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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第四章 【初恋と伝説の海獣】
321/501

去る者の真実




ゴパァ!!!


魔獣が右手の平を素早く突き出し、大きな波が出来る!


バシャアアアアアァァァァァ!!


その波が、勢いよく、無数の水の球となり、空中を跳ぶ!


「きたぁぁぁ!!」


「振り落とされるなよ!」


「やつを中心に回り続けろ!!」


「避けろーーー!」


ドドドドドドドッ! ドンッ! ドボボンッ!


村長たちの船は、魔獣を中心に左側へ周り、

オレたちの船は、右側へと周っている!


今回の攻撃は、村長の船が狙われた!

しかし、安心はできない!

魔獣の攻撃は、すぐに繰り出せる!


「船を止めるな! このまま走り続けろ!」


村長の号令が、離れていても聞こえてくる!

オレたちも、そのように船を動かし続ける!

こちらに攻撃してこないとしても、

動き続けていないと、たちまち水の球の的にされてしまう!


ガィン! キキン!


その間も、長谷川さんとファロスの闘いは続いている。


「はぁ! はぁ!」


ファロスの表情には焦りが見える。

そして、それが攻撃にも表れ始めている。

長谷川さんならば・・・いや、オレでも、あれぐらいの攻撃なら、

さばききることは容易いだろう。反撃することも可能だ。

それでも、長谷川さんは、それをしない。


キィン! キィン! ヒュォン!


「ぐっ・・・!」


長谷川さんの表情にも焦りが見えている。

ファロスの猛攻をさばく体力がなくなったのか?

いや、ほかのことに気を取られている・・・。

やはり、ずっと追い続けていた魔獣が、目の前に現れたことで、

そっちのほうに気を取られているようだ。


「わが魔力をもって、空を漂う風よ・・・!」


「!」


ふいに、木下の魔力が上がったと思ったら


「フルトゥーナァ!」


ブオオオオオオオォォォ・・・!


「うわっ!」


木下の風の魔法が帆に当てられて、急に船が加速した!

船の端に掴まっていなかったら、後方へ吹き飛んでいたかもしれない。


「ユ、ユンム!?」


「シャンディーたちのように操舵術が上手ければ、

少しの風でも逃げられるだろうけど、俺たちでは無理だから、

ユンムさんに風を起こしてもらったよ。」


オレの問いかけに、木下ではなく、

シホが船の部品を操縦しながら答えた。

たしかに、この加速なら、あの攻撃を避けやすいだろう。


しかし・・・


「キィシャアァァァァ!!!」


「っ! こっちを見てるよ!」


ニュシェが震えながら、そう叫んだ。

当然ながら、魔法を使えば、魔獣は魔力を察知して

こっちを狙い始める!


魔獣は右手を構えて、次の攻撃態勢に入った!

こっちに体を向けている!


「くるぞ!」


「逃げ切ってやる!」


シホが、そう言って気合いを入れている!

オレたちは、衝撃に備えて、船の端をしっかり掴む!


「あー・・・違う違う。あっちだよ。」


パチンッ


「キィシャアァァァァ!」


「え!?」


ガンランが指を鳴らした瞬間に、魔獣は体の向きを変えて、

オレたちの船の位置とは反対側、村長たちの船に向かって手の平を突き出した!


ゴパァアアアアアアアア!!!


「うわああああああ!!」


ドボン! ボドドドドドドッ! ドンッ!


村長たちは、少し油断していたのか、

水の球が、次々に船へ命中していく!


ベコォ! バキッ! ゴガン!


「ぐぁ!」


「ぎゃああああ!」


ここからでは分かりづらいが、船に数か所の穴が開き、

数人の負傷者が出たようだ。

それでも、船の速度は変わっていない。

どうやら、あの『帆』と呼ばれる部分さえ壊されなければ船は動けるようだ。


こっちの船を狙わなかったのは・・・

村長たちの船のほうが、魔獣に攻撃しそうな気配があるからだろう。


カキン! カカン!


こっちは、いまだに長谷川さんたちが闘っている。

魔獣に攻撃を仕掛けるどころではない。

ガンランは、しっかり観察して分析しているようだ。


「あははっ! 上手いぞ! あと数回当てれば沈むなぁ。

船を沈めたあとは・・・お前のエサの時間だ。」


「キィシャアァァァァ!」


「!!」


ガンランのやつ・・・!

船を沈められても生き残る可能性はあるが、

海に放り出されて、自由に動けなくなったオレたちを、

自由に動ける魔獣に襲わせるなんて・・・!

今まで魔獣討伐に向かったやつらが、

誰も生きて帰ってこなかった理由は、これか!


