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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
221/502

立証





「な、なにを言っているんだ!

キカートリックスさん!

清春さんの言っていることは、ウソじゃないんだ!

回収した他の文献にも、そう書いてあったんだ!

間違いない!

きっと、その最後のページに付いている

黒色のものが、『バンパイア』の『血』なんだ!」


ディーオが慌てて、そう言った。


「じゃぁ、お前は試したのか?

その本の最後のページが『血』だと確かめたのか?

『血』を舐めた人間が、

本に書いてある通り、『バンパイア』になったのか?」


キカートリックスが、ディーオを睨みながら

そう言った。


「た、試せるわけがない!

そんなことしたら・・・私が『バンパイア』化してしまう!」


ディーオが青ざめながら、そう言った。

『魔物化』する自分を想像したのだろうか。


「試していないなら、本に書いてあることが

本当のことかどうかなんて、永遠に分からんだろう?

こんなものは試してしまえば、すぐに答えが出るものだ。

ディーオが舐めれないならば、他の者でもいい。

舐めさせてみれば、すぐに分かる話だろ。」


キカートリックスが、そう言い放つ。


「で、できるわけない!

自分の命欲しさに、他の者で試すなんて!

だいたい、本当に『バンパイア』が増えてしまったら!」


ディーオが、そう言ったが


「そうだろうな。お前なら、そう言うと思った。

だから、俺が試してやる。

お前は、デーア様の報告や本に書いてあることを信じているんだろ?

だから怖くて試すことが出来ない。

しかし、誰かが確認せねば立証できんだろう?

デーア様の言うことも、本に書いてあることも信じていない

俺が、この場で試してやるって言ってるんだ。

お前の、聖騎士の最後の務めとやらを

わざわざ待つことなく、この場で

白黒はっきりつけさせてやるって言ってるんだよ!」


キカートリックスが、そう言った。


・・・敵ながら、正論だ。

ディーオに任せていては、いつまでも

本に記載されていることが本当かどうかは分からない。

最後のページの真っ黒な部分が、

本物の『血』かどうかも分からないままだろう。

それでは、いつまでも証拠にはならないのだ。

誰かが犠牲になって、立証しなければならない。

それでいて、キカートリックスは、

ほかの誰かに試させるのではなく、自らが試すと言っているのだ。


「ま、待て! キカートリックス!

俺が言ったことは、デタラメじゃないんだぞ!」


店主が、慌ててキカートリックスを止める。

たとえ敵だとしても、目の前で

むざむざ『バンパイア』が増えるのを

見過ごせるわけがない。


「はっ! 信じてもらえると思っているのか? シエン清春。

俺は、お前の言うことを信じていない。

そこのディーオの言うことも、何ひとつだ。

俺が信じているのは、『オラクルマディス神』様だけだ。

俺がひと舐めして、なにか変化があれば

この本のことも、お前たちのことも信じてやろう。

何も変化がなかった場合は、予定通り、お前たちを処罰する。

おい、アンヘルカイド! 早く、それを寄こせ。」


キカートリックスが、アンヘルカイドを急かす。

しかし、


チャキ!


「!!」


さっきまでアンヘルカイドへ向けていた

店主の2本の短剣が、今度は

キカートリックスに向けられた!


「そうだったな、キカートリックス・・・!

お前は、俺の言うことを何ひとつ信じてくれなかったんだった。

20年前に分かり切っていたことだったんだが、

そうか、もう20年も経っちまってたのか・・・。

すっかり忘れてたよ。

お前が、頭ガチガチのバカだってことをよぉ!」


店主が怒り任せに、そう言い放つ。

キカートリックスの剣先も、

さきほどまで、宿屋の店員へ向けられていたが、

今、店主へと向けられた。

殺気を込めて・・・。


「おいおい、俺が身を挺して

その本の真贋しんがんを見極めてやるって言ってるんだぞ!?

お前らも、その本が、本物か偽物か、

その結果が知りたいんじゃないのか?

それとも・・・あるいは・・・

そんなに必死になるところを見ると、

お前らは、もう知っているんじゃないか?

それが偽物だということを!

民衆の前でバレるとマズいから、必死になって

俺に剣を向けているんじゃないのか!? シエン清春!」


「バカもそこまでくると、救いようがないな!

これ以上『バンパイア』の犠牲者を出したくないから

必死になってるに決まってるだろうが!!」


キカートリックスは、店主をアオっているつもりらしい。

店主も、それに気づかないわけではない。

本気で『バンパイア』の被害を止めたいだけなのだ。


しかし、売り言葉に買い言葉。

ケンカ腰のまま言い合っているから、

お互いの殺気が高まっていく!


今にも、お互いが斬りかかりそうな空気の中・・・




ペロッ!


「!?」


「え!?」


「おい!」


信じられない行動に出たやつがいた。


アンヘルカイドだ。


やつが、『バンパイア』の本の

最後のページを舐めやがったのだ!!


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