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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第四章 【初恋と伝説の海獣】
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敗戦濃厚






ゾワワワッ


「っ!」


海賊たちの戦いは長引いていた。

何度も、雨でずぶ濡れの男たちが慌てながら

階段を下りてきて、女の村長に戦況を報告しに来る。


「アファロスが一騎打ちでやられちまった!」


「あのアファロスが!? ウソだろ!?」


地上で、どのような戦いが繰り広げられているのかは、

まったく分からないが、ここへ戦況を伝えに来る男たちの報告により、

海賊たちのほうが不利な状況に追い込まれているのが分かる。


もう、ずっと、あの気持ち悪いエネルギーの

増幅を感じ続けている、オレとニュシェ。

あの増幅が終わらない限り、長谷川さんが倒されずに、

ずっと戦い続けていることを示している。


「お、お頭・・・!」


バチィン!


「うっっぷ!」


「村長だって、言ってるだろ!」


村長のそばにいた大男は、

また言い間違えて、ほほを引っ叩かれている。


どうやら、村の年寄りからは「お嬢」と呼ばれていて、

海賊の時には「おかしら」と呼ばれているらしい。

しかし、村にいる時は「村長」という呼び方を

徹底させたいのだろう。呼び方に、いちいち厳しい。


「す、すんません、村長!

村一番の怪力だったアファロスが・・・やられたとなると・・・。」


「・・・。」


叩かれたほほを自分で撫でながら、大男はそう言い淀む。

それ以上は、言いたくないのか、言いにくいのか・・・。

村長も、その次の言葉を急かすことなく、黙って聞いている。

大男も村長も、感じ始めているのだろう。

「敗戦」の二文字が脳裏に浮かび上がっているはずだ。


村長は、ここへ来てから、ずっと怖い表情のままだ。

もしかしたら、戦況報告を聞きながら、

すでに相手の強さを感じ取っているのかもしれない。


・・・この場合、逃亡するか、降伏するのが得策だろう。

長谷川さんの目的がなんなのか分からないが、

もし、海賊たちの全滅が目的ならば、

降伏しても意味がないから、

早くここから逃げるしかないだろう。


絶対、戦いは避けることだ。

その村一番の怪力の男がどれほどの実力だったか知らないが、

一番が倒された今、二番や三番が立ち向かったところで結果は変わらない。


ゾワワワ・・・ ゾワワワ・・・


「・・・っ。」


あの武器のおぞましいエネルギーに耐えているオレたちと同じく、

何かに耐えているかのように、

村長は黙って、海賊たちが降りてくる階段を睨んでいる。


入れ替わり、立ち代わり、海賊の男たちが

階段を駆け上がったり、降りてきたりしているが、

その数が、徐々に減ってきている・・・。




ダッダッダッダッ


慌てて駆け降りてくる中年の男が

息を切らして、村長に報告する。


「はぁ、はぁ、おか・・・村長!

や、やつが・・・もう、すぐそこに・・・!」


「・・・ほ、ほかの仲間たちは?」


「はぁ・・・はぁ・・・。」


若い男が、村長の問いに、すぐに答えない。


気づけば、駆け上がっていったまま、

降りてこない男たちが増えていた。


「い、今、交戦中の仲間たちが10人・・・

あとは、ここにいる者たちで・・・全部です・・・。」


「・・・!」


ここには、牢屋にいるオレたちと、

村長とシホ、報告している中年の男、

あの年老いた男、体の大きな男が2人と、

少し頼りなさそうな若い男たちが5人・・・。

あとは、奥の牢屋に入っている戦えない女子供たちだけだ。


この村に、いったいどれだけの海賊たちが住んでいたのか

分からないが、もうこれだけしか戦える者たちがいない・・・。


この戦いは・・・長谷川さんの勝ちだ。


ズズン・・・ ドズン・・・


上から、なにか爆発しているような音がして、

地下にいても揺れを感じる。

上の方で魔力の高まりを感じるようになった。

長谷川さんなのか、男どもの誰かが、魔法か魔道具を使って戦っているようだ。


ズゾゾゾゾ・・・ ゾワワワワ・・・


「・・・!」


「うー・・・!」


それでも、長谷川さんの武器のエネルギー増幅が止まらない。

いったい、何十人、倒されたのだろうか。

長谷川さんぐらいの実力ならば、

相手との力量も分かっているのではないだろうか。


ゾワワワワッ・・・


魔法や魔道具に疎いオレは、その方面の知識が足りない分、

それらの対策が下手だ。

だからこそ、今のこの状態になったわけだが、

長谷川さんは、いったい、それらに対して、

どのような戦い方をしているのだろうか?

ちょっと見てみたい気がする。


「はぁ、はぁ!」


報告を終えた中年の男は、息を整える間もなく

すぐに階段を駆け上っていった。


「くそ・・・!」


それを、睨むように見送っている村長。


・・・止めないのか?

それとも、なにか策があるのか?

いや、策があるなら、もうとっくに実行しているはずだ。

こんなに仲間の人数が減っているということは、

もう万策が尽きているのではないのか?



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