おっさんの秘策
王宮から城門までの街道は、ほかの道より拓けていて
多くの商店が立ち並んでいる。
例の『王室で説明会』が正午からだったので、
もう昼食の時間が過ぎていて、
どの店もちょうど空いている時間帯だ。
そこらで木下と遅めの昼食をとることにした。
ここで、木下の真意を聞き出す。
場合によっては、木下に同行を諦めさせる。
しかし、場合によっては・・・
こちらが言いくるめられてしまう可能性のほうが高い。
なんせ、女房を説得することすらできないオレだ。
自分より頭のいい女を言い負かせるとは思えない。
その場合は、そのまま、
ここらへんの店で旅の準備を
いっしょにすることになるだろう。
それにしても・・・
オレは、ふと後ろから歩いてついてくる木下を見た。
年齢をはっきり聞いたわけじゃないが、
おそらく、20代の前半だろう。
・・・娘の香織と同じぐらいの年齢じゃないのかな。
振り返った瞬間、木下と目が合う。
目が合う前から、木下は作り笑顔のままだった。
ずっと、あの表情を作るのも大変そうだな。
「?・・・なにか?」
「いや、もうすぐ目的の店につくが、
ひとつ聞いておきたいことがある。」
「なんでしょう?」
「木下、お前は酒が飲めるか?」
「えっ?」
木下の作り笑顔が、少しこわばった気がした。




