラが戻ってくるのを感じる。
ペリコ君にやられた耳の傷にも効いているようだ。
持参した回復薬は、あと1本。
回復薬で傷は治せても、失った体力までは戻らない。
オレもペリコ君も、かなり疲弊している。
このまま帰った方がいいか・・・それとも・・・。
しばらく休憩していたが、
やがて、ペリコ君が立ち上がって、オレの隣りへ歩いてきた。
どうやら回復薬が効いたらしい。
オレも、ようやく息が整った。
「私を『小鬼』どもの死体の中に放置するなんて、
女性の扱いがなっていませんね、佐藤様は。」
ペリコ君が回復して、
開口一番が、まさかダメ出しだとは思わなかった。
「いや、ペリコ君のダメージが、
どれほどなのか分からなかったからだぞ?
骨までやられていたら、下手に動かすわけにはいかないし、
薬の効果が表れるまでは動かせないと思っただけで!」
すぐに反論してみたが、
「そういう場合は、先ほどのように
お姫様抱っこして私を移動させるのですよ。」
「おひめさまだっこ!?」
たしかに、さっきはペリコ君が倒れそうになったところを
とっさに抱きかかえたが・・・開いた口が塞がらないとは、このことか。
真面目そうな口調で話しているが、こうして話していると、
とんでもないことを言い出す木下と変わらない気がする。
もしかして『ハージェス公国』の女性は、
みんな、こんな感じなのか?
「さっきのは、お姫様抱っこではない! ただの手助けだ!
下手にお前に触れたら、女房へ何を伝えられるか、
分かったものじゃないからな!」
オレは、ペリコ君の例の脅迫状を思い出して、
少し苛立ちながら、そう反論した。
「あぁ、そう言えば・・・それもそうですね。
さすが、騎士様。」
しかし、ペリコ君からは、
オレをさらに苛立たせるような返事が返された。
こういう時にだけ「騎士様」と呼ばれると
『なんちゃって騎士』であると自覚しているオレとしては
嫌味にしか聞こえない。
「ちっ・・・回復したなら、もう行くぞ!」
「はい。でも、まだ、
ここでの魔鉱石採掘をされていませんが、よろしいのですか?」
「あぁ、この簡易的な松明では、そんなに長くもたない。
最後に試したいことがあるし、
ファロスの刀を回収していきたいから、そこへ向かう。」
さっきまでは即時撤退も考えていたが、
ペリコ君とのお喋りの勢いに乗せられて、
気づけば、オレは、そう決断していた。
「分かりました。それと・・・。」
「まだ何かあるのか?」
オレは、少しぶっきらぼうに、そう聞いたのだが、
ペリコ君は、
「・・・少し失礼な発言をしてしまい、申し訳ございません。
さきほどの『小鬼』どもの戦闘では、その、とても助かりました。
私一人では、おそらく生き残れなかったと思います・・・。
だから・・・その・・・。」
いきなり、畏まって、最後は言いにくそうにしている。
作り笑顔は消え、真剣な表情・・・いや、どこか照れているようにも見える。
その言葉と様子を見ていて、なんとなく察した。
これまでもペリコ君からは礼を言われた気がするが、
そのどれもが、社交辞令に過ぎなかったのだ。
「・・・無理に言わなくてもいい。」
「・・・!」
少し驚いたようだが、ペリコ君は黙った。
さっきの戦い方からすると、こいつは実戦経験がある実力者だ。
ただ『スパイ』という職業柄か、単独で任務を遂行する方が
多かったのではないだろうか。
だからこそ、味方ではないオレに助けられたことが
こいつにとっては不本意で・・・。
そして、他人に助けられて、
素直に感謝を述べたことがないのかもしれない。
「ありがとう。」
「!!」
「お前がいなかったら、オレ一人では
あの数の『ゴブリン』を討伐できなかっただろう。
お前がオレの背中を守ってくれて、本当によかった。」
「あ・・・その、いや・・・はい・・・!」
自分よりも先に、オレから素直な感謝の言葉を
言われることになるとは思わなかったのだろう。
薄暗い洞窟だから顔色が分かりにくいが、
ペリコ君は、今まで見たことが無いほどに顔が赤くなっている気がする。
いつも冷静に、作り笑顔か無表情で他人と会話していただろうに。
その顔を見れば、分かる。
オレの素直な気持ちを、素直に受け取ってくれたのだ。
恥ずかしがる反応を見ていると・・・
オレまで気恥ずかしくなってくるな。
・・・まさか、この反応すらも
『スパイ』の演技・・・ということはないだろう。
「さて、行くか。」
「あ、あ、あの・・・!」
「ん?」
「あ、ぁ、・・・ありがとうご、ざいます・・・。」
「あぁ。」
オレが素直に感謝を述べたことで、
ペリコ君も、素直に感謝の気持ちを伝える気になったようだ。
少し、もごもごした声だったが、しっかり聞こえた。
『ゴブリン』との戦闘は本当に危なかったが、
あの戦闘を2人で乗り切れたからこそ、
お互いの信頼関係が築けた気がする。
・・・ただ、オレとペリコ君は仲間ではないのだ・・・。
『ソール王国』の老兵と、『ハージェス公国』の『スパイ』・・・。
木下にも同じことが言えるが、どんなに信頼関係を築こうとも、
どこかで線引きをしておかねば、いつ裏切られて、
陥れられるか、分からない。
しかし、ある程度、信頼していなければ成り立たない旅でもある。
・・・なんとも複雑で、滑稽な関係だ。




