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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
172/501

2日目の討伐開始!



持ってきていたランプに火を灯す。

シホにそれを渡す。

オレは、『鉄の槍』を2本だけ持って行くことにした。

2本だけなら荷物にはならない。

あらゆる事態を想定して、一応、持って行く。


オレたちは意を決して『洞窟』内へ入っていく。

入り口から20mの地点に、

昨日、倒した魔獣たちが倒れているのが見えた。


「ううっ・・・。」


「うわぁ・・・おぇ・・・。」


「・・・ふぅ。」


その20mより先に進むと、

予想どおり、昨日、オレが倒した魔獣の死体が、

『洞窟』内に、ところ狭しと倒れている。

ドス黒い血が、あちこちに飛び散っていて・・・

獣のニオイと、血生臭いニオイが混じって

ニオイに敏感なシホは吐きそうになっている。

オレも呼吸がしづらい。


一応、警戒して進むが、

倒れている魔獣たちに気配はない。


「おぇ・・・。」


「・・・。」


たまに、ランプの明かりが揺れ過ぎる。

魔獣たちの死体を避けている時に、

ランプを持っているシホの手が

どうしても揺れるのだろうと思っていたが、

どうやら、違うようだ。


「・・・おぇ・・・。」


シホは、吐きそうになりながらも、

あっちこっちに倒れている魔獣たちの死体を照らして

確認しているようだ。

・・・姉の命を奪った魔獣が転がっているかどうかを。

昨日は、確認どころではなかったし、

すぐに下山してしまったからな。


話では、ほかの魔獣より一回り大きい体格だと

言っていたはず・・・。

そう思い出して、オレのほうも

チラチラと探しながら歩いたが、転がっている魔獣たちは

どれも同じくらいの大きさだった。


魔獣たちの死体を避けつつ、

しばらく進んでいくと、


「あっちゃー・・・。」


「やっぱり・・・。」


たぶん入り口から100mぐらいの地点で、

『洞窟』の道は、たくさんの岩や土で塞がっていた。

高さも幅も10mぐらい広い道が完全に塞がり、

何も知らなかったら、行き止まりにしか見えない。


「おっさん、派手にやっちまったなぁ・・・。」


シホが、ランプを掲げて

明かりで行き止まりになった道を照らしながら言った。


岩の向こう側に、魔獣の気配はしない。

近くには魔獣がいない・・・ということになる。

魔法を使っても、大丈夫・・・だと思う。


「き、ユンム、魔法で、どうにかなりそうか?」


「やってみます。離れてください。」


木下は、行き止まりから、少し離れ、

オレたちは、その木下の後ろで待機した。


「わが魔力をもって、大地の息吹よ、岩の角と成せ・・・。」


木下の魔力が高まる。


「トルバ・ホーン!」


木下の魔法詠唱が『洞窟』内に響き渡った!


ズゴゴゴゴッ


バキバキバキバキッ! ガガンッ!


「!!」


木下の魔法が発動し、地響きとともに、

少し尖った岩のようなものが地面から突き上げてきて、

道を塞いでいる目の前の岩を、下から砕き始めた!


「おぉっ!」


ガゴゴッ! ゴトンッ


ボコォォォォン! バキバキバキッ・・・ズズン!


次々に、尖った岩が地面から突き上がってきて、

目の前の岩を砕いたり、崩したりしていく。


ゴロゴロッ ドシーーーン・・・


地面から突きあがってきた尖った岩たちが、

また元の地面に戻っていく・・・。

木下の魔法が終わったようだ。

『洞窟』ごと崩れそうな勢いの地響きだったが、

なんとか『洞窟』は崩れず、

目の前の道を塞いでいた、岩や土だけを崩したようだ。

土煙が舞っている・・・。


ヒョォォォォォ・・・ゥゥゥ・・・


目の前に、道が開けて、

途端に風が吹いてきて・・・。

土煙が、こちらに向かって流れてきた。


「ごほっ! げほっ!

う、うまくいったみたいだな?」


「は、はい・・・。」


ビュゥゥゥゥゥゥゥ・・・ウゥゥゥ・・・


急に空気の通り道ができたためか、

空気が、突風になって吹きこんでくる・・・。


パサパサ・・・


「っ!」


木下の短いスカートがめくれ上がったので

慌てて、視線をそらす・・・。

オレの顔が赤くなっていなければいいが。


「さすが、ユンムさん!

