不死の魔物
すぐに、店主がいた所まで
オレがたどり着き、店主と入れ替わるようにして
オレは、さらにそこからやつの元へ駆ける!
「ふひっ!」
ドヒュ!
ミヒャエルが、近づいているオレに向かって
氷の槍を投げてきた!
「ふっ!」
それを紙一重で、かわす!
ものすごい速さの槍だが、やつとの距離が
まだ離れているから、避けられないほどではない!
ゴゴン!
後方の壁で氷の槍が砕け散る音が響く!
「法術・アイスランス!」
パキパキパキキッ!
すぐさま、ミヒャエルの魔力が高まり、
『法術』によって、氷の槍を作り出している!
オレが、やつの目の前まで駆けつけたころには、
やつは、もう氷の槍を手にしていた!
「ふんっ!」
オレは、上段から
やつの槍ごと、たたっ斬る勢いで、
剣を振り下ろした!
「ふひっ!」
ガキン!
寸でのところで、やつが
氷の槍でオレの剣を受け止めた!
店主が槍をはじいていた場面を見ていて、
槍が、相当、硬いのは予想していたが、
やはり、簡単に砕けそうにない!
しかし!
「ふひ!?」
バキンっ!
みんなの剣が通じない魔獣の体を、
いとも簡単にぶった斬れる、この剣なら!
そう思い、はじかれることを恐れず、
ゴリ押しで、やつの氷の槍をぶっ壊してやった!
「んな!?」
砕け散った氷の槍!
やつの体勢が崩れ、ひるんだ!
この隙を逃すことなく、オレは、もう一歩踏み込み!
「はぁ!!」
ズバァァァ!!!
右下、やつの右脇腹から
左肩まで斬り上げた!
「ぐぅっ! がっ!」
しかし、踏み込みが浅い!
真っ二つにはできなかった!
大きな傷を負わせることは出来たか。
腹から胸にかけて、大量の真っ黒い血を流し、
たたらを踏んで、倒れそうになるのを
堪えているミヒャエル!
もう一撃!
「っ!」
と、もう一歩、踏み込もうとした時に、
急激に、やつの魔力が高まったので、
警戒して踏みとどまった!
「ぐがっ、法術・アイススパイク! がふっ!」
ミヒャエルが、そう言った瞬間!
オレとミヒャエルの間の地面が、
突然、凍りだして・・・
ビュッ パキン!パキン!
「ぬおっ!?」
地面から、数本の氷のトゲが飛び出した!
オレが踏みとどまらなかったら、
串刺しになっていたか・・・!
しかし・・・
「がはっ! あ、あ~!?
き、貴様~・・・!
我の体を傷つけた罪は、お、重いぞ~・・・ふひ!」
やつの心臓も内臓も斬ったはずだが!?
明らかに大きな傷を負って、
ミヒャエルは、少しだけ弱っている表情をしていたが、
喋っている間に、大量の出血が止まりだした!?
「まさか・・・! もう回復しているのか!?」
「ふひひっ!
法術・サウザントアイス~!」
パキ! パキッ! パキキッ!
やつが、そう言った瞬間に、
やつの頭上に、手のひらサイズの
無数の氷塊が出現し始めた!
「!!」
しまった! 距離が開いてしまった!
今からでは、やつの元へたどり着けない!
直感的にやばいと感じたオレは、
すぐさま後方へ跳び、やつとの距離をとった!
「ふひっ!」
やつが、右手の人差し指で、オレを指さした瞬間に
ズドドドドドド!
やつの頭上に現れた無数の氷塊が
とんでもない速さでオレに向かって飛んでくる!
避けきれない!
「おじさん!」
ニュシェがオレに向かって、なにか叫んだが
それどころではない!
「くっ!」
バキン! パキ! バキッ! パキュ!
オレは、無数の氷を剣と左手ではじく!
しかし数が多すぎる!
ドカッ! バキ! ドコッ!
「ぐあぁ!」
顔面の直撃こそ免れたが、
左肩や右足、脇腹に、氷の塊が直撃した!
痛いっ!!
パキキッ・・・ピキィ・・・
しかも、氷塊が当たった部分が凍り付いている!
冷たい!
もし、全弾当たっていたら、
完全に動きを封じられてしまう!
「くっ・・・がはっ・・・!」
脇腹に当たった個所に、重たい痛みが走る。
しかし、骨や内臓までは傷んでいない。
無駄に思えた脂肪が、衝撃を吸収したか。
こんなことになるなら、
きちんと鎧を装備してきたものを・・・!
今さらながら後悔する。
「あ~・・・はぁ、はぁ~・・・
貴様~、すばしっこいなぁ~・・・!
めんどくさいやつだ~・・・はぁ、はぁ~!」
やつの方を見れば、
オレがつけた傷が、すでに塞がっている!
あんな大きな傷だったのに!?
なんて回復力だ!
「っ!!」
また、やつの魔力が高まった!
やつが手のひらをオレに向けている!
反射的に、オレは、横っ飛びでその場から移動する!
「ぅ、法術・アイスウォ~ルぅ!」
バキバキバキバキッ! パキィィィィン!
その瞬間、オレがいた所の地面から、
巨大な氷の壁が突き出てきた!
「ぐぉ!」
その範囲は3mほど!
氷の壁の高さは、5mほどの大きさだ!
右足が凍っているので、動きにくい!
オレは、転がりながら、なんとか避けた!
「はぁ、はぁ・・・!」
転がったのが幸いして、
体に張り付いていた氷が砕け散った。
しかし、凍らされた部分の体温は、
そんなにすぐ戻らない。
凍っていた部分の、肌の感覚がマヒしている!
立ち止まっていられない!
やつの『法術』が次々と・・・!
「ぐ・・・くっ、はぁ、はぁ・・・!」
「!?」
ミヒャエルが、すぐに『法術』を使ってこない!?
「あ~・・・貴様~・・・なんなのだ~!? はぁ、はぁ!
ジジィのくせに~・・・うぐっ!
ちょこまかと~・・・うっとおしいぃぃぃ~~~!!」
さっきまでの余裕な笑みが消え、
ミヒャエルが、明らかにイライラした表情を見せる。
「はっ!」
オレは、気合いを入れて、
やつへ向かって走り出した!
なぜだか分からんが、
やつの『法術』の連発が止まったのなら、
今が好機だ!
「っ! 法術・アイス~・・・ぐっ!」
やつの魔力の高まりを感じない!
もしや・・・魔力が尽きたのか!?
「遅い!」
ザンッ!
やつの胴体を、横薙ぎで斬り払う!
「ぐあああああああ!!」
ボテッ ドサッ
びちゃびちゃと大量の黒い血を流しながら、
ミヒャエルの上半身と下半身が、地面に倒れる!
「はぁ、はぁ・・・!」
地面に落ちたミヒャエルを見てみるが、
体が真っ二つになっているのに、
やはり、まだ生きている!
「くっ、こいつは、どうやったら倒せるんだ!?」
オレは、後ろで待機している店主に向かって
聞いてみたが、
「分からん! 分からんが・・・
ひょっとしたら、頭部を燃やしちまえば・・・!」
そう言って、店主が魔力を高めながら、
こちらに向かって走ってきた!
「ぐっ! 貴様ら~・・・がはぁ!」
やつは、苦しそうに吐血した。
さっきは、ものすごい速さで大きな傷が回復したが、
さっきよりも傷が回復しない!?
それでも、上半身と下半身の流血が止まりつつある!
こいつは、まだ動ける!




