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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第五章 【エルフの赤雷と怠惰の赤鬼】
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爆炎の目覚め




「ギャギャッ!?」


「ギャギャギャ!?」


子供の声に敏感に反応している『ゴブリン』たち。

襲っていた男への攻撃の手を止めて、洞窟の奥を気にしている。

襲われていた男は、もう動かない。すでに気配が無い。

見るも無残な姿で倒れている。

意識が無いだけで、まだ助かるかもしれないが、

生き残っている男たちは、倒れている男を助けようと思っていないらしい。


「ははっ! あいつ、やっと持ってきたようだな!」


その声を聴いて、男たちが笑みを浮かべる。


「だ、誰か来る!?」


オレは、奥から近づいてくる気配を感じ始めた。

そして、誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。


「やっぱり、この奥にやつらのアジトがあるようだな。

仲間が来るんじゃないか? 今のうちに撤退しよう。」


男たちの会話や、今近づいてきている足音、

そして奥から聞こえてきた子供の泣き声で、

グルースは、自分の予想が確信に変わったようだ。

撤退を提案されたが、先ほどの子供のような声が気になる。


すぐに洞窟の奥からランプの灯りが近づいてきて、

新たな男が姿を現した!

男は、脇に一人の子供を抱えている!


「ギャッギャッギャッギャ!」


「ギャッギャ、ギャッギャー!」


現れた男の姿を見て、騒ぎ始める『ゴブリン』たち。

いや、男が抱えている子供を見て、興奮しているのか?


「これで確定したな。本当に奴隷商人なんだな、あいつら。」


シホが嫌悪しているような目で、やつらを見ている。


「ま、まさか・・・また子供をおとりに!?」


「まさか・・・!」


グルースの言葉に、ファロスが驚く。

オレも驚きとともに・・・やつらに対する怒りが湧き上がってくる!

子供は泣きわめくこともなく、ぐったりしている!

気絶させられたか!?


「はぁ、はぁ、もうこんなにやられたのか!?

お前たち! ほぼ全滅じゃねぇか! はぁ、はぁ!」


「あぁ!? お前が遅いせいだろ!」


「遅かったじゃねぇか! ヤオシュ!

ジュノのやつは、どうした!? 他のやつらは!?」


現れた男が息を切らして駆け寄りながら、男たちと話している。


「はぁ、そう言うなよ! 全力で走ってきてやったんだぜ!?

こいつの体に爆弾、巻きつけるのに手間取っちまった! ははっ!

ジュノも他のやつらも、他の奴隷を見張ってて出てこれねぇとよ! はぁ、はぁ。」


「!!!」


「そんな!」


子供を抱えた男が、信じられないことを言った!

よく見れば、子供の体は、小さな樽のような物といっしょに

ロープで縛り付けられている!


「それを早く『小鬼』どもに放り込め!」


「!!!」


ドクンッと心臓が跳ねた! 頭に血がのぼる!

先ほどまで『ゴブリン』たちに襲われていた男たちに

同情する気持ちがあったが、一瞬にして消えた。


「おのれ・・・!」


ファロスが駆け出しそうになったので、

オレは、ファロスの肩を掴んだ。


「さ、佐藤殿! 拙者は、もう我慢が・・・!」


「オレも同じだ! 子供を助けるぞ!」


ファロスはオレの手を振り払おうとしたが、

オレの顔と言葉を聞いて、力強くうなづいた。


「! 御意!」


「そうこなくちゃ!」


「助けよう!」


「助けましょう!」


ファロスだけじゃなく、シホもニュシェも木下も賛同する。


「すまんが、グルース・・・

今からここで起こる事は目をつぶってくれ。」


「あぁ、真っ暗な洞窟の中、何が起こってもおかしくないからな。」


グルースの返事を聞いて、すぐに指示を出す。


「ファロスとオレが『ゴブリン』の群れを突っ切って、子供を助ける!

ほかの3人は、残った『ゴブリン』を頼む!」


「御意!」


ダッ!!!


ファロスが返事とともに駆け出す!

オレも、すぐ後を追う!

作戦もクソもない!

