魔道具のひとつ
朝食が終わってから、オレたちは
また、あの『スヴィシェの洞窟』へ行く準備をする。
シホが、脱衣所で着替えて出てきたが・・・
また見事に・・・本当に『男』にしか見えない。
「ん? なんだ?」
ずっと見ていたことを、シホに気づかれたが
思っていたことを、素直に喋るわけにもいかず。
「そ、そういえば、シホの
その両腕の包帯は、なにか意味があるのか?」
とりあえず、気になっていたことを聞いてみる。
「あぁ、これは『魔道具』だよ。
『マジックコントロール』っていうアイテムさ。」
「『魔道具』?
その割には、魔力を感じないが・・・?」
『魔道具』は、魔力を秘めた
魔法を発揮するアイテムで、
だいたい、オレが今まで見たことがある『魔道具』は、
ものすごく高い魔力を持っていて、
とてもじゃないが、そんなものを装備したままだと
あらゆる敵を呼び寄せてしまいそうなほどだった。
「高い魔力を発してしまうのは、
相当、高価な『魔道具』だろ。
こいつは、そんな高いものじゃないよ。
使いたい魔法に必要な魔力のコントロールを
調整してくれる『魔道具』でね。
俺が魔法を使わない限り、こいつが
『魔道具』だって気づくヤツは少ないかな。」
「なるほど、それで
シホが魔法を使った時に、その包帯が光っていたのか。」
一昨日も昨日も、シホが魔法を使った時だけ
両腕の包帯が光っていたのを思い出す。
『ソール王国』でも『魔道具』の店はあるが、
魔法が苦手なオレは、そういうアイテム自体も
なんだか興味がなく、どんな種類があるかも
詳しく分かっていない。
・・・本当に、この歳になっても
知らないことが多くて、恥ずかしい限りだ。
「俺は、あんまり魔法が得意じゃなかったけど、
この『魔道具』のおかげで難しい魔法も
発動できるようになったんだ。」
「いいアイテムだな。」
シホは、大事そうに
包帯の部分の腕を撫でている。
しかし、表情が少し寂しそうだ。
「姉さんからのプレゼントだからね。」
「そうか・・・
本当に、いいアイテムだ。」
「・・・あぁ。」
思い出の品か。
シホの姉のカタキとやらも、
今日の『洞窟』周辺にいてくれたらいいのだが。
昨日の失敗を踏まえて、オレたちは
出発前に、各自の得意とする魔法の特徴などを
教えあうことにした。
シホが得意とする魔法は、
意外にも、補助系の風の魔法だった。
光の魔法は得意ではないが
シホが使える魔法の中では一番威力が大きいらしい。
ちなみに雷の魔法は使えるが
一昨日言っていたように得意ではないようだ。
「姉さんといたパーティーでは、
主に仲間の補助をしていたから、
あんまり攻撃は得意ではないんだ。」
風の攻撃魔法もあるようだが、
この国の魔獣に対抗できるほどの威力ではないようだ。
よって、仲間の補助、防御を得意とするらしい。
「いや、補助も立派なチカラだ。
それがあるか、無いかで、戦略の幅が違うし、
勝敗が覆ることもある。
生き残れる確率も変わるからな。」
チカラの圧倒的な差がある他国間の戦争が
補助系の魔法で覆されてしまったという
ニュースを聞いたことがある。
実際、学校の授業で、そういう場面を
何度か見たこともあるぐらいだ。
「補助は攻撃より劣る」という見解は偏見でしかない。
木下が得意とする魔法は、
『ソール王国』で聞いていた通り、
シホと同じく、補助系の魔法だそうだ。
属性は、火も水も土も雷も、だいたい使えるらしい。
攻撃も、それなりに覚えているそうだが、
そのほとんどは、実戦で使ったことがないそうだ。
昨日の『サーチ』も、実戦では初めて使ったわけだし。
「敵の攻撃を防御できる魔法はあるか?」
「はい、敵の攻撃に対応して、
それぞれに有効な防御はできると思います。
ただ・・・実践では使ったことがないんですが。」
「上出来だ。」
木下は、やはり頭がいいだけあって
様々な魔法をしっかり覚えているようだ。
ただ、経験がないだけだから、
これから、しっかり経験を積んでいってほしい。
「へぇ~、おっさんとユンムさんて
もうツーカーの仲だと思ってたけど、
案外、いっしょに戦う経験は少ないのか?」
オレたちが、お互いに
自分の持っている能力を把握してないから、
シホが、そう勘付いてしまったらしい。
少しドキっとしたが、
「はい、そうですよ。
おじ様といっしょにパーティー組んだのも
つい最近ですから。だから私たちは、
傭兵ランクもない、新人傭兵なのです。」
木下が、さらりと答えていた。
「そういえば、そうだったな!
おっさんの強さを見たら、
おっさんたちが新人ってこと忘れちゃってたよ!
はははっ。」
シホは、なんの疑いもなく
木下の言うことを信じてるようだ。
あながち、ウソでもないしな。




