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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
194/502

バンパイア討伐戦





「・・・しかし~、たった2日間で

ずいぶんと我の『平和』を壊してくれたやつがいるな~?

この数年間、こつこつと増やしてきた『平和』を~・・・

たった2日で~・・・ちょっと有り得ないのだが~?」


低い声で語っていたミヒャエルが、

さらに低い声になった。

すこし怒っているのか?


『平和』・・・やつの言う『平和』とは、

自分の血を与えた魔獣たちのことだ。


「我の『平和』を一匹倒すのに~、どうにかこうにか~

ぎりぎりで倒せていた人間たちが~・・・

明らかに、この国の人間たちだけでは、

成し得ないことを~、しでかしたやつがいるよなぁ~?

スン、スンスン・・・ニオイで分かるぞ~?

どうやら、お前らが

我の『平和』をすべて壊そうとしていた者たちのようだな~?

昨日、我に『サーチリング』の魔法をかけたのは、

お前たちなのだろう~?」


「!! やはり、お前か!」


この『洞窟』での討伐2日目で

木下の『サーチ』にかかった人間というのは、

やはり、こいつだったようだ!

魔物化した人間!

店主の予想が当たってしまった。


「我の『平和』たちが騒がしかったのでな~・・・

ちょっと入り口のほうまで様子を見に行っていたところだった~。

『サーチリング』で我の存在に気づいたのだから

すぐに我を求めて、この奥まで来るかと思っていたが、

案外、時間がかかったではないか~?

待ちわびていたぞ~? お前たち~・・・ふひひ!」


ミヒャエルは、本当にニオイだけで

いろいろ分かっているのかもしれない。

魔獣たちを討伐したのが、オレだと分かっているかのように、

ずっとオレの目を見てくる!

目が合うたびに、背筋がゾクゾクする!


「入り口が塞がれていたから、我の『平和』たちが

少し隣りの国へ戻ってしまったようだしなぁ~・・・。

お前たちのせいで、我の計画が、

また少し遅れてしまったわけだ~。

あ~・・・分かっているのか~? お前たち~?

我の理想~・・・我の計画~・・・

それらは、すべて『オラクルマディス神』のご意志なのだぞ~?

それを妨害するという愚かな行為は、

神への冒涜~・・・万死に値する~・・・。」


やはり、この『洞窟』は、

隣国に通じているようだ!

「戻ってしまった」と言ったのか!?

つまり、隣国から魔獣たちを

こちら側へ連れてきていたのか!?


ミヒャエルにとっては、魔獣たちが

隣国へ出て行ってしまうことも計算外だったようだ。

狙ってやったわけではないが、それだけでも、

オレとしては「してやったり」という気持ちになる。


「さ~て~、おしゃべりはここまででい~か~?

久々に人間と話せて、我も楽しかったぞ~・・・。

しかし、もう飽きた~。喉がカラカラだ~。

お前たちも、もう聞きたいことはないだろう~?」


ビクッ


ミヒャエルが、そう言って

テーブルの上で立ち上がった!


オレだけじゃなく、店主やデーア、ニュシェも、

全員が、やつの一挙手一投足に

いちいち反応してしまっている!

ビビっている!


いよいよか・・・!


オレたちは、ずっと剣を構えている!

見たところ、ミヒャエルは武器らしきものを持っていないようだが、

武器を構えているオレたちをどうやって?


いや、そもそも、首だけでも復活してしまう

不死身の『バンパイア』を、どうやって倒せばいいんだ!?


「・・・は・・・ぁ・・・ぁ・・・!」


オレたちよりもミヒャエルに近いデーアが、

怯えながら、座り込んだままだ。

ここからでは、表情が見えないが、

腰でも抜かしているのか?

立てないようだ。


「ちっ!」


舌打ちをした店主が、デーアの前へ出た!

デーアをかばっている!


「あ~、見たところ、元気に動けるのは~

そこのジジィ2人だけのようだな~。

くひひっ! あ~、ジジィたちは

血も肉も不味いから、すぐに消すとして~・・・

まずは、そこの美女2人の血で~喉を潤すとしよう。

そして、我の血が『適合』するか試そう~、ふひっ!

