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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
154/502

パーティー加入の条件






「お、おっさん・・・

本気で言ってるのか? それ・・・。」


「あぁ、笑われて当然だと思うが、本気だ。」


木下の『良案』を採用したオレは、

さっそく食堂へ行き、

オレたちの『間違ったウワサ』を自慢話のように

他の傭兵たちに流し続けてたシホを連れて、部屋へ戻ってきた。


ちなみに、ニュシェのことは

まだシホに知られるわけにはいかないので

お昼寝中だったニュシェを起こして、

脱衣所に隠れてもらっている。

かすかな気配は感じるが、

馬車の不正乗車を気づけなかった

シホなら気づかないだろう。


「いや、笑わないけれど・・・

いや、そうか、あんた『竜騎士』だもんな。

そりゃ、そうなっちゃうか・・・。

でも・・・なぁ・・・。」


思い切り、不安そうな目をするシホ・・・。


シホにオレは、パーティーに入る条件を話した。

その条件は、このパーティーが、

『ある目的』を達成するために作られた

パーティーであるという説明から始まった。

その『ある目的』を、今一度、シホに言う。


「もう一度、聞くぞ、シホ?

オレたちと『ドラゴン』を討伐する意思はあるか?」


木下の『良案』は、オレたちパーティーが

『ドラゴン討伐』を目的としていることを明かすことだった。

理由は、別に何でもいい。

オレが『ソール王国』出身者であること、

『ドラゴン討伐』が『特命』であることを隠せれば、

それでいいわけだ。


数百年前に絶滅したとされている『ドラゴン』を

討伐しに行くなど、正気の沙汰ではない。

まず、誰も本気にしないだろうし、

本気でなければ、パーティーに加入できないわけで

それまでの縁ということだ。

本気で加入したければ、それでよし。

オレたちの本当の旅の目的が、

『ドラゴン討伐』なのだからウソではないわけだ。


これで、オレたちの頭がどうかしているという

ウワサは広まってしまうだろうが、

「強いパーティーだから」という理由だけで

仲間入りを望むようなやつらがいなくなるだろう。


これからは・・・「こいつ、大丈夫か?」という目で

見られるんだろうな。

ちょうど、目の前のシホが、そんな目でオレを見ている。

それだけが、木下の『良案』の欠点だった。


「でもさ、なんで『ドラゴン』なんだよ?

