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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
179/501

別の可能性





「状況は悪いが、最悪ではないぞ。」


「!!」


誰もが最悪と感じている状況で、

店主が、はっきりと言い切った。


「聖騎士たちが集まってしまえば、打つ手なしだが、

逆に言えば、聖騎士たちが集まるまでは

広範囲の『サーチリング』は使われないってことだ。

それまでに、あんたたちが依頼を達成してしまえば、

少女を連れて、この国から逃げればいい。

・・・それまで少女が捕まらなければの話でもあるが。」


店主の言葉に、わずかな希望が見えた気がした。


「それまでに依頼達成か・・・。

あの『洞窟』にいったいどれだけの魔獣がいるのか・・・。

いつ達成できるか分からないな。」


シホがため息混じりに、そう言った。


「『スヴィシュの洞窟』の魔獣を全滅させるのが達成条件だったな。

あんたたちが、どれだけ倒してきたか知らないが、

あの『洞窟』の魔獣のほとんどは、

隣国『イネルティア王国』へ流れていったかもしれないんだ。

もはや、あと数匹ってところじゃないのか?」


「えぇ!?」


シホたちが驚いている。

そういえば、昨日、店主がオレに

そういう話をしてくれていたことを

木下たちへ伝えるのを忘れていた。


「あの『洞窟』は、隣国へ繋がっているんですか!?」


「いや、それよりも、

どうしてそんなこと知ってるんだよ!?」


木下やシホがそれぞれの反応を示す。

それらに対して、店主が、丁寧に説明を始めた。




「おっさん、そういう大事なことは言ってくれないと!」


その結果、オレが怒られることになった。

シホが立ち上がって怒っている。

こいつは、華奢な体をしている割には、喧嘩っ早いな。


「す、すまん!」


「まぁまぁ、そう怒ってやるなよ。

言いそびれてしまうことは誰にでもあることだからな。」


店主がシホをなだめてくれた。

シホは鼻息を荒くしているが、

店主に言われて、なんとか落ち着いた。


「あ、あとはオレたちの討伐次第ってことだよな。」


オレは、慌てて話を進める。


「あ、そういえば、私たちからも

シエンさんにご報告があるのですが・・・。」


そう言って、木下が

今日の『洞窟』で起こった出来事を話し始めた。

『洞窟』内で『サーチ』にかかった人間の話を・・・。




「それは、有り得ない、な。」


店主が木下の話を聞いて、即答していた。

やはり、そう感じるよな。


「昨日から『洞窟』の100m先が塞がっていたのなら、

まず、こっちの『レスカテ』側から『洞窟』の奥へは

侵入不可能だったわけだ。

次に、あの『洞窟』が隣国へ繋がっているとして・・・

あの『洞窟』の全長は約5kmと言われている。

『イネルティア王国』側から、たった一人で、

たった一日で、その場所まで侵入するのも不可能なはずだ。

魔獣がわんさか『イネルティア』のほうへ

なだれ込んでいったって話だし、いくら屈強な猛者どもが

多い国とは言え、そんな奥まで進めるわけがない・・・。」


店主が冷静な分析を披露してくれている。

地形や隣国の情報なども熟知しているからこそ、

分かることなのだろうな。


しかし、そうなると・・・


「では、き、ユンムが『サーチ』で感じ取った

人間というのは・・・間違いだったということか?」


オレは『サーチ』を使えないが、

そもそも『サーチ』というのは、人や魔獣の

もともと持っている『魔力』や『エネルギー』みたいなものを

感じ取る魔法だったはずだ。

だから、反応があったとしても、

それが人なのか? 魔獣なのか?というのは、

感じ取れるエネルギーの大きさで判断するわけだ。

反応があまりにも小さいと、うっかり判断ミスするという場合もある。


「いえ、たしかに、あれは人間でした!」


それでも、木下は

自分が感じたことを信じ切っているようだ。


「その根拠は?」


オレは、木下を信じたいが、

ここは冷静に判断しなければならない。

人間だと思って、助けに行ったら、

魔獣の幼獣だった・・・なんてオチは回避したい。


「私が『サーチリング』を発動したとき、

範囲内にいたおじ様やシホさんも感知したわけですが、

そのおじ様たちの反応と『洞窟』内の人の反応が、

ほぼ同じ反応だったんです。」


「! ・・・なるほど。」


なんの根拠もなく、自分のカンだけで

言っているわけではないと納得できた。


「そんなバカな、と言いたいところだが、

それだけはっきりと人間の反応のように感じ取ったのなら

どうやら、間違いではなさそうだ、な。

そうなってくると・・・

ここで、『別の可能性』が浮上してくるわけだが・・・。」


店主が少し鋭い目で、そう言い始めた。


「なんだよ、その『別の可能性』って?」


シホがオレたちの聞きたいことを聞く。


「あの『スヴィシュの洞窟』は、今や魔獣の巣窟と化している。

そんな『洞窟』内に、人間が一人で

生存しているとは考えにくい・・・。

こちら側からも、山の向こう側からも、

人間が一人で侵入したとも考えにくい・・・。

しかし、お嬢ちゃんの感じた反応は、

限りなく人間に近い反応だったという・・・。

だったら、そいつは・・・

『魔物化』している可能性がある。」


「えっ!? それって・・・!」


「な、なんだ、それ!?」


店主の口から、あまり聞き慣れない単語が出てきた。

しかし、どこかで聞いたことがあるような・・・。


「ん!? 『魔物化』だと!?」




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