土の魔法でこんな使い方があったなんて。」


「私も使うのは初めてだったので、

うまくいくか分からなかったんですが。ごほごほっ!」


一か八か、だったわけだな。

本当に、うまくいってよかった。

崩した岩が転がっているせいで、

極端に道幅が狭いが、これで先へ進める。


・・・と思っていたが、

岩を避けて通った先、数mぐらい先で

『洞窟』は、また行き止まりになっていた。

ただ、今度のたくさんの岩は、ところどころ隙間があり、

空気がそこから流れてきていた。

ちょっと突けば崩れそうなほど不安定に見える。


「あ・・・。」


岩の下から、魔獣の手が出ていて、

黒い血の水たまりができていた。

気配がないから、息絶えているはずだ。

崩れてきた岩の下敷きになったのか、

オレの槍で貫かれたのかは、分からない。


一応、気配を探るが、

岩の向こう側には、何も気配がない。


「ユンム、また頼めるか?」


「はい・・・。」


すぐにオレたちは木下の後ろへ下がった。

木下の魔力が高まる。


「わが魔力をもって、大地の息吹よ、岩の角と成せ・・・。

トルバ・ホーン!」


木下の魔法詠唱が『洞窟』内に響き渡り、


ズゴゴゴゴッ


ゴゴゴゴンッ! ガガンッ!


地響きとともに、尖った岩が地面から

何本か突き上げてきて、

目の前の岩を、下から崩していく!


ガゴンッ ボコンッ グチャ!


ドドドドドドッ ゴリッ ブチッ


ゴゴゴンッ ガコン!


「うっ!」


「おぇ・・・。おぇ・・・。」


下敷きになっていた魔獣の体が、

地面から突き上げた岩に摺り潰されているようだ・・・。

崩れる岩や土、土煙に混じって、

黒い血が飛び散っている・・・。


そうして、ようやく、目の前の

たくさんの岩を崩して、道が開けた。


ヒュゥゥゥゥ・・・ゥ・・・


「ごほっごほっ・・・やったな!」


「うっ・・・けほっ・・・はい!」


さっきよりも強めの風が吹きこんできた。

・・・さきほどよりも盛大に、

木下の短いスカートがパタパタとめくれあがっているが、

木下は抑えようともしない・・・。

視線を背けながら、ふと思う。

不思議なのだが、女性は

そういうところは無頓着なのだろうか?

それとも、木下がおバカなだけか?


「・・・おっさん、よそ見ばかりしているが、

そこに何かあるのか?」


「え? あ、いや、そうじゃない。

なにもないぞ?」


シホに指摘されて少し慌ててしまった。

シホは女だからか、木下のスカートに気づかないのか。


「? では、進みましょうか。」


当の原因を作っている木下が

何も気にせず、そう言った。


「・・・ォォォ・・・ゥゥゥ・・・。」


「!!」


魔獣の気配はないが、

『洞窟』の奥、遠くから魔獣の声が響いて、聞こえてくる。


崩れた岩を避けて進むと、そこから十数m先に、

ついに、最初の分岐点が見えた。

ど真ん中の壁に、少し大きな穴ができていて、

そこに、昨日、オレが投げたと思われる

『鉄の槍』が突き刺さっていた。

その槍を基点に、『洞窟』の道は、

右と左の道へと分かれている。


「こんなとこまで『鉄の槍』が届いているなんて・・・

おっさんの技は本当にすごいなぁ~。」


シホが突き刺さっている槍を見て

感心している。

『鉄の槍』は、持ち手の棒が

グニャグニャに曲がっている。

回収しても使い物にはならないだろう。


「ここで、木下に『サーチ』を使ってもらうが、

そこの岩で狭くなった道で、迎撃したいと思う。

幅広い場所での戦闘では、あの巨体の魔獣たちに

簡単に囲まれてしまいそうだからな。」


オレは、そう提案してみた。


「あの岩の場所なら、たしかに狭くて、

囲まれはしないだろうけど・・・崩れないかな?」


シホが、少し心配そうに言う。


「崩れそうになったら、ユンムの魔法で

岩の下敷きにならないように防いでくれ。」


そんなことが出来るかどうかは確認していないが、


「分かりました。」


木下からは、いい返事をもらった。


今度こそ、準備万端だ。

『洞窟』の周りに魔獣の気配もなかった。

槍を使った作戦は、もうできないが、

『サーチ』を使った作戦は続けられる。


オレたちは、岩で狭くなった道へ戻り、

オレは、その岩の近くの地面に、

持ってきていた『鉄の槍』2本を刺す。


ザッ ザクッ


そこから、十数m先の分かれ道を見据える。

左右の道、両方から同時に魔獣が来ることも予想される。

少しドキドキしてきた。


「準備はいいか、お前たち?」


「・・・おぇ・・・。」


岩の近くに、魔獣の血が垂れていて、

シホは、その血生臭さにやられているようだ。


「だ、大丈夫です!」


木下は、シホを気遣いながらも

気合いの入った返事をくれた。


「よし、始めるぞ!」




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