今にも子供が『ゴブリン』の群れに投げ込まれそうになっている!


「ギャギャ!?」


「ギャギャギャ!!」


オレたちの足音に敏感に反応した『ゴブリン』が数匹、こちらへ振り向いた!

手に持っているのは、小石か!? 

こちらに向かって、何かを投げそうな仕草をしている!

しかし、


「せぁ!」


ドシュ! ガシュ!


『ゴブリン』の攻撃よりも速く懐に飛び込んだファロスが、

1匹の『ゴブリン』の首と腹を斬った!


「はぁ!」


ザンッ!


「グギャアアア!」


ファロスに続いて、オレもその横にいた『ゴブリン』の胴体を切り裂く!

そのままの勢いで駆け抜ける!


「な、なんだ!? あいつら!?」


「誰だ!?」


オレたちの出現に、男たちが気づいたようだが、

そんなことは構わない!


ガシュン! ズシャァ! ザンッ!


「ギャギャ!」


「グバァ!」


オレとファロスは、目の前の邪魔な『ゴブリン』たちを

斬り捨てながら、一直線に、男たちの方へと駆けていく!

背後から魔力の高まりを感じたが、おそらくシホと木下だろう。

オレたちは後ろを振り返ることなく、子供の元へと急ぐ!


「おい、あいつら、こっちへ来るぞ!?」


「助けに来てくれたわけじゃなさそうだな。」


「おい! のんびり見てる場合か!

さっさと起爆させてガキを放り込め!

『小鬼』ごと吹き飛ばせ!」


「!!」


まずい!

『ゴブリン』どもは大した強さではないが、邪魔だ!

爆弾の仕掛けは分からないが、起爆されたら助けられない!?

間に合わない!


キュイ!


「!」


ザクッ!


「ぎゃあ!」


弓の音が後方から聞こえてきたと思ったら、

オレたちや『ゴブリン』の群れをすり抜けて、矢が男の肩を射貫いた!

ニュシェの弓矢だ!

しかし、矢を受けたのは子供を抱えている男ではない!

子供に当たるのを恐れて、違う男を狙ったか。

それに、あの程度では男を仕留めきれていない。


「ライトニング・アロー!」


ピュン!


「!」


続いて、シホの声が後方から響き、光の矢がオレたちを追い越して、


「ギャガッ!」


オレたちに飛び掛かってきていた『ゴブリン』の腕を貫き、


「あぢっ!」


子供を抱えていた男の肩をかすめていった!

シホが最初から男を狙っていたのか、分からないが、

男にはケガもない。失敗か!?

やはり、シホは攻撃魔法が苦手なようだ。


「シルフ・シールド!」


続いて、木下の声が響いてきた。

あれは風の防御魔法だな。

『ゴブリン』たちは、それほど強くないと感じたが、

魔物のくせに頭がいいらしい。

オレたちの奇襲に負けることを察知したのか、

オレたちには、ほとんど向かってこない。

オレたちの突進を遮るどころか、さっさと道を譲って・・・

いや、オレたちを避けて、オレたちの後方にいる

女性陣へ向かって動き出している!


忌々しいが、今は後方を気にしている場合ではない!

『ゴブリン』は木下たちに任せて、早く先へ進まねば!


「くっそ!」


シホの光の矢でひるんでいた男が、

子供にくくりつけている爆弾に、何かし始めている!


「野郎!」


「はぁ!」


ファロスがオレよりも一歩先に

男たちの集団へ辿り着き、攻撃を仕掛ける!

男たちは、『ゴブリン』相手に苦戦していたほどの実力だ。

ファロスの敵ではない。


ガスッ!


「うがっ!」


あっという間にファロスが一人の男の脇腹を斬る!

いや、叩いただけか?

とにかく一人を片付けた。

そのファロスの後ろから、オレが前へと駆けていく!

子供を抱えている男は、すぐ目の前だ!


しかし!


「やっぱりガキが目的か!

そんなに欲しけりゃ、くれてやる! そらよ!」


ブンッ


「っ!!」


あと一歩というところで、

いきなり男が子供を、こちらへと放り投げた!

