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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
165/502

おっさんと3人の女性たちの話し合い




「まさか、おっさん・・・

早く仲良くなるためにって、

『そういう意味』じゃないよな?」


シホが、妙にニヤニヤしながら言った。


「ばっ!! バカやろっ!

そんなわけあるか!」


オレは、顔が熱くなるのを感じていた。

シホの顔がさらにニヤけているから、

きっと、わざと『そういう意味』だとか

意味深なことをオレに言ったのだろう。

おのれ・・・!

こいつは、いつの間にか

オレが顔を赤くする原因を知っているようだ。


だいたい、お前が女だと知っていれば、

あんな提案しなかったのに!


「シホさん、それはないですよ。

おじ様は、私が裸になっても

襲わないって言ってましたから。」


木下が、そんなことを言い出す。

おいおい、ニュシェの前だぞ!?


「えぇ!? まさか、ユンムさん、

おっさんの前で裸になったことあるのか!?」


シホがとんでもない方向に話を進める。


「ない! 断じて無い!」


オレは木下の代わりに、即座にそう答えた。


「えぇ、ないですよ・・・今のところは。」


木下が、さらりと変なことを言う!?


「え、それって、どういう・・・?」


そこにニュシェが飛びつく!?


「だ、ダメだ! 聞くな、ニュシェ!

お前には、まだ早い!」


オレは、そう言ったが、


「あんたたちって、本当に親戚なんだよな?

『一線』を超えちゃってない・・・よな?」


シホがアホなことを言い出す!

一瞬、オレたちの『本当の関係』に

気づいたのかと思ったが、そうではないようだ。


「あ、当たり前だろ!」


オレがそう言い放った後、

シホがニヤニヤしているのを見て、

またしても、こいつがオレの反応を

おもしろがって、わざとそう言っているのだと気づく。

おのれ~・・・。




・・・数分、話し合っているが、話がまとまらない。


「オレが、床で寝れば解決する話だろ。」


最終的には、これが一番の良案だと

言っているのに、


「いや、おっさんは明日も

あの作戦を実行する大事な体だし、

今日の分の疲れは、ベッドで寝ないと、とれないって!

俺が床で寝るって!」


シホが、どうしても引き下がらない。

どうやら、パーティーに後から入った者が

一番下っ端なのだからという・・・

年齢関係なく、『役職序列』のような考え方のようだ。


シホのその考え方や、オレの体を気遣うがゆえに

引き下がらない態度は、なかなか好感が持てる。

年上を大事にする思いやりが感じられる。

しかし、そういう気を遣わずに、

ベッドで寝てほしいのだが・・・。


そこへ来て、天然おバカお嬢様の木下が、


「だから、さっきから言っているように、

シホさんとニュシェちゃんがいっしょに寝て、

私とおじ様がいっしょに寝れば、

誰も床で寝なくていいじゃないですか?」


1人だけ暴走している・・・。

というか、価値観の違い? 常識の違い?

男女の認識の違い?・・・なのか?


「いや、だから、それは

いくら親戚でもダメだろ!?」


シホが、茶化さずに、

ちゃんと木下に反論してくれる。


「じゃぁ、シホさんがおじ様と寝るんですか?」


「はぁ!? だから、なんで

誰かがおっさんと寝ることになるんだよ!」


シホの意見が一番まともだ。

今までは、木下と2人だけで言い合っていたから、

木下の話術に負けて

「もしかしてオレの常識が間違っているのか?」と

不安になり、自分の常識を疑っていたが、

シホがオレと同じ常識を持っていてくれて、

本当によかったと感じる。


しかし・・・こんなに揉めるとはな・・・。


明らかに木下の常識がおかしいのだが、

やたらと話術がうまいため、

オレとシホだけでは、なかなか

木下を説得させることが困難になっていた。

それでいて、シホのやつも、なかなか頑固だ。

床で寝ると言って、こちらの言うことを聞かない。


こうなれば、ニュシェの意見を聞いてみよう。


「その、ニュシェは、どう思う?

