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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
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ハニートラップ



「うちの執事が・・・すまない。」


オレがみんなに事情を話した後に、

デーアが、みんなに頭を下げた。


「そんな、デーアさんのせいじゃないですよ!

悪いのは、あの執事さんですから!」


木下は、デーアを気遣いながらも、

執事の行動に、少し怒っているようだ。


「それにしても、やり方が露骨すぎて、えぐいな・・・。」


シホは、驚き半分、呆れが半分という感じか。


「・・・。」


ニュシェのほうは、話の全てを理解できてない様子だ。

難しい顔をして黙っている。

やはり子供だな。


「・・・それにしても、おっさんを

デーアさんの結婚相手に選ぶなんて、かなり切羽詰まってるんだな。」


シホが食べながら、そう言った。

それはオレも同じように感じた。

いかに後継ぎが大事であろうと、

まだ若いデーアの結婚相手に、こんなジジィを

あてがうなんて・・・。どうかしている。


「ジェンスが、こんな行動を取るようになったのは、

父上が、数年前に、病で寝込んでしまったことがあって・・・。

その時は、命に別状はなかったし、

体は回復して、今は普通に暮らせているのだが、

あれ以来・・・ジェンスは、何かと

私に男をくっつけたがるようになってしまったんだ。

おかげで、私はあまり男を

自分の近くに寄らせないようになってしまった。」


デーアが、肩を落として、そう言った。

それで、いつも単独行動なのか。


「なるほど・・・。デーアのことを案じるだけじゃなく、

この国の未来のことまで案じて・・・。

執事殿の心配する気持ちが加速したわけか。」


デーアの話を聞けば、執事が強引な手段に出るのも、

分かる気がするが、しかし、やっぱり・・・


「どんな理由であれ、おじ様は、もう結婚していますし、

デーアさんにとっても迷惑です!

もうそんな余計なお世話は、やめさせないと!」


木下が怒りすぎて、いきり立っている。

しかし、その通りだ。はっきり言って迷惑だ。

これでは、おもてなしを受けに来ているのではなく、

罠にハメるために招かれたと感じてしまう。


「わ、私は迷惑ではないが・・・。」


デーアが、うつむきがちに、小さな声でそう言った。

そして、うつむきながらも、オレにちらちらと視線を向けてくる。

おいおい・・・。


・・・ダメだ。

なんとなく感じ取っていたが、デーアは、

執事の術中にハメられてしまっている。


男性との経験不足に加えて、

今のデーアは、不安や悔恨の気持ちを引きずりつつ、

なんとか、この国の大変な状態を立て直そうとしている。

いわば、心が不安定な状態だ。

そんな時に、オレの励ましの言葉が効いたのだろうが・・・

執事の術中どおり、たまたまそばにいる頼れる異性に

心が傾き始めてしまったのだろう。

・・・オレも、他人に誇れるほどの

恋愛経験があるわけではないから、全て憶測だが。


「馬車から降りた時に、ちゃんと既婚者であることは伝えたし、

結婚というものは、周りが手を焼いても

どうにもならないということを伝えたはずなんだがなぁ。」


オレの言葉が届かないほど、

執事は、勝手に焦っているのだろうか。


「既婚者とくっつけさせようって考えに至る時点で、

もはや正常な考え方ではないですよね。」


木下が、そう言った。オレもそう思う。


「そ、そうだな。そうだよな・・・。」


木下の言葉に正気を取り戻したか、

デーアが、何度もうなづいて・・・うつむきだした。

いや、全然、正気じゃないな。

木下の言葉を聞いて落ち込んでいるようだ・・・。


それにしても、執事は、

何をそんなに焦っているのだろうか。

たしかに、執事はオレよりも年上に感じるが・・・

老い先短いと悟って焦っているのか?


考えていても分からないものは仕方ないか。

今度、執事が姿を見せた時に、捕まえて問いただせばいい。

オレは、木下が取り分けてくれた皿の料理に

手を伸ばして・・・


ゴトンッ


「!?」


ニュシェが、ふいにテーブルに頭をくっつけて・・・


「むにゃ・・・。」


寝始めてしまった。

満腹になったから眠くなった・・・のではない!


「ど、どうした、ニュシェ!?

うっ・・・すっげー眠い・・・!」


「わ、私も・・・!」


シホが頭を抱えて、辛そうな顔をしている!

眠気と闘っているようだ!

デーアのほうは、顔をうつむけたまま・・・


ゴツンッ


そのままテーブルに頭を預けてしまった。


「だ、大丈夫か!? なんだ、これは!?」


「こ・・・これは・・・睡眠導入剤・・・!?」


木下が立ち上がったが、フラフラして

そのままオレに体を預けてくる!


「睡眠薬か!?」


いつの間に・・・!?

しかし、オレ自身は眠気がないが!?


そうか、食べ物か!?

オレは、まだ一口も食べていないから!?


「うぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・!」


寄りかかってきた木下は、

みるみる顔が赤くなっていく!

本当に、睡眠薬だけなのか!?


「うぅ、おっさん・・・ユンム・・・さん・・・。」


ゴトッ


猛烈な眠気に抵抗していたシホだったが、


「んがーーー・・・くーーー・・・。」


力尽きて、眠ってしまったようだ!

次に次に眠気で倒れていく女性たち!


「はぁ・・・ぁ・・・はぁ・・・!」


そんな中、オレの体には何も起きず。

木下も、眠そうというよりは、

寄りかかっている体がどんどん熱くなって、

顔を赤らめて、呼吸が荒く、苦しそうだ。

どちらかというと風邪の症状に近い。


「こ、これは!?」


「お、おじ様ぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

体が・・・火照って・・・!

ぁはぁ・・・胸が、胸が苦しい、です・・・!」


顔を赤くして・・・うっすらと額に汗をかいて・・・呼吸が乱れて・・・

潤んだ瞳でオレを見てくる木下・・・。

なんか・・・良くない空気が生まれて、

それに流されそうな気がしてくる!


「お、おじさ・・・まぁ・・・はぁ、ぁはぁ・・・!」


木下だけ、他のやつと反応が違う!

瞳がトロンとしていて、焦点が合っていない気がする!

絶対、おかしい!


「ぁん、はぁはぁ・・・ぁふぅ・・・おじさまぁ・・・。」


「ユ、ユンム、ここに座ってろ。いいな!?」


オレは、ぐったりと寄りかかってくる木下を

無理やり席に座らせて、木下から離れた。

・・・なんて色気だ!

オレに女房がいなければ、

完全に空気に流されていただろう。


オレは、食堂のドアに向かって歩き、

ドアを乱暴に開けて


バァァァーーーン!!


「執事殿ぉーーー!!

どこだぁぁぁーーーーーー!!」


思い切り怒鳴り声で、執事を呼んだ!


オレは、頭にきていた!

国を想う気持ちも、デーアを想う気持ちも、立派なものだと思う。

しかし・・・

オレの仲間に、薬を盛ったことが許せない!!!




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― 新着の感想 ―
[良い点] アハハ、執事殿頑張りましたが詰が甘かったですな。 (  ̄ー ̄) [気になる点] パラレルワールドの話ですが 万が一、最初の時点で佐藤氏とデーアが間違って逆に座ってたらどうなってた? 同じ…
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