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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
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似た者同士の邂逅





夕食の時間は、シホと『マティーズ』のおかげで、

大いに盛り上がり、周りの食事を終えた客たちが帰っても、

また別に、食べに来た客たちに、シホたちは、

また同じ武勇伝を聞かせて、盛り上がっていた。


気付けば、オレたちは

食堂の閉店時間ギリギリまで、そこにいたようだ。

話も、腹も、じゅうぶん満たされた。


「今日は、大丈夫だったみたいだが、

明日も俺たちは同じ作戦を決行するので、

魔獣たちが町を襲ってきたら、

町の守りは、よろしく頼む!」


シホは、武勇伝の最後に、

必ず、そう言って、みんなに頼んでいた。

武勇伝で、すっかり盛り上がった客たちは、

その盛り上がった気分のまま、


「おう、任せろ!」


「あったりめぇだー! やってやらぁ!」


町を守ることを約束してくれた。

・・・うちの宣伝係は優秀だな。


客たちがまばらになってきたところで、

オレたちと『マティーズ』たちは、

それぞれの宿泊部屋に引き上げることに。


「明日、俺たちは朝から別の依頼をこなす予定だから、

今日みたいに、あんたたちを迎えには行けない。」


イヴハールがそう言ってきた。


「おっさんがいれば無敵のような気がするが、

気を付けて行ってきてくれ。」


テゾーロが、ちょっと心配そうな表情でそう言う。


「ろくに手伝えないけど、応援してるよ。」


カトリーノは、ほほ笑みながら、そう言ってきた。

『マティーズ』たちとは、知り合って間もないが、

いつの間にか仲間意識のような絆が

でき始めている気がする。


「ありがとうございます。」


木下が、作り笑顔のまま礼を言った。


「あぁ、お前たちもがんばってこいよ。」


オレは、そう応えた。




コン、コン、コン


自分たちの宿泊部屋に入る前に、

ノックを3回する。


「?」


それから、ゆっくりカギを開ける。


カチャン


「??」


そして、ゆっくりドアを開く。


ガチャ・・・


「???」


そうして、オレたち3人は部屋に入った。

もちろん、そうやって部屋に入ると、

中には、誰もいない状態になる・・・。


「夕方、ユンムさんと、この部屋に入る時も

そうしてたみたいだけどさ・・・。

誰もいないのに、ノックして入るのは、なんなんだ?」


シホが首をかしげて、そう聞いてくる。


「あぁ、今から、ちょうど

そのことについて話したいと思っていたところだ。」


オレは、そう言って、

脱衣所のドアを開けた。


ガチャ


「えっ!!」


シホが驚く。


「・・・。」


脱衣所の中から、ニュシェが黙って出てきた。


「え? え? えぇ!?」


シホの声がだんだん大きくなってきたので、


「しーっ!

このことは、この宿屋の店主と

オレたちしか知らないんだ。

パーティーの仲間として、秘密は守ってもらうぞ?」


オレは、そう言ってから、

ニュシェの事情を、シホに話し始めた。


最初は、びっくりしていたシホだったが、

事情が飲み込めてきたみたいで

すぐに冷静な表情になっていた。


「はぁ~・・・ここの清春さんは、

タダ者じゃないとは感じていたけれど、

やっぱり、すごい人だったんだな。

そして、なんだか、この国の

すごい秘密を知っちゃった気がするよ・・・。」


話の内容として、どうしても店主の素性も

話さねばならなかったが、

たぶん、大丈夫だろう。


そして、ニュシェのほうにも

シホがパーティーに加入したことを伝える。

昼過ぎに、脱衣所に隠れながら

だいたいのことは聞いたと思うが、

シホのこれまでの事情を話してもらった。


「・・・。」


それを聞いたニュシェは、言葉に出さないが、

なんとなく寂しそうな表情になった。


姉とパーティーを失って一人になったシホ・・・

深い事情はまだ分からないが、

たった一人で国中から追われていたニュシェ・・・


「これから、よろしく。ニュシェちゃん。」


「ん・・・よろしく・・・。」


握手をする2人。

2人は、似たような境遇だ。

だから、なんとなく・・・

この2人なら、早く仲良くなれそうな気がした。


「そういうわけで、この部屋に入る時は

ノックを必ず3回して、ゆっくり入ってくること。

忘れるなよ。」


これは、ニュシェと決めた合図で、

ノックが3回鳴ったら、ニュシェは、

どんな状態であろうと素早く脱衣所に

避難しなければならない。

だから、できるだけベッドでの昼寝は避けてもらう約束だ。


「分かったよ。

それにしても・・・

おっさんのパーティーは、

いろいろ驚くことばかりだなぁ。」


しみじみと、シホはそう言った。


「たしかに、オレもそう思う。」


いつの間にか変なウワサが立っていたり、

超難関の依頼を受けさせられたり、

この国の秘密を知っていたり、

『獣人族』をかくまっていたり・・・。


「いや、一番、驚く要素は、

おっさんだからな!」


「え、オレか!?」


それを言うなら、シホの正体にも

かなり驚かされたがな。

素顔を見ても、まだ疑ってしまいそうだ。

こいつ、本当に女なんだな・・・。

しかし、これを言うと、

またシホの逆鱗に触れてしまうかもしれないので

言わないでおく・・・。



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