オレは、ベッド2台を、

女性3人でうまく分けてもらって、

男のオレは、床で寝るのが一番だと思うんだ。」


「どうして、それが一番いいの?」


「え?」


ニュシェが子供らしい質問を投げかけてきた。


そういえば・・・息子・直人のやつも

幼いころは「どうして?」「なぜ?」という質問を

オレたち夫婦に繰り返していたっけ。

オレは知識が少ないから、女房に任せていたが。


「どうしてって・・・それは・・・

えーっと・・・女性の体は、柔らかい。

とても繊細で、傷つきやすいんだ。

でも、男の体は、ゴツゴツしてて硬い。

だから、床で寝ても傷つくことはない。

だから、オレが床で寝るのが一番いいと思うんだ。」


オレは、なんとか

それっぽい理由を言えた。


「私・・・ずっと地面で寝てたけど、平気だよ?」


ニュシェがそんなことを言い出す。


「!!」


「っ!」


「・・・ニュシェちゃん。」


ニュシェ以外のオレたち3人が、

その一言で、ニュシェの

今までの過酷な逃亡生活を察し、胸が締め付けられた。


ニュシェの体を、よくよく見れば、

服から出ている手足に、細かい傷跡がある。

擦り傷、切り傷、打撲のあと・・・

この国のやつらにやられたのか?

逃げてる時に、自分でやってしまったのか?

そこまでは分からないが、

子供一人で・・・よく耐えてきたと感じる。


木下が、そっとニュシェを後ろから抱きしめた。

オレも・・・もし、自分の子が

こんな状態だと知ったら、抱きしめてやりたいと感じる。

だから、木下の愛ある行動が、とても適切だと感じた。


しかし、ニュシェは、そのままの表情で


「だから、4人で床に寝るか、

4人でベッドに寝ればいいと思う。」


「え・・・。」


これまた子供らしい意見で、

とんでもない提案が飛び出した。


そうだった、こいつは子供だ。

なぜ、男女がいっしょに寝てはいけないのかという

『大人の事情』が分かっていないのだった。

オレたちが、ただ単に

ベッドを取り合っていると思っていたのだろうな。


でも、こいつ、こう見えて

もう高校生ぐらいの年齢だったよな?

それくらいの事情・・・分からないのか?


それとも『獣人族』は

家族みんなで寝る習慣があるのだろうか?

いや、これは偏見か。


「そうですね、みんなで寝ましょう!」


おバカ木下が、ニュシェの意見に乗っかる!


「「寝れるわけないだろ!」」


オレとシホのツッコミがハモった。


「やっぱり、俺が床で!」


「お前は、女だからダメだ!

女は床で寝かせない!」


つい熱くなって、強めにシホへ言ったのだが、


「うっ・・・や、やめてくれよ、

急に、そういうの・・・ドキっとするだろ!」


シホの顔が赤くなって照れている!?


「いや、今の言葉のどこにドキっとしたんだ!?」


「おじ様は、分かってないですね~。

シホさんは今まで女性扱いされてこなかったんで

女性扱いされると、ドキっとするんですよ。」


「そ、それを言うなって!」


木下が、ニヤニヤしながら、そう指摘した。

シホがさらに顔を赤くして否定する。


たしかに・・・この様子だと、

昔から一人称を「俺」と言っていたり、

低い声で、男口調だったシホならば、

自身を含めて、周りからも

女性扱いされてなかったのだろうな。


ズズズズズズズ・・・


「えっ!?」


「!?」


「よいしょっ・・・。」


突然、引きずる音がして驚いたが、

気付けば、ニュシェがベッドとベッドの間にあった

テーブルやイスを片付けて、

ベッドを引きずって、ベッド同士をくっつけていた。


「な、なにを・・・!?」


いや、それよりも、

ベッドはかなり大きくて重い。

持ちあがらないだろうけど、引きずるだけでも

女性には困難なはずだが、

それを、こんな子供が!?


「・・・いっしょに寝るの、イヤ?」


ニュシェが、上目遣いで

オレたち3人を見つめてきた。


反則だろ、その可愛さ!


子供の純粋なお願いに、

もはや反論できる者はいなかった・・・。




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― 新着の感想 ―
[良い点] また並び方で揉めそうだ(笑) [気になる点] ニュシェ大物の予感 [一言] 野宿考えれば何ともないさあ。 更新多謝。
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