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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第四章 【初恋と伝説の海獣】
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冤家路窄(えんかろさく)




「ガ、ガンラン・・・先輩・・・!」


木下が青ざめていた理由が分かり、

オレたちも青ざめることになった。

小船を操縦していたのは、あのガンランだったのだ。


「な、なぜ、ここに!?」


シホが、力なく、そう言った。

オレたちは変装して、あの町を出たのに・・・。

いったい、いつ、バレたのだろうか?

それとも、最初からバレていたのか?

シホは自分の作戦に自信を持っていたから、

余計にショックが大きいようだ。


「あー・・・あははっ! いいね、あんたら!

そんな格好で、俺を誘惑してるのか? あはは!

特に、ユンムの、その姿は・・・そそられるなぁ~!」


「くっ!」


ガンランが笑いながら、そう言った。

木下とシホは、すぐに顔を赤らめながら

お互いの体を隠すように抱き締め合った。

ニュシェは・・・ガンランの言っている意味が分からなかったようだ。

恥ずかしがる様子がない。それはそれで問題なのだが・・・。

今は、それどころではない。


「おいおい、またお前らの知り合いなのか!?

ここまでくると、お前らが黒幕じゃないかって思えてくるな!」


村長が冗談ぽく、オレたちに向かってそう言った。

いや、実際、疑われても仕方ない状況だ。

こんなところへ、オレたちの知っている人物が現れたら、

疑うしかないだろう。

しかし、村長の口調からすると、本気でそう思っていないようだ。


「ち、違う! こいつは、オレたちの敵だ!」


オレは村長の誤解を解くために、そう言った。


「あー・・・いきなり敵対宣言かぁ。まぁ、そうだよなぁ?

あんたらは、俺の目を欺くために、そんな破廉恥な格好して、

こっそりと町を出て行ったんだもんなぁ?」


「・・・!」


ガンランの言葉を聞いて、背筋に寒気がした。

こいつ・・・全て、知っている!?

もしかして、初めから尾行されていたのか!?


「どうして・・・!?」


「どうして分かるのか? どうしてだろうなぁ? ユンム~?」


「っ!」


オレの問いに、挑発だと分かる言葉を使う、ガンラン。


あの言い方は・・・木下なら、分かっているという意味か?

裏稼業の情報屋が、ガンランにオレたちの情報を流した・・・。

木下は、そんな予想っぽいことを言っていたが、

それも真実かどうか分からない。

もしかして、『スパイ』同士で、いつの間にか情報のやり取りをしていたのか?

いや、そんな素振りは無かったはず・・・有り得ない。


「・・・。」


木下は、黙っている。

黙って、ガンランを睨んでいる。

今は、木下を疑っている場合ではないな。

それこそ、仲間割れさせるのがガンランの策略だろう。


ガキィン! キキン! キィン!


「ファ、ファロス! ま、待て・・・!」


まだ闘い続けている長谷川さんたち。

また、長谷川さんがファロスに制止を求めたが、


「はぁ、はぁ! 待てば、

その刀を拙者に渡してくれるのか!? 父上!」


「そ、それは・・・出来かねる・・・!」


「はぁ! はぁ! ならば、待てぬ!! はっ!」


ギィン! カカン!


一瞬だけ止まったファロスの攻撃が再び始まった。

もはや、長谷川さんが、あの武器を手放さない限り、

ファロスの攻撃が止まることは無さそうだ。


・・・いや、もうひとつ止める方法がある。

それは、長谷川さんがファロスに勝つことだ。


「あー・・・そこにいるのは、『ロンマオ』の大将じゃないかぁ。

あ、今は、大将じゃないんだっけ?

あははっ! ・・・まぁ、ここに来るのは分かってたけどね。

遠路はるばる、仇討ちとは泣けてくるねぇ。

一度、負けたのに、ノコノコ来るなんて・・・あははは!」


「・・・ガ、ガンラン・・・! き、貴様ぁ・・・!」


「!?」


「なに!?」


ガンランが、長谷川さんを知っている!?

長谷川さんの、あの反応からすると、一度戦ったことがあるのか!?

ファロスのほうは、よく分かっていないような、不思議そうな顔をしてる。

ということは、長谷川さんだけがガンランを知っている?

長谷川さんが、チラチラとガンランを見て・・・睨みつけている!


ヒュン! ヒュヒュン! カキン!


長谷川さんが、ガンランに気を取られ始め、

それでもファロスの猛攻は止まらず、

徐々に、長谷川さんに余裕がなくなってきている。

ギリギリの際どい防御になってきた。


「待てよ、おい! シホ!

もしかして、シホが言ってたイケメンの敵って、こいつのことか!?」


村長が、ガンランと長谷川さんを無視してシホに話しかけた。


「その通りだ! こいつは俺たちの敵だ!」


シホがガンランを睨みながら、そう叫んだ。

どうやら、村長とともに過ごしている間に、

ガンランのことまで喋っていたようだ。


「あー・・・俺ってそんなに嫌われてるのかぁ。

ユンムから、あること無いこと、聞いちゃったのか?

ユンムは、ウソが下手なくせに、ウソつきだからなぁ?」


「・・・!」


ガンランが、へらへらとした笑みを浮かべて、

また木下を疑わせるような言葉を吐いている。

あからさま過ぎて、オレはガンランの言葉を鵜呑みにしないが、

シホなんかは、すぐに信じてしまう気がする。


「だったら、話は早い! シホの敵は俺たちの敵だ!

『シラナミ』様を倒す前に、そこのイケメンを倒す!」


村長が、そう宣言して、

後ろにいる男たちに号令を出そうとした時、


「ま、待て! やつには手を出すな! くっ!」


ヒュッ! ザシュッ!


「!!」


長谷川さんが、村長へ叫んだ時、その隙をつき、

ファロスの攻撃が、長谷川さんの右腕をかすめた!


なにを焦っているんだ? 長谷川さんは!?


「あー、そこの元・大将の言う通り、ちょっと待った方がいいよ。

今、俺を殺しちゃうと・・・俺の魔獣が暴れることになる。」


「え・・・!?」


「な、なにを言って・・・!?」


「まさか・・・!」


みんなが、ガンランの言葉に不気味さを感じている中、

木下だけが、何かを知っているかのような反応だ。


「ユンム、なにか知っているのか!?」


オレは、すぐ木下に聞いた。


とにかく、ガンランは得体が知れない敵だ。

情報が少なすぎる。だから不気味に感じて、否が応でも恐怖を感じてしまう。

情報が分かれば、対策も対処もしやすい。


「ガ、ガンラン先輩は・・・!」


しかし、木下から有益な情報を聞いても、


「『ビーストテイマー』なんです!!」


「!?」


無知なオレには、それを理解できなかった。

オレが首を傾げている間に、

ガンランの魔力がわずかに上がり、指を鳴らした!


パチンッ!


ゴポォッ ゴポゴポゴポォ! ドドドドドド! ゴパァァァ!!


その瞬間、やつが乗っている小船の後方の海面が

泡立ち、大きく盛り上がった!? デカい!


「なにか、いるぞ!?」


「な、なんだ!?」


「うわっ!」


「あ、あれは!?」


グラグラグラグラ・・・!


ふ、船が揺れる!!


「ご対面~♪」


慌てふためくオレたちをからかうように、

ガンランの上機嫌な声が聞こえた。






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