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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
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想定外の反応





オレの合図で、木下の魔力が高まっていく!


「わが魔力をもって、相手の位置を知らせよ・・・

サーチリング!!!」


ブゥゥゥゥン・・・


木下の魔法が発動し、木下の体を中心に、

半径100m内の生き物たちが

『サーチ』の範囲に包まれていく・・・!


「どうだ、き、ユンム!?」


今度こそ、うまく作戦通りに・・・


「お、おじ様!」


作戦通りのはずなのに、木下からは

昨日と同じく、悲鳴に似た声が返ってきた。


「ど、どうした!?」


「・・・み、右前方に10体、左前方に7体・・・

そして・・・こ、これは・・・!?」


木下の顔が青ざめている!

なにを感じ取っているんだ!?


「お、おじ様・・・人です!

この反応は、私たちと同じ人間!

前方の一番奥に、人間が1人います!!」


「・・・ウソだろ!?」


オレより先に、シホがそう言った。

オレも信じられない。ゾッとした・・・!

生きた人間が、この『洞窟』の奥にいるだって!?

そんなやつがいたら、魔獣どもが放っておくはずがない!

生きていられるはずがない!


「・・・ォォォォォォ・・・ゥゥゥ・・・!」


「!!」


途端に『洞窟』の奥から聞こえてくる、魔獣たちの声!


「ま、魔獣たちが反応して、こちらへ向かってきます!

右側の魔獣たちのほうが、あと70mほど!」


・・・ドドド・・・ドドド・・・


遠くのほうから地響きのような振動が伝わってくる!


「そ、その人間は!?」


「全然、動きません!」


もし、そいつが生きている人間だとしたら、

木下の『サーチ』を感じ取っているはず!

なんらかの反応があるはずだが!?

それとも・・・動けないのか!?

怪我をした傭兵か!?

いつから? 昨日か? それより前から?


「そいつ、生きてんのかよ!?」


シホがそう言いたくなるのも分かる。

やっぱり有り得ない。

昨日から今まで、この『洞窟』は塞がっていたのだ。

生きた人間が、一人で、この魔獣の巣となった

『洞窟』の奥にいるなんて・・・。

しかし、死んでいれば『サーチ』にはかからない。


「ォォォォォ・・・ォォォ・・・!」


どんどん魔獣どもの雄たけびが近づいてくる!


「と、とにかく、

今はこっちへ向かってくる魔獣どもを優先する!」


オレは、2人にそう告げる。

えっと、向かって来ている魔獣は17匹か!?


「き、ユンム! 魔獣たちの姿が見えたら、

『サーチ』をやめて、防御に徹してくれ!」


「は、はい!」


「シホは背後の入り口から魔獣が来ないか注意しながらも、

防御に徹してくれ!」


「わ、分かった!

おっさん、風の魔法で体の速さを上げられる魔法があるが、

使ってみるか!?」


シホが、慌てて、そう言う。

そういえば、補助の魔法を受けると戦いやすくなるのは、

分かっていたが、オレの頭から魔法の知識が抜けていて

そういう戦法が思いつかなかった。

シホが言っているのは『スピードアップ』みたいな効果か?

体の個所のスピードがあがっても、

そのスピードに、オレの動体視力や脳が追いつけるかどうか・・・。

しかし、その補助を受けて戦えば、

体への負担や体力消耗を抑えられるかもしれない。


「体の速さの向上か。

オレに使いこなせるかどうか不安だが、やってみてくれ!」


「分かった! 効果は5分だけだから、

魔獣の姿が見えたら、おっさんにかけるよ!

たぶん、おっさんなら使えると思う!」


・・・ドドドドドド・・・


シホと、そんなやり取りをしている間にも、

魔獣たちの足音が、かなり近づいてきた!


「右からが近いです! 距離は、あと50m!

左側のは、距離70mですが、

たぶん、道が入り組んでいるようで、

こちらへ来るまで時間がかかっているようです!」


木下が、そう教えてくれる。

さすがの魔獣たちも、『洞窟』の壁を

壊しながら突き進んでくるわけではなく、

ちゃんと道を辿って、こちらへ向かってきているらしい。


「ゥゥゥゥゥ・・・ォォォォオオオ・・・!」


魔獣たちの声も近づいてきた!


スラァァァ・・・


オレは、右手で剣を抜いた。

後ろからのランプの明かりが、刀身に反射して光っている。


「ふぅぅぅぅぅ・・・すぅぅぅぅぅ・・・。」


竜騎士の技を使うわけじゃないが、

深呼吸して、心身ともに落ち着かせる。

しかし、やはり『洞窟』内は、

獣のニオイが充満していて、深呼吸すると気持ち悪い。


「!!」


そして、とうとう

オレが気配を感じる距離に魔獣たちがきた!

つまり、あと30m!


「気配を感じる!

木下、もう『サーチ』はいいぞ!」


「・・・はい!」


うっかり「木下」と言ってしまったが、

もう遅いし、今はどうでもいい。

剣を強く握って、魔獣たちの登場を待つ!


ドドドドドドッ・・・


「ガァゥゥゥゥゥ!!」


「ウォウォウォウォーーー!!」


声からして、あの『クマタイプ』と『ゴリラタイプ』が

ごちゃ混ぜになって走ってきているようだ!


「シホ! もう魔法をかけてくれ!

おそらく、やつらは止まらず突っ込んでくる!」


オレは、そう感じたので、

シホに魔法の詠唱を始めるように命じた!


「分かった!

わが魔力をもって、その体、風の翼により、

突風のごとき速さを得たり・・・。」


シホが両の手の平をオレに向けて、

魔法の詠唱を始めた!

シホの魔力が高まり、両腕の包帯が光る!


そのとき、


「ギャアァァァァゥ!!」


右側の道から、真っ黒な体毛の『ゴリラタイプ』が

キバをむき出しながら、姿を現した!

ランプの明かりがギリギリ当たる距離!

オレを見つけて、走ってきた勢いのまま、

四足走行でこちらへと走ってくる!


「シルフ・ラファガ・ソルアーーー!!」


オレの背後から、シホの叫び声が響き、

突然、オレの体の周りに、風が吹き抜けた!



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