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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
174/501

疾風のおっさん




体が軽い!

まるで、羽根が生えたかのように

重力を感じないというか、

自分の体重が、どこかへ行ったみたいに!


「ギャギャギャッ!」


「ガゥォォォォォゥ!」


『ゴリラタイプ』が目前まで走ってくる!

その後ろに、連なるようにして、

青黒い体毛の『クマタイプ』もついてきている!


『ゴリラタイプ』が走ってきた勢いのまま

左手をオレに伸ばしてきた!


フッ


「うぉ!」


その手を軽くかわそうとして、左へ動いたら、

体が軽すぎて、オレの体が素早く

『洞窟』内の左の壁まで移動してしまった!


「おじ様!」


「うわっ!」


オレは、その勢いを止めるために、

壁を蹴り、離れてしまった『ゴリラタイプ』のほうへ飛ぶ!


ギュン!


「ギャッ!?」


『ゴリラタイプ』の魔獣は、左手を伸ばしたままだった!

その左手をかいくぐり、やつの左脇腹を


ザンッ


切り裂いた!


「くっ!」


しかし、オレの体は勢いがつきすぎて、

剣を振りぬいた後も、『ゴリラタイプ』の目の前を通り過ぎ、

そのまま、右側の壁へと移動してしまう!

自分の体のスピードを制御できていない!


ドスンッ


『ゴリラタイプ』が倒れた。

その後ろから走ってきていた『クマタイプ』が

『ゴリラタイプ』の上を飛び越えようとしている!


「ゴアァァ!」


オレは、右側の壁に到達すると、

今度は『クマタイプ』の体へ目掛けて、壁を蹴った!


ダン!


すぐに、『クマタイプ』の目の前へ移動して


「はっ!」


ドスッ!


体当たり気味に、魔獣の胸に剣を刺す!


「ゴォゥ!」


剣は確実に魔獣の心臓を貫いた!

オレごときの体当たりでは、

さすがに5m越えの巨体はビクともせず、

オレは、そこで、ようやく体の動きを止められた。


ドスンッ


『ゴリラタイプ』の上に『クマタイプ』の巨体が倒れた。


「ふぅぅぅぅ・・・これは、なかなか難しいな!」


オレは、一息ついて、剣についた血を振り払う。


ビュン! ビシャア!!


その動作すらも、素早い。

なんだか、普通に話しているつもりが

早口でまくしたてているような発音になる。


「いや、おっさん、早すぎ!

それでも『ラスール』と『ギガントベア』を

瞬殺してるんだから、ちゃんと見えてるってことだろ?

やっぱり、すげぇよ! おっさん!」


シホが、嬉しそうにそう言った。


「ギャッホォォォォ!」


「キャキャキャッホ!」


そう言っているうちに、次の魔獣たちが姿を現す!

さっきの魔獣たちと同じく、走ってきた勢いのまま、

『ゴリラタイプ』の魔獣たちが、1匹! 2匹! 3匹!

どんどん数が増えていく!


「すぅぅぅぅぅ!」


息を吸い込み、剣を構える。

いくらスピードが速くても、

それを制御できなければ意味がない。

2匹倒すだけなのに道の

端から端まで移動しているなんて効率が悪すぎる。

大きな動きは、結局、余計な体力を使うし、

戦い方が危なっかしい。


ちょっとチカラを抜いてみる。


「ギャォホォォォォ!」


「ギャッホ!」


ダダン! ダン!


目の前の魔獣の死体を

『ゴリラタイプ』の魔獣たちが

次々と飛び越えて、オレに襲い掛かってくる!


目の前に迫ってきた魔獣が、手でオレを掴もうと、

右手を伸ばしてくる!


「はっ!」


その手を、素早くかわし、


ザザンッ!!


その剛腕を切り上げ、そのまま

魔獣の首を斬りつける!


「ッゥ!」


そのまま魔獣が倒れ込んでくる!

その魔獣の後ろから、まだ2匹が飛んできている!


トンッ


オレは、軽く地面を蹴り、一度後ろへ身を引いてから


ドスン!


目の前の魔獣が倒れたのを見て、すぐに

その魔獣の体へと移動する!


ギュン!


「っく!」


たちまち、倒れた魔獣の体の前へ行き、

上から飛んできた魔獣たちを迎撃する!


「ギャウ!」


ほぼ、2匹同時に、

魔獣たちは、オレへと腕を伸ばしてくる!

こいつらの攻撃パターンが、だいたい分かってきたな。

その腕を、


「おりゃぁ!」


ザシュ! ガシュ!


剣で斬り上げる!


「イギャ!」


「ウギ!」


魔獣たちが、ひるみながら着地したタイミングで


「はぁっ!!」


ザザンッ!!


魔獣たちの腹を、2匹同時に

横一文字に切り裂いた!!


スッ


魔獣たちが前のめりに倒れてくるので、

オレは、後ろへと移動する。


ドドスン!


「・・・ふぅぅぅぅぅ!」


目の前に現れた魔獣たちの死体を見ながら、

オレは、深く息を吐いた。

少し、このスピードに慣れてきた気もするが、

まだ無駄な動きも多い気がする。


剣を振り、血を振り払う。


ビュン! ビシャァ!


「おっさん、もう完璧に

そのスピードに慣れたって感じだな、おい!

やっぱり最強だな! うちの『殺戮グマ』は!」


シホが、また忌々しいあだ名でオレを称賛している。


本当に体の負担が、軽減されているのだろうか?

無駄な動きが多い分、それを制御するチカラが必要になって、

通常よりも体力を消耗しているような気もする。

『慣れ』の問題だろうか?


「シホ、あと何分で、この効果は切れるんだ?」


慣れたころには、魔法の効果が終わる気がする。


「あと2分ぐらいだと思う!」


「ギャギャッギャ!!」


気配で分かっていたが、シホがそう答えた時に

次の魔獣たちが姿を現した!




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