『竜騎士』っていうだけの理由か?」


「あぁ、そうだ。

オレのご先祖様は『ドラゴン』を倒したことがあるらしくてな。

だったら、オレも『竜騎士』として、倒してみたいって思うだろ?」


オレのご先祖様の話は、親父から聞いた話だし、

実際、この『特命』を受けた理由も、

そこから来ているから、あながちウソではない。

ウソをつかなくていいというのは、なんともいいものだ。


「俺も『ドラゴン』が生きてるっていう

ゴシップ記事は知ってるけど・・・

まさか、その記事を本気にして、

討伐しに行くバ・・・いや、討伐しに行くやつらがいるとは

思わなかったっていうか・・・。」


今、「バカ」って言いそうになったな、こいつ。

この時点で、シホは、

ウソをつけない性格というのが伝わってくる。

秘密を共有できないのは、心苦しいが、

『信頼できる仲間』にはなれるかもしれない。

そうして、いっしょに旅を続けることができたなら、

いつか、オレたちの真実を打ち明けられるかもしれない。


あとは、シホの返事ひとつだ。


「・・・すまない、ちょっと考えさせてくれ。

俺は、姉さんのカタキさえ

討てればそれでいいと思ってた。

それはそれで、あんたたちの強さを利用しようと

考えていたのは事実だから・・・

あんたたちの旅の目的のことまでは

考えてなかったというか・・・。」


「あぁ、それは分かってたことだし、

こちらの目的を話す機会がなかったから、気にするな。

ただ、お前のカタキ討ちと、

こちらの『ドラゴン討伐』、お互いに助け合えたら

パーティーとしてやっていけると思ってる。

ちょっと考えてみてくれ。」


オレたちのチカラを利用しようと思っていたことも

素直に話してくれた。こいつは悪いやつじゃないと感じる。

そして、ここで即答しないシホの返事は、賢明な判断とも思う。

ここで迷いなく『ドラゴン討伐』を

受け入れれるやつは、逆に思慮が足りていないと思う。

少なくとも、オレなら断るだろうなぁ。


ちらりと木下のほうを見たが、

木下は、いつもの作り笑顔だった。

話がうまく進んでいる証拠だ。


「それにしても、おっさんたちも

ゴシップ記事とか見るんだな。

なんていうか、おっさんみたいな年上の人たちは、

そういうの嫌いな人が多いから、意外だったよ。」


シホがそう言った。

たしかに、オレもゴシップ記事は嫌いだ。

世間でささやかれている

根も葉もないウワサを記事にまとめているだけの

胡散臭い情報ばかりだからだ。


「あー、いや、その、あれだ。

ほかの記事は、あんまり読まないんだが、

たまたま『ドラゴン』の記事だけは

興味があったというか・・・。」


あーぁ、上手くウソをつこうとした途端に

下手な言い訳にしか聞こえない言葉しか出なくなる。

オレは、つくづくウソが苦手だな。


「あぁ、そうだよな。

なんてったって『竜騎士』だもんな。

そりゃ『ドラゴン』って言葉が載ってれば、興味もわくよな。

俺も、普段はぜんぜん気にしないというか、

読まないほうなんだけど、気になる記事は

ついつい本気にして読んじゃうんだよなぁ。」


シホも、ゴシップ記事は本気にしないほうか。

若者にしては、ウサワに流されないのは感心だ。

ん? いや・・・オレたちの『間違ったウワサ』は

すぐに信じていたようだから・・・

信じていないようで、結局は

ゴシップ記事を信じてしまうタイプなのだろう。


「残念ながら、この国では

ゴシップの雑誌は発売されてなくてさ。

やっぱり宗教的に、変なウワサが流れるのは困るからだろうな。

んで、たまに隣りの国へ行ったときに

読むくらいなんだけど。」


・・・なんだかんだで、結局、

ゴシップ記事が読みたくて、

隣国にまで行ってるんじゃないだろうか、こいつ。


「何ヵ月か前に読んだ記事には、

この国の騎士団が『獣人族』たちの村を発見して

『獣人族』を皆殺しにしたって記事が載ってたよ。」


「なっ・・・に!?」


血の気が引いた・・・。

思わず、脱衣所のドアを見た。

たぶん、ニュシェにも聞こえてしまったはずだ。


「おいおい、おっさん、

ゴシップ記事は信じないほうじゃないのかよ?

そんなに驚くなよ。ゴシップ記事の話だぜ?」


シホにそう言われて、

慌てて落ち着こうとする。


「あ、いや、そんなバカな話があるのかって思ってな!

そ、そういえば、『獣人族』の国がどこかにあるって

昔の教科書に載っていた気もするが、

あれも信憑性が低い話だったな!」


なんとか話を、別の方向へ持って行こうとするが、

ウソが下手なオレでは、話をうまく逸らせない。


「あー、そういえば、俺も昔、教科書で読んで、

ちょっとワクワクしたなぁ・・・。

俺は実際、他の国で『獣人族』に会ったことあるけど、

男も女も可愛いんだよなぁ~。モフモフの耳があってさ~。

・・・あんな可愛い『獣人族』を皆殺しにするなんて、

この国の騎士団は、どうかしてるよな。」


ダメだ、またゴシップ記事の話題になってる!

というか、こいつ、完全に

ゴシップ記事を信じ込んでるじゃないか!


「ゴシップ記事は、根も葉もないウワサですから!」


「っ!」


「お、おぅ・・・。」


木下が、ピシャリと言い放った。

これ以上、ニュシェの前で、

この話をしたくなかったのだ。

それはオレも同じ気持ちだったが・・・


しかし、それを言ってしまうと・・・


「あー・・・あれ?

じゃぁ、その、ユンムさんは

ゴシップ記事を信じてないってことだよね?

どうして『ドラゴン』の記事を信じてるの?」


シホが、すぐ矛盾に気づいてしまった。


「・・・私は、反対だったんです。

ゴシップ記事を信じるなんてバカバカしいと。」


「なっ!?」


何を言い出すんだ、木下?


「でも、シホさんなら分かると思いますが、

男の人って、アレでしょ?

『男のロマン』っていうワケの分からない動機で

突っ走る生き物じゃないですか!」


「えぇ!?」


こ、こいつは・・・

『ドラゴン』の存在を信じているのは

オレだけっていう設定にするつもりか!

しかも、「ドラゴン討伐が男のロマン」という、

他人に聞かれたら

一番恥ずかしい動機に仕立て上げやがった!


「あー・・・まぁ、男なら

『男のロマン』に走っちゃうの、よくある話だな。

あはは!・・・ワケの分からないって・・・

あっはっはっは! 言われてみれば、たしかに!」


シホは、まるで他人事のように笑いだした。

同じ男として、なにか思わないのか!?


まぁ、実際、他人事か。


「私は、家族会議の結果、

おじ様が無茶をしないか見守るために、仕方なく、

おじ様についてきているだけですので。」


木下は、キッパリと

「自分はドラゴンの存在を信じてない」という

設定にしやがった!


『ドラゴン討伐』を目的に結成したこのパーティーは、

オレの、ワケの分からない『男のロマン』が

動機で結成されたということにされてしまった・・・。

つまり、このパーティーの中で

「頭がおかしい」という目で見られるのは、

オレ一人ということになったわけだ・・・。


「あっはっは! あー、そういうことかー。

ゴシップ記事を信じちゃってる

親戚のおっさんの見張り役ってことか!

なるほど、なるほど! あっはっは!」


何がおもしろいのか、シホは笑いながら

うなづいている。


そして・・・


「あははっ、そういうことなら、オッケー!

俺も、おっさんが無茶をしないか、

ユンムさんといっしょに見張り役として、

パーティーに入らせてくれ!

いやー、ユンムさんがしっかりした人で安心したよ。

あっはっはー! おっさん、よろしくな!」


大笑いするシホが、

オレの肩をバシバシ叩きながら、

パーティー加入を決意してしまったのだった。








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― 新着の感想 ―
この話を読んでいて去年コモドドラゴンが来日?したのを思い出しての感想でした 自分ならドラゴンスレイヤーよりドラゴンテイマーを目指したいですね 返信へのコメントごめんなさい
去年我が国にもドラゴンがやってきましたね 一度は見てみたいです 観光でドラゴンを見に行けるような国で良かった
[良い点] 更新ありがとうございます。 ニュシェを気遣い、とっさに思案する二人、いい人だ。結果的に実力のあるドン・キホーテみたいになっちゃって面白い! [気になる点] 騎士団許すまじ、ゴシップである…
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