魔獣から距離をとれば、あの水の球は避けやすくなるが、

それではいつまでも討伐できない。

討伐するために、近づかなければならないが、

近づけば近づくほど、水の球に当たりやすい。

近づいたところで、あの魔獣に船を叩かれたら、それまでだ。

本当に・・・最悪の敵だ!


「あー・・・あんたら、逃げ回るのに必死なとこ悪いけど!

そろそろ、俺は次の国へ行かせてもらうよー!」


「なにっ!?」


ガンランが、突然、そう言い出した!


「いやぁ、じつは、この国のお偉いさんたちと交渉するために、

俺の魔獣を使ってたけど、結局、交渉決裂しちゃってねー。

この国には、海へ沈んでもらうことになったんだよ。」


「な・・・なんだと!?」


「ガンラン先輩・・・!」


「なに、言ってんだ・・・あいつ!?」


ガンランの言っていることを理解するには、オレでは難しすぎた。

だいたい、理解できている者が、この場にいるのか。

いや、理解できても、受け入れられないことだ。

やつは・・・この国を滅ぼそうとしているのか!?

あの魔獣に、それだけのチカラがあるのか!?

交渉とは、いったい!?


「ぐっ・・・ガンラン! おのれぇぇぇ!!」


「!!」


ファロスと闘っている長谷川さんが、

ファロスの攻撃をかわしながら、ガンランに向かって叫んだ!

ずっと顔が赤いから分かりづらいが、激怒している!


「あー・・・あははっ! そこの元・大将の国も半壊させたんだったね!

でも、仕方ないよね? 交渉を受け入れなかったやつが悪いんだからさ!

俺は約束通り、半壊だけで済ませたんだし、約束を守れないほうが悪い!」


キキン! ガキン!


「い、・・・生贄を差し出せば・・・くっ!

国を、救うと・・・約束、したのに・・・!」


「!? はぁ、はぁ・・・。」


長谷川さんの言葉を聞いて、ファロスの猛攻がピタリと止まった!


「だから、助けてやったじゃないか!

国を全て沈めることもできたけど、

半壊で済ませてあげたのに、そんなふうに言うなんて心外だなぁ。

俺のおかげで、今、あんたが生きてるんだぜ?」


「!!」


今の会話からすると、長谷川さんの国は

ガンランによって、この魔獣によって半壊させられたということか!?

なにが、交渉だ・・・魔獣を使って脅しているだけじゃないか!


「はぁ、はぁ・・・ち、父上・・・今の話は・・・!?」


「・・・そ、そういうことだ・・・。」


ファロスがショックを受けている。

どうやら、今の話を知らなかったようだ。

長谷川さんは、本当のことを誰にも語らず、

全て1人で背負って、ここまで来たのか。


「あー・・・息子には伝えてなかったのか。

そうか、そうか。でも、まぁ、よかったじゃないか?

最後に真実を伝えることが出来たし、ここでいっしょに死ねるわけだし。」


「言わせておけばぁ! ぐぬぅぅぅぅ!!」


長谷川さんが、今にも船を降りて、

海を泳いででも、ガンランの元へ行きそうな・・・

それぐらいの怒気を感じる!


「あははっ! まぁ、そういうわけでさ!

俺がいると、この魔獣も思いっきり暴れられないし、

津波の魔法が使えないから、俺は次へ行くことにするよ。

あんたらは、この国ごと、海で死ぬといい!」


パチンッ


気味の悪い笑顔を浮かべて、

ガンランが指を鳴らすと、魔獣は左手に持っていた小船を、

ゆっくりと海に浮かべた。

本当にこの場から逃げる気なのか!?

やつが逃げれば、いよいよ魔獣が本気を出して暴れる!


「ガンラン先輩!!」


「!」


その時、突然、木下が叫び始めた!

風の魔法を使いながら喋るのは、かなり難しいようで、

急激に、風の勢いが弱くなっていく。


「んー・・・ユンム~。

かわいいキミが亡くなるのは惜しい限りだが、

最期にそんな格好のキミを見れて・・・!」


「ガンラン先輩は! 本当に・・・!

本当に、『ソウルイーターズ』の仲間なんですか!?」


「え・・・!?」


「?」


「え?」


木下は、ガンランの言葉を遮って、そう叫んだ。

オレだけじゃなく、木下の言葉を聞いた者たち全員が、

キョトンとした表情になって、木下を見た。


な・・・なにを言っているんだ、木下!?

やつは、『ハージェス公国』出身者で、木下の先輩で・・・

その『ソウルなんとか』というのは、木下の国を乗っ取った組織で・・・!?


・・・やつが、木下の国を乗っ取った組織の仲間!?





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