オレはすぐに子供を受け止める態勢を・・・

でも、宙へ放り投げられた子供から魔力の高まりを感じる!

これは、まさか!?


「おのれ!」


シャキン!


ファロスが何かに気づき、オレの横から跳躍!

宙を舞っている子供のロープだけを斬った!

見事だ!

しかし、子供と小さな爆弾の樽は引き離されていない!

オレへ向かって落ちてくる!

小さな樽の魔力の高まりが膨らんでいく!


「くそっ!」


オレは咄嗟に跳躍して、両手で子供を抱きとめながら、

思い切り、小さな樽を!


ガンッ!


蹴った!

蹴られた小さな樽は、そのまま左側の壁へと飛んでいく!


「伏せろぉ!」


ドサッ


オレは空中でバランスを崩して、そのまま落下!

子供をかばうようにして背中から落ち、

そのまま転がるように、子供をかばって地に伏せる!


「ぅぐっ!」


カッ


ボッゴォォォォォーーーン!!


「グャァ!」


「うぎゃぁ!」


壁に当たった瞬間に、魔力の高まりが一気に膨らみ、

小さな爆弾の樽が、轟音とともに爆発した!

衝撃波が体を揺ぶる!


「あちっ!」


一瞬にして、その場を高熱の閃光が包み込む!

背中が焼けたかと思うほどの高熱!

しかし、本当に一瞬の出来事だった。


ガコンッ! ガラガラガラッ・・・


ゴゴゴゴゴッン・・・


大きな爆発音によって、少し耳が遠くなった感覚がするが、

岩が砕け、崩れ落ちる音が、地響きとともに聞こえてきた!

オレの背中に無数の小石が跳んできている!


「くっ・・・!」


オレは、すぐさま起き上がって、周囲の確認をしたかったが、

左側の壁が崩れて、土埃と爆弾の煙が漂ってきて、

視界を遮り始めていた。

爆発の閃光は、すでに消え、地面で燃えていたランプの炎も、

衝撃波のせいか、小さくなって先ほどよりも辺りが薄暗く感じる。


「はぁ、はぁ・・・げほっ!」


すぐそばに、ファロスがいた。

咳き込みながら、ファロスが立ち上がる。無事のようだ。

薄暗い中、オレは抱えていた子供の顔を覗き込む。

気絶しているが、小さく呼吸している。

生きている。よかった・・・。


まだ視界が良くないが、辺りに男たちの気配を感じない。

爆発に巻き込まれて、吹っ飛んだ男もいるようだが、

オレに子供を放り投げた男は、この場から早々に逃げたようだ。

この奥か・・・。


「ゴホッ! み、みんな、無事かー!?」


「お、おじ様ー!」


オレが振り返ると、木下の呼ぶ声が響いてきた!

爆弾の衝撃で『ゴブリン』が何匹か吹っ飛んだようだが、

まだ3匹ほど、木下が作り出した魔法の壁に、飛び掛かっている!


ガン! ガン!


「うぅっ」


魔法の壁に弾かれようと、関係ないように

『ゴブリン』たちが魔法の壁を叩いたり、蹴ったりしている。

木下の表情が強張っている。

魔法の壁自体は強固であり、あの『ゴブリン』たちの

攻撃で突破されることは無いだろう。だが、

魔法の壁を張り続けていないと、すぐに飛び掛かってきそうな、

殺気立っている『ゴブリン』たちを目の前にして、恐怖を感じているのだろう。

木下の横にいるシホやニュシェも同じような表情だ。

魔法の壁を解除して、攻撃に転じなければ、

この状況は変わらないが、3人とも怖くて

魔法の壁を頼りにしてしまっている。助けねば!


オレは、子供をその場に置くことが出来ず、

抱きかかえながら、木下たちの元へ駆け出す!

しかし、ぐったりしている子供は抱えにくく、走りにくくて、

本来の早さで走れない!

子供が重いわけではない。軽すぎて壊れてしまいそうなのだ。


「ギャギャギャ!」


そうこうしているうちに『ゴブリン』が

魔法の壁を迂回するように、3匹ともそれぞれ移動を始めた!

やばい! 魔法の壁は回り込まれれば意味がない!

洞窟の通路の幅が広すぎることが仇になっている。


ダッ!


オレの後ろから、オレを追い抜いて

土煙の中を駆けていく、ファロス!

この視界が悪い中、早く動けるとは、さすがだ。

ファロスなら間に合うはず!


ガラガラガラ・・・


ゴッ・・・ ゴゴゴゴゴゴ・・・ ズンッ!


「!」


爆弾によって破壊された左側の壁の崩落の音で、

ひと際、大きな音が響いてきたと思ったら、

その途端に、すっ・・・と空気が流れてきて、

この場に漂っていた土煙が、サッと消えていく。


「ギャッ!?」


「ァギャギャ!?」


「ギャ・・・!?」


「!?」


その瞬間、左側の壁から異様な気配が・・・

魔力?のようなエネルギーを感じた!

『ゴブリン』たちも、それを感じ取ったのか、

木下の魔法の壁を迂回する動きを止めて、立ち止まり、

3匹とも左側の壁の方へ振り向いた。


オレも思わず足を止めて、左側の壁の方を見た。


ガラガラガラ・・・


ドズッ ドドドッ ズズズズズズズンッ・・・


壁には巨大な穴が、ぽっかり開いていた。

どこかの空洞に繋がったのか?

大小の岩や石が、その上から、まだ崩れてきているが、

穴のほうから空気が流れてきて、土煙が流されていく。

地面に落ちて燃えているランプの灯りは、

壁から向こう側には届いていない。穴の中は真っ暗だ。


しかし、


ボォォォン!


「!!」


「なっ!? なんだ!?」


突如として、何かが爆発したかのような爆音とともに

穴の奥が、真っ赤に光った!

魔力のようなエネルギーが、

一気に膨れ上がったのを感じる!


「ギャギャギャー!」


「ギャァー!」


それを見た『ゴブリン』たちが、

木下の魔法の壁を横切って、木下たちに目もくれず、

洞窟の入り口のほうへと走り去っていく!

「脱兎の如く」とは、まさにこのことだ。

爆発に怯えた? いや、さっきの爆弾の時とは違う反応だ。

なぜ逃げた? 何を怯えている?


「はぁ、はぁ、無事でござるか?」


「はい、大丈夫です・・・はぁ~・・・。」


その間、『ゴブリン』たちが去ったのと同時に、ファロスが

木下たちの元へと辿り着き、無事を伝え合っている。

木下は魔法の壁を解除して、

緊張が抜けたように、その場に座り込んだ。


「それよりも・・・なんだ、あれは?」


木下たちの後ろにいたグルースが、左側の壁の穴を指さしている。

穴の奥は、天井からの赤い光に照らされているようだが、

奥の天井は、こちらから見えない。

その赤い光に照らされた穴の奥は、かなり広い空洞・・・広場のようだ。

いったい、天井で何が光っているのか? 火が燃えているのか?

この膨大な魔力のようなエネルギーは?


ゴォゥ! ズズズズズズズン!!


「!?」


穴の奥の天井が、また大きく、赤く光ったと思ったら、

地響きとともに、穴の奥の広場に!

天井から火の塊が落ちてきた!?


ゾクゾクゾクッ


その瞬間、オレの全身の毛が逆立つような感覚を味わった!

何かは分からないが・・・

オレの本能が危険を察知している!

オレは、すぐに仲間の元へと走り出した!


「あ、あ、あれは・・・!」


「おいおい、あれって、まさか!?」


木下とシホが震えた声で、穴の奥を見つめている。

オレも気になり、走りながら、横目で穴の奥を見たら


ゴォ! ゴォ! ゴォ!


天井から落ちてきた火が・・・

いや、火なんて生易しいものではない。

大きな炎が、まるで血管が脈打っているかのように、

轟轟と、うねりを上げて燃え盛っている。

油か、何かが燃えているという感じではない。

炎が、まるで、生き物のように・・・!


その炎が・・・何やら、人の形をしているように見える!?

まさか・・・!?


「本当に・・・いたのか・・・!」


震える声で、グルースが言った。


「・・・『炎の精霊』!」





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