『不適合』ならば、2日後の『謝食祭しゃしょくさい』で、

たっぷり堪能させてもらうとしようか~・・・ふひっ!」


「っ!?」


あいつ、今、『謝食祭』って言ったのか?

たしか、デーアも言っていた・・・

1週間の『断食』が終わったあとに

食べることを解禁するお祭りがある、と。

つまり、やつも今は『断食』中なのか!?


デーアをちらりと見たが、

ガタガタ震えていて、落とした剣を拾おうともしない。

戦意喪失している。

デーアも『断食』中ならば、

戦える体力が残っていないのかもしれないな。

店主と剣を交えていたのは、

体力よりも強い信仰心があってこそだったのか・・・。

今は、『獣人族』を『バンパイア』として

討伐してきてしまった悔恨と自責の念で

その信仰心も砕かれてしまっている・・・。

体力も精神力も底が尽きている感じだ。


「っ!!」


突然、ミヒャエルの魔力が高まったと感じた瞬間、


「法術~・アイスランス~!!」


パキパキキッ!パキパキパキィ!


「!!」


ミヒャエルの『法術』が発動し、

やつの目の前に氷が出現して、

あっという間に、氷の槍が出来上がった!


やつは、それをニヤニヤしながら、

手に取って・・・


「ふひっ!」


ドシュ!


店主に向かって投げた!


「ぐっ!」


バキン!!


店主は、2本の短剣で、それを受け流した!


ズドンッ


氷の槍は、短剣ではじかれ、軌道が逸れて、

オレたちの左後方の壁にぶち当たり、

粉々に砕け散った!


ミヒャエルと店主の距離は、

15mほどあるが、ミヒャエルの投げた氷の槍は、

とんでもなく早かった!

店主の反応速度が遅ければ、貫かれていただろう。


「あ~・・・老いぼれのわりには、

反応が速いじゃないか~?

ジジィ2人ごと貫くはずだったのに~・・・くひっ!」


ミヒャエルは、そう言いながら

また魔力が高まり・・・


「法術~・アイスランス~!!」


パキパキパキィー!


また、やつの目の前に氷の槍が出現する!


「くそっ!」


店主が動いた!

ミヒャエルに向かって突進する!

デーアを守りながらでは、

やつの氷の槍の的になるだけだ!

相手の攻撃方法が『法術』ということが分かったから、

迷うことなく攻撃に出たようだ! 英断だ!


ガキキン!!


しかし、ミヒャエルは、

今度は氷の槍を投げずに、

その槍で店主の攻撃を受け流す!


「ふひっ!」


ビュッ! ビュッ! ビュッ!


「ぬっ!」


店主の攻撃を受け流したミヒャエルが、

すかさず反撃に出た!

氷の槍で、連続で刺突を繰り出す!

なかなか早い突きだ!


「ぐっ!」


それを店主が、紙一重で避けて、

大きく後方へ跳んだ!


店主の武器は短剣で、ミヒャエルの武器は長い槍だ。

攻撃範囲の差がありすぎて、店主の分が悪い。


「ふひひっ!」


ドシュン!


店主が、ミヒャエルとの距離をとった途端に、

やつが氷の槍をぶん投げた!


「!!」


バキン!


「ぐぁっ!」


さっきよりも至近距離!

店主が油断していたのもあったのか、

槍を受け流す反応が遅れた!

短剣ではさばききれず、氷の槍が店主の左肩を貫いた!


パキパキパキッ・・・


「くぅっ・・・!」


店主の左肩から血が噴き出るはずなのに、

出てこないと思ったら、みるみる左肩が凍り始めていた!


「あ~・・・心臓を狙ったのだが~・・・

やるではないか~・・・無駄なあがきを~・・・。

法術・アイスランス!!」


パキパキ、パキィ!


そう言いながら、やつは

また氷の槍をすぐに出現させた!

なんて、速さだ!

本当にやっかいだな、『法術』!


店主の、あの肩では

あの距離からの氷の槍はさばけない!


「店主! 下がれ!」


オレは、店主にそう叫んで、

ミヒャエルへ向かって走り出した!






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― 新着の感想 ―
[良い点] バンパイア、ついに正体が現れて来ました。不気味です。 現状ポンコツなデーア、立ち直りのきっかけは来るのでしょうか? [気になる点] バンパイアの望む平和とは人間ありき、なのでしょうか。 …
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