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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
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籠城は得策ではない




『マティーズ』の知らせを聞いて、

食堂にいた信徒らしき客たちは、

慌てて食堂から出て行った。

すぐさま、宿屋の店員の男が、客たちを追いかけて

支払いをさせていたようだ。


なにげに、ここの店員、いい動きをするじゃないか。


オレたちが戦闘準備を済ませて

食堂へ戻ると、すでに準備を済ませた店主と店員、

そして『マティーズ』の3人と・・・

怯えているニュシェが、待っていた。


よく見ると、ここの店員の男、

若者だが、なかなかいい面構えだ。

きちんと装備していると、店員というより傭兵にしか見えないな。

軽そうな鎧と剣を装備しているが、

なかなか年季の入った装備に見える。


もうすでに、術者の気配を外に感じる。

術者だけじゃない。その他大勢の気配を感じる。

聖騎士と騎士団たちか。

もう宿屋に近い距離だ。


「よし、そろそろ店の前で出迎えよう!」


オレがそういうと、木下が


「えっ!? わざわざ外に出るんですか!?

相手が来るまで、店の中にいたほうが安全なんじゃ・・・?」


そう言い出した。

ちゃんと学校では勉強していただろうに、

実戦のことになると、経験不足だからか、

知識まで不足しているようだ。


それを察して、オレが答える前に

シホが、木下に説明しだした。


「あー、ユンムさんは実戦経験があんまりないんだったね。

建物に籠城ろうじょうする場合は、こちら側に

有利な者かアイテムがないと意味がないんだよ。」


シホが、手短に説明しているが、

それだけでは不十分だろう。


「どんなに強固な建物に立てこもっても、

相手が外から『サーチ』を使えば、

こちらが建物のどこにいるのか、丸分かりだからな。

こちらに人質でもいない限りは、

建物の外から、魔法でオレたちを攻撃するのが

籠城戦の定石というやつだ。」


オレが、てっとり早く説明したら、

ようやく木下にも伝わったようだ。


「そ、そうでしたね・・・。

相手は、すでに『サーチリング』を使って

こちらへ向かっているわけだから・・・。」


木下が、理解して、少し青ざめている。


この国の一般常識は分からないが、

普通ならば、町の中での魔法は、

生活や仕事で使う小さな魔法以外はご法度のはずだ。

しかし、相手は、すでに広範囲の『サーチ』を使っているわけだから

一般常識などお構いなしだろう。


「おい、お喋りはいいから、早く外に出ろ!

そろそろ、やつらの魔法範囲内に入ってしまうぞ!」


オレたちが、木下に説明しているところを

出入り口のドア横に立っている店主が、少しイライラして急かしてきた。

実際、早く宿屋の外に出ないと、

この建物ごと魔法で焼き払われてしまう可能性もあるからだ。




「うわぁぁぁ! 騎士団が来たぞー!」


「どうなってるんだ!? 聖騎士様たちが!?」


「逃げろ! 巻き込まれるぞ!」


宿屋の外に出てみると、すでに表の大通りは大混乱!

教会の方角から、逃げてくる町民たち!


教会の方角を見れば、すでに

騎士団たちの姿が数十m先に見えている!


ガガン! カキン! ガキン!


「やめろって言ってるだろ!」


「邪魔するなぁ!」


金属と金属がぶつかりあう音や

罵倒しあう大勢の声が聞こえる!

騎士団同士が、戦っている!?

総勢30人ぐらいの騎士たちが、

どちらが敵か味方か分からない状態で戦い合っている!


その騎士団たちの先頭に、青白い鎧の騎士2人が、

剣を交えながら、どんどんこちらへ近づいてきている!


「間違いない、騎士団のやつらだ!

ディーオのやつ、アンヘルカイドを抑えきれてないな!」


店主が、険しい表情で

聖騎士たちの戦いを見て、そう言った。


見れば、青白い鎧を着た、黒い長髪の男ディーオは、

両手で剣を構えて戦っているが、

もう一人の青白い鎧を着た、短髪で、がっしりした体格の男は、

片手で剣を構えていて、軽く相手をあしらっている感じに見えた。


そして、がっしりした体格の男から

魔力の高まりを感じる。

今も、ずっと『サーチ』を発動したままで、戦っている。


・・・あの男、どこかで・・・?


「ちっ、まずいな!」


ダッ!


店主は、そう言った瞬間に、

戦っている聖騎士たちのほうへ走っていく!


2本の短剣を腰から抜き、聖騎士たちの間に割って入って


ガキン! キィン!


2人の聖騎士の攻撃を受け流した!


「っ!?」


「なんだ!? このジジィ!」


そこで、ようやく聖騎士たちの動きが止まる。

それと同時に、戦いあっていた騎士団たちの動きもピタリと止まった。

よくよく見れば、聖騎士のほうは

本気かもしれないが、騎士団たちは、

そこまで本気で斬りあっている感じがしなかった。

どちらかと言えば、お互い遠慮している感じがした。

指揮を執るリーダーが争い始めたから

仕方なく・・・と言ったところか。


そして、

短剣を抜いてしまっている店主に、

騎士団たちは、ビクビクしながらも剣を構え始めている。


この状況は・・・

オレたちと騎士団の戦いが始まってしまいそうだ。






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