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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
196/501

平和たちの解放




「わが魔力をもって、すべてを灰塵と化す炎を・・・!」


店主が、こちらへ走りながら

魔法の詠唱をしている!


しかし!


「!」


ミヒャエルの上半身から魔力の高まりを感じた!

店主の魔法は間に合わない!

こいつの口をとりあえず封じなくては!


オレは、剣を振りあげて

やつの口へ目掛けて振り下ろす!


ビュッ!


「法術・アイスシールドォ!」


パキキッ! ガキン!


「んな!?」


オレの剣は、やつの目の前に

突然出現した氷の塊にぶち当たった!


パキパキッ!


「うぉ!」


氷の塊に当たった剣が、そのまま凍りそうになったので

慌てて、剣を引き抜き、後方へ跳ぶ!


そこへ、オレと入れ替わりで

店主が来て、やつへ向かって魔法を放つ!


「ファイアストォー・・・」


ドカッ


「ぐぁ!!」


見ると、店主の足元に転がっていた

ミヒャエルの下半身が、店主の足を蹴っていた!

動くのか、あれは!

バランスを崩し、転びそうになった店主は

魔法を発動できなかった!


「かはっ・・・ふひっ、ふひひひひ~!!」


上半身のミヒャエルは、天を仰いで高笑いし始めた!

そして、やつの魔力が再び高まった瞬間!


「法術・アンロ~ック~・・・ふひっ!」


ガチャン! ガチャン! ガシャ! ガチャガチャン!


「なんだ!?」


突然、『洞窟』内に、いくつもの金属音が響き渡る!


「お、おじさん!」


「!」


ニュシェに呼ばれて振り返ると、

この広場のあちこちにある

大小さまざまな黒い檻のトビラが、次々に開いていく!


ガチャ! ガチン! ガチャン! カチャ!


やばい!

すべての檻に魔獣がいるわけではないが、

かなりの数がいる!

それらが出てきたら、囲まれてしまう!


「店主、一度、下がるぞ!

ニュシェ、後ろの通路へ走れ!」


オレは、そう叫びながら、

デーアの元へと走る!

退路を断たれたら、おしまいだ!


「ぁ・・・ぁ・・・。」


デーアを抱き起こすが、

ぜんぜん目の焦点が合っていない・・・。

心、ここにあらずだな。


「しっかりしろ! 聖騎士だろ!」


店主も駆けつけ、デーアの肩を持ってくれる!

2人でデーアの肩を持ちながら、

後方の道へ走った!


「ウォッホー!」


「キャキャキャキャッ!」


「ゴアァァァァ!」


次々に、魔獣たちの雄たけびが聞こえてくる!

もうじき夜明けが近いはずだし、

夜行性じゃないやつらも、そろそろ

起きだす時間帯になってきているようだ。


「ウキャキャキャァァァ!」


元気で、獰猛な、雄たけびが

どんどん増えていく!


その時、


「ウォッホオオオオオオーーー!!!」


「!!」


ミヒャエルのほうから、

ひと際、大きな魔獣の雄たけびが聞こえてきた!

今までの魔獣の声とは比べ物にならないほど、

声が大きい!


オレたちは、通路のほうまで逃げてから、振り返った!


「な、なんだ、あいつは!?」


一瞬、目の錯覚かと思ったが、明らかに違う!

檻から出てきた魔獣たちが、ぞろぞろとミヒャエルの周りに

集まってきている中、ミヒャエルの後方から、

ゆっくりと、大きな影が近づいてきていた!


「あ、あいつ! もしかして、

以前、町を襲って、1匹だけ逃げた

でかい『ラスール』じゃないか!?

あの時よりも、さらにでかくなってやがる!」


「なに!?」


大きな影がミヒャエルのそばまで近づいてきた!

体長は、余裕で10m以上ありそうだ!

2階建ての家よりも、ちょっと大きいぐらいだ!


「まさか、あれが、シホの言っていた

カタキってやつじゃないだろうな!?」


「あぁ、その、まさかだ!

あれが、シホの姉を殺した『ラスール』だ!

おそらく背中に三日月のような模様がある!」


なんてことだ!

あんなバカでかい魔獣は、そうそう見ることがない!

『ソール王国』でも、8~9mほどの

『オオカミタイプ』を見たことはあったが、

やつらは立ち上がることがないから、

対峙しても、それほど大きく感じなかった・・・。

10m越えの魔獣が立って歩いてくる様は、

かなりの圧迫感がある!

感じる恐怖が、ぜんぜん違う!


とりあえず、オレたちは

通路のほうまで逃げてきた。

この広場の入口のような場所。

ここなら、魔獣たちに囲まれることはない。

オレと店主で、ニュシェとデーアを守る態勢になる。


5m越えの魔獣たちが、20匹ぐらい、

ずらりと集まり、その一番後ろに、

バカでかい『ゴリラタイプ』が、突っ立っている!


こうして、やつらと距離をとって見ているが、

この光景は、普通の人間からすれば

絶望にしか見えないだろう。


「・・・も・・・もう、おしまい、だ・・・。

私たち人間は・・・滅ぼされてしまうんだ・・・。」


うわ言のように、デーアがそうつぶやく。

いつの間にか泣いている。目がうつろだ。


「バカ言え! 滅ぼされてたまるか!」


オレは、そう言いながら、

腰の布袋から、回復用の薬を2本取り出し、

1本を店主に渡した。

2人で、それをごくごく飲み干して、


「あぁ、そう簡単にやられるわけにはいかんな!」


パキッ


店主がそう言いながら、自分の左肩に

凍り付いていた氷を、短剣で砕いた。

店主の血で真っ赤に凍っていた氷が

バラバラと地に落ちる。


「ふひっ! がふっ! ふひひひひひひ~! がはっ!」


ミヒャエルのバカそうな高笑いが響いてきた。

まだ上半身の状態で、回復できていないから

笑うと吐血して、むせるようだ。


「い、今が『断食』期間中でなければ、

我が、こんな姿で天を仰ぐことは、がふっ、なかったのだがなぁ~。

そろそろ夜が明ける頃だ~。

そこの美女たちまで殺してしまうのは、もったいないが、

こうなっては仕方ない・・・。

お前たちを殺して、このまま、

付近の町に『平和』を与えてやろう~。ふひ!」


ミヒャエルがそう言うと、


「ゴォッホホホホー!」


「ギャギャギャッギャッ!」


「ガァァァァァァーーー!」


魔獣たちが、一斉にこちらへ向かって